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第七十五話

「あのモンスター、恐らく実験で創り出されたキメラでしょう」

「ラムトンをベースに、なんて……良く見付けてきたものだよ」

 パニック状態に陥り、我先にと会場を出ようとする客達。

そんな客達を安全に避難させようと、会場に駆けつけたジュラルドが誘導している。

 珠から現れたそのキメラ……ベースがラムトンなのでラムトンと呼ぶことにしよう。

ラムトンは未だに逃げ惑うパーティ客に目は向けるも襲う様な気配はない。

それでもルイーナやロドルフォ、そしてヴァランガは何時でも攻撃できるようにと臨戦態勢をとっていた。

「なんでこんな化け物が………。だって、だってコレはジュラルド様やロドルフォ様を開放するための物だって………」

「良いように使われたな、ブランド」

「そんな…俺は、俺は………」

 床に両膝を付き項垂れるブランドに、ロドルフォが冷たい言葉を放つ。

「ども、ご無沙汰です」

「せ、精鋭さん?」

 そんな緊迫とした空気を打ち破るように、その場に似付かわしくない軽さでルイーナへと声を掛けたのは、セルペンテの屋敷で迷子になっていたルイーナを案内したあの精鋭だった。

「ボスから連絡。

国内にここを含めて三体の大型キメラを確認。

その他にも通常のモンスターの姿が複数確認されています。

現在対処を行っていますが、被害の全てを抑えることは出来ません。だってさ」

「………そう、ですか。

では騎士団の方々と情報を掲示し協力を要請して下さい。

優先すべきは国民の安全です。

モンスターの全てを対処するのは、国民の安全が確保されてから行って下さい」

「はいよ〜、因みにこの場で手伝いとか要ります?」

「……プレガーレに報告次第彼の指示に従って下さい」

「はいは〜い」

 それだけ言って、神出鬼没の精鋭は空気に溶け込むように消えていった。

そしてそれと同時に、ラムトンにも動きがあった。

ギョロギョロと周囲を見回していた目が、膝を付きブツブツと嘘だ何かの間違いだと呟くブランドへと向けられた。

 巨蛇のモンスターは喉を震わせ唸り声をあげたかと思えば、その大顎を開いた。

「拙いッッ!!」

「ルイーナ様ッ、いけません!!」

「止めなさい!!」

 その様子に咄嗟に走り出したルイーナを止めようと伸ばされたロドルフォの手はルイーナを掴むこと無く、ヴァランガの静止を促す声も耳に入らない様子だった。

 飛び掛かったラムトンからブランドへと体当たりするようにぶつかりその攻撃を回避したルイーナ。

 床に勢いよく頭をぶつけてもその鱗に覆われた体躯は傷の一つも着くこと無く、床を刳り巨大なクレーターを創り出した。

ヴァランガが魔法で創り出した風の刃を、ロドルフォも同じ様に風の刃をラムトンへと放つも、僅かに掠り傷を付ける程度に終わった。

 それほどまでに、ラムトンの巨体を覆う鱗は固く丈夫なものだった。

「早く立て!!」

「俺は、俺は取り返しの付かないことを……」

「分かってんなら立て!関わってしまった事実は変わらない!後悔するのは後にしろ!!」

 ブランドを叱責し、無理やり立ち上がらせたルイーナの目は鋭くラムトンへと向けられていた。

「何のために騎士になったんだ。護るためじゃないのか?!

なら騎士らしく戦ってみせろ!最後まで諦めず、その体が動く限り戦って護ってみせろ、馬鹿野郎が!!」

「………もういい、離せ」

 ルイーナの声が届いたのか、それとも子供に馬鹿と言われた怒りからかは定かではないが、ブランドはルイーナの手を払い自身の足でその場に立ち上がった。

「悪かった」

「謝るのは、コイツを倒して全部が収まってからでお願いしますよ」

「………ふん」

 バツの悪そうな顔をするブランドに、挑発するかのように軽口を叩くルイーナにブランドはニヤリと笑みを浮かべラムトンを見据えた。

「ロドルフォはジュラルドと合流してこことここ周辺にいる人達の避難を!

チミテーロ様もこの場は私達にお任せ下さい!」

「分かりました、ルイーナ様も決して無理をなさらぬよう!」

「……ではここは任せよう。

だが、自身の命を最優先に戦いなさい」

「はい!」

 ジュラルドと合流するために部屋を出たロドルフォ。

そして一言残して去っていったヴァランガの姿が見えなくなるまで軽く見送った後、ルイーナとブランドはノソリとゆっくりと顔を上げ頭を振るラムトンを見上げた。

「それじゃあ、怪物退治を初めましょうか」

「足を引っ張るなよ」

 今ここに、戦いの火蓋が斬って落とされた。

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