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第七話

「今回は魔法を発動させる練習と適正属性を調べてみましょう」

「はい。お願いしますヴァレリオ卿」

家族が本来の形を取り戻してから数日後、父の計らいでファウスト家の守護騎士でありながら魔法剣士である彼に剣と魔法を指導してもらうことになった。

「お願いします!兄様、頑張りましょう!」

「お兄様〜!アルバ〜!頑張ってくださーい!」

両手を握り締め気合を入れるアルバ。

木陰の下で母と共に手を振るルーチェ。

もうこれだけで魔法でも剣でも頑張れる。

両手を合わせ神に感謝する。この天使達を地上に降ろして頂きありがとうございます。絶対に奴等の手には渡しません。

「ではまず、この水晶に手を乗せて下さい。

そうすればそれぞれの適性がランク化されます」

そう言って俺達の前に差し出されたのは特に何の変哲もない水晶玉。

これに手をあてるのか……。

「あの、最初にやってみてもいいですか?」

「いいよ。やってごらん」

そう言えば途端に目を輝かせキラキラした笑顔で礼を言うものだから、その眩しい光に俺自信が浄化されそうだった。

キラキラ過ぎて目がシパシパしてきたぞ。

「じゃぁ……行きます!」

手を伸ばしアルバが水晶玉に触れると、淡い光源と共に何かが浮かび上がってきた。

………今更だが、魔法には基礎となる四大元素がある。

火、水、土、風、の四種類だ。

そしてそれらから外れ、神聖視されているのが光で嫌悪されているのが闇だ。

ゲームの通りならアルバの適正は闇だ。

神の愛娘であるルーチェの適正は光。

ヒロインと悪役の典型的な形だ。

だがゲームのようにアルバは家族と溝は出来てないし、今の所闇に適正があるようには見えない。

例えアルバの適性が闇であったとしても俺はアルバの幸せを諦めるつもりはないがな。

「おぉ!凄いですねアルバ様!」

浮かび上がってきたのは、美しい炎の鳥だった。

火の粉を鱗粉のように舞い散らし羽ばたく温かな色合いの鳥。

「適性は火ですね。それもとても強力だ……普通はこの様な生き物の形を取ることはないのですが、流石としか言いようがありませんね」

「これが僕の………」

「凄いなアルバ!」

「はい!」

頭を撫でればはにかむ様に笑う弟がこんなにも愛しい。

ゲームの様に闇ではなかったのは家族の溝が消えたからだろうか。

それともこの後に何らかの拍子に適正が変わってしまうのだろうか。

「ではルイーナ様も」

「はい」

まぁ今考えたってしょうが無い。

今後変化するならば、そうならないようにすればいい。

水晶に手を乗せれば、掌にひんやりとした冷たさが伝わってきた。

そしてアルバの時と同じ様に淡い光源と共に何かが浮かび上がる。

…………なんだこれ?

「これは……卵、でしょうか」

ヴァレリオ卿の言った通り、浮かんできたのは卵のような形をした何かだった。

色合いとしては青に近いが何方かと言えば黒や灰色にも見えなくはない。

そして卵という形を取っているだけあって、その中には何かがいる。

「どう思いますか」

「私もこのような物を見るのは初めてで何とも……それにこの色では正確な適性判断は難しいでしょう。

詳しく知るためなら実際に教会で見て頂いた方がいいかと」

「そうですか……なら時間が出来たら教会に言ってみます」

「今から向かいますか?」

「いえ、自分で行きます。適正を知ることが出来ないのは残念ですが、今日は練習だけでもお願いします。

適正以外でも使えはするんですよね?」

「そうですね。あくまで使いやすい物を調べるだけですので」

今回俺の適性を知れなかったのは残念だが、アルバのが知れたからいいだろう。

教会に行くのは……正直言って気が進まない。

だって考えても見ろよ。

教会は神聖なる神を讃える場所。魔法は神から与えられた贈り物と考えている人達の所に行ってさっきのを見せてみろ。

ちゃんとした形でもなく、アルバの様な生物の形もしていない。

色も四大元素に当てはまらない。

異端者だと騒ぎ立てられてしまえば、二人を護る所か最悪巻き込んで更に悪いエンドを迎えてしまうかもしれない。

それだけは避けなければならない。

「兄様……卵なら、何が産まれるか気になりますね!」

「え…?」

「だって卵なら何か生き物が産まれるでしょう?」

服の裾を掴み小首を傾げる天使。

ん”ん”ん”っ!!可愛いッッ!!

適正魔力が可視化されたものだから孵化も何もないと思うが、天使が言うなら本当に何かが産まれるかもしれない。

「産まれたら見せるからな」

「約束ですよ!」

「うん、約束だ」

少し前に教えた指切りをアルバとすれば、絡めていた小指を握り締めて約束だというアルバ。

純粋なその笑顔が眩しい。流石天使。

「では次に魔法の練習を行いましょう。

魔法は兎に角イメージすることが重要です。

どの様な物を作りたいか。どんな形にしたいのかをしっかりとイメージして下さい」

この様にと言ってヴァレリオ卿が差し出した掌には小さな火で出来た騎士が剣を構えていた。

「おぉ!」

「ではイメージしてみて下さい」

「「はい!」」

アルバはさっきの炎の鳥をイメージしてみるらしいが、俺は何をイメージしよう。

ヴァレリオ卿と同じ様に炎の騎士にしてみようか。

火の適性があるかは分からないが、イメージするだけでもしてみようか。

騎士……火の騎士。

騎士は誰かを護り支え、最後まで忠誠を誓った者の為に戦う。

火は熱くて、全てを灰にする。

だがその反面、温もりを与え人が生活する上で必要なものでもある。

「アルバ様ッッ!!」

「っアルバ?!」

無意識に瞑っていた目を開き、隣のアルバを見る。

だがそこにアルバの姿は無かった。

「兄様ぁ!!」

「上か!!」

聴こえてきたアルバの声に頭上を見上げれば、先の比では無い程に巨大な火……と言うよりは炎の鳥がその嘴にアルバを咥えて飛んでいた。

「ヴァレリオ卿!どういう事ですか?!」

「恐らく魔力量が多いのでしょう。イメージに魔力が多く載せられ制御が効いていない!!」

「そんなっ……」

確かに悪役のアルバは魔力量が高かったが、ここまで強大ではなかった筈だ!

それに幼少期にアルバが魔法でこんな危険な目に合うストーリーは無かった。

ここにいる人達の適性はヴァレリオ卿が火でルーチェが光で母であるアナスタシアは風だ。

どれもアルバの炎に対抗が難しい。

だが、だからといって何もしないわけにはいかない!

「にいさま……怖いよっ……!!」

アルバの頬に涙が伝い、空から落ちた雫が掌に当たった。

泣いている。護ると決めた彼が、幸せにすると決めた彼が泣いている。

「おいゴラそこのクソ鳥……。俺の大切な弟を泣かしてんじゃねぇぞ」

イメージする。

アルバを泣かせたあのクソ鳥を消し去る様を。

イメージする。

あの空から奴を引き釣り降ろす様を。

イメージする。

怪我の一つも許さずアルバを救い出す様を。

アルバと同じかは分からないが、俺だって本来なら自身の体に合わない魔力を持っており、そのせいで幼い頃に死んでしまう存在だったんだ。

だからきっと、今の俺なら出来る。

「待ってろ……兄ちゃんが助けるからな!!

弟が泣いてんだろうが!さっさと離せ!!!」

頭上に掲げていた手を思いっ切り振り下ろす。

____瞬間、それから滝のように大量の水が炎の鳥目掛けて流れ落ちた。

その水はアルバだけを避け、炎の鳥だけを攻撃している。

声もなく苦しむ炎の鳥は空中で咥えていたアルバを離した。

「わぁァァァァァァ!!?」

このままでは地面に衝突する。

だがそんな事はさせない。

空から流れ落ちた水がアルバの落下地点に集まり、山のような形を作る。

それは落ちてきたアルバを優しく受け止めた。

水というよりは冷たい弾力性のあるクッションになったそれはアルバをその水で濡らすことはなかった。

………だって風邪をひいたら嫌だろう?

そして炎の鳥は大量の水によって跡形もなく消え去った。

「アルバ!無事か?!怪我はないかっ?!!!」

「兄様………怖かったです!」

炎の鳥が消えたのを確認しすぐさまアルバの元へ走りより怪我の有無を確認する。

特に怪我は見られなかったが、怖い思いをさせてしまった。

怖かったと涙を流すアルバを抱き締めていれば、皆が集まってきた。

心配したとこちらも涙を流すルーチェをアルバごと抱き締める。

母もヴァレリオ卿もアルバが無事なのを確認して安心したように笑っていた。

「……アルバ様、ルイーナ様。お話があります」

そして真剣な表情でヴァレリオ卿が声を掛けてきた。

「お二人の魔力は強大です。このまま魔法を使っていればまた今回と同じ事が起きる可能性が高いです」

「………では俺達は魔法を使わないほうがいいのでしょうか」

「いえ、そこまで高い魔力を有していながら魔法を使わないでいれば高い魔力が体に蓄積され続け、最終的には命を落としてしまう危険があります」

「ではどうすれば…」

「魔力の調整に慣れるために、まずは媒体を用意しましょう。一般的には杖ですがきちんとお二人に合った物を用意するべきでしょう。

そして魔力を貯めておける魔石を常に身に付けておいた方が良いかと」

「そうですか。では父に頼んでみましょう」

……魔石を身に付けるのは変わらなかったか。

だけどこれで今回と同じ様な事が起きるリスクは小さくなるはずだ。

「アルバ、一緒に魔法の正しい使い方を覚えよう。

何があっても、俺が何度でも助けるから」

「うん……兄様と一緒なら、頑張るよ」

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