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第六十五話

 自身が思っていた以上に体は疲れていたらしく、何時の間にか眠っていたルイーナは部屋に差し込む温かな日差しを受け目を覚ました。

着替えなどの身支度を終え、起きる前には無かった朝食を食べていれば、小さく扉をノックされた。

「どうぞ」

「失礼します、ルイーナ様」

「おはよ〜う」

「おはようジュラルド、ロドルフォ」

 部屋に入ってきたのはラフな格好をしたジュラルドとロドルフォだった。

片手をあげてヘラリと笑うジュラルドと軽く頭を下げて挨拶をするロドルフォの姿に、クスクスと笑ったルイーナは二人に席を勧めた。

「セルペンテは後から来るそうです」

「あの子供、朝から荒れだけ地面に転がされても弱音一つ吐かないんだから凄いね」

「あぁ、ここからも見えるよ」

 言って食べ終えた皿を纏め席から立ち上がったルイーナは部屋の窓へと近寄り、そこから見える中庭を眺めた。

 中庭にでは泥まみれになっても何度も地面を転がっても立ち上がり、木刀を持ってセルペンテへと打込んでいるシリルの姿があった。

「体の使い方はまだぎこちないけど、相手をよく見て考えてから動いてる」

「無謀に動き回るより、考えて動ける人の方が使えますからね」

「騎士団にも、考えはするけど視界が狭まるのが何人かいたからなぁ〜」

「特にブランドはその傾向が強かったですね」

「ブランド?」

「騎士団の中ででも一番若い男です。

剣の腕は一般の者よりは強いですが、魔法の腕はそこそこ。

自身の考えを一直線に走る男です」

「人を護る為の騎士が自分の考えだけで突っ走るのは駄目だって教えても駄目。

俺達が何を言っても変わらなかったからねぇ。

あの手の子は、本当に痛い目見ないと分からないんだよ」

 重苦しいため息を吐き、頭が痛いとその頭を抱えるジュラルドとロドルフォ。

その様子に彼等も苦労しているのだなと苦笑を溢したルイーナは、またもいつの間に用意されていたのか朝食の食器は片付けられ、代わりに置いてあった湯気の立つポットから備え付けられたカップに紅茶を注ぎ、二人へと差し出した。

 その後三人で紅茶を飲んでいれば聴こえてきたノックの音に入室を促せば、セルペンテが部屋へと入ってきた。

「お疲れ様、紅茶いれるからセルもそこに座りな」

「はい。ありがとうございます」

 席についたセルペンテの前にルイーナが紅茶を差し出しせば、感謝を告げたセルペンテは紅茶を飲み喉を潤した。

「…………さて、セルも来たことだし本題に入ろうか」

 紅茶を飲み、一息ついたルイーナがそう言葉を発すれば、その場にピリリとした緊張感が走った。

「あの報告書にあったのは確か?」

「はい。私と私の信頼のおける精鋭達が調べた確かな情報です」

「………ダンジョンにいるモンスターを地上に連れ出して売り捌くなんて、よく考えたものですね」

 今回、こうしてルイーナ達三人がセルペンテの屋敷を訪れたのはこの話をするためだった。

子供達の誘拐事件に次いで今度はダンジョン内の凶悪なモンスターを地上に生きたまま連れ出すと言う事案が発生していた。

「金持ちの道楽にサイコパス研究員の非人道的な実験の為のモルモット……」

「それにモンスターだけに留まらず、幼い子供達にまで手を出すとするなんてなぁ」

 前回の子供達の誘拐事件。

その際に捉えた研究員は、その捉えた子供達を実験台に複数の人間とモンスターを混ぜ合わせたキメラを創ろうとしていたのだと悪びれも無く言っていた。

そして自分以外にもまだ多くの人間がソレに関わっている。

自分達はトカゲのしっぽ切りでしか無いのだと笑っていた。

「せめてあの研究員が背後にいる奴を知っていれば楽だったんだけど………」

「恐らくこの国に敵を招き入れた貴族の誰かでしょう」

「金や娯楽に溺れても無駄に悪知恵は働くんですから、救いようのない連中ですよ」

 その場にいた全員が重い溜息を吐いた。

どうもこれらの一件は一筋縄ではいかないようだ。

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