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第六十話

 背後に置いていた筈の小石が進む先に点々と連なっているという事は、ルイーナの推察通りこの洞窟内を回っているという事。

この洞窟がダンジョンであるなら、ダンジョンの核が施したトラップの類だと考えられるがここはダンジョンとは関係ないただの洞窟でしかない。

 つまり、誰かが意図的に施した魔法が洞窟の先に進む道を阻んでいるのだ。

何か疚しい事があるのか、ただの気まぐれか何かなのかは皆目見当もつかないがこの先に何かがある事は確実だろう。

「行ってみるに越した事はないな」

言って、ルイーナは徐に自身の身に付けていたブレスレットを外した。

そしてレッグホルスターから細やかな装飾の施された短剣を取り出し、鞘から抜けばエメラルド色に輝く透き通った美しい刀剣が顕になった。

 この短剣は陰となったルイーナに彼の両親が贈ったものだ。

「ミスリルで鍛えた短剣だ。

……………陰だからといって自身の傷を無視するな。

逃げることは恥ではない。必ずここへ帰って来なさい」

「いい?あの人達の事を信用していないわけじゃないけど、何かあったら自分の身を優先しなさい。

異性でも同性であっても、嫌なことをされたら容赦なくその短剣で身を守りなさい。気を付けるのよ」

父親は気恥ずかしかったのか顔を明後日の方向へと逸しながら、母親はルイーナの肩を掴み真剣な表情を浮かべながらそう語った。

 クスリと短剣を渡された当時の事を思い出し笑うルイーナ。

そして短剣に魔力を流し、自身の足元へと勢いよく突き刺した。

「隠れんぼしてるのは誰かな?」

 瞬間、短剣を突き刺した場所を中心に薄暗い洞窟内に眩い光が溢れ出した。

その光は霧のように周囲に広がり足元だけではなく、天井までも覆った。

________ピシッ………。

 そして洞窟内が光で満たされた瞬間、ルイーナの目の前の空間にヒビが入った。

そのひび割れは段々と大きくなっていく。

ひび割れは段々と大きくなり、ガラスの割れるような音とともにガラガラと崩れ去った。

空間が崩れ去った先には、同じ様で違う景色が広がっていた。

 短剣を鞘に収めレッグホルスターにしまったルイーナは先へと歩き出した。

そしてしっかりと周囲を確認し警戒を怠らず慎重に進んでいくと、先には感じられなかった何かの匂いと自身の足音以外の音が聴こえてきた。

その音と匂いの元へと進んでいくと、ルイーナの元へと向かってくるナニかの足音が耳朶を打つ。

近付いてくる音に、腰を低くし魔力を練りあげ迎え撃つ体制で構えるルイーナ。

 だがルイーナは自身の方向へと向かってくるその存在を認識した時、身構えていた戦闘態勢から地面に両膝を付き、陰としての仮面を付け両の手を広げた。

「スペランツァ様!!」

ルイーナの広げられた腕の中に飛び込んできたのは、行方が分からなくなっていた、あの子供だった。

「良かった……、居なくなったって聞いて心配したよ」

ルイーナが軽く子供の体を見るが、怪我らしい怪我もなく顔色も悪くはなく健康そうだった。

「すみません……」

「無事ならそれでいいよ。でも、どうしてこんな所に?」

「それは……」


「その事については儂が説明しようかの」



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