第五十八話
最初よりはゆっくりと馬を歩かせ、目的の場所へと向かう。
「あ、アレですね」
「…でも、何か騒がしくなーい?」
「ほんとだ……何かあったとかな」
目的であった屋敷が近付くにつれて、草木を掻き分け慌ただしく走る足音と様々な誰かの声がルイーナ達三人の耳に入ってきた。
「ニ班は湖周辺を捜索して下さい!三班は屋敷周辺にある洞窟を!一班は引き続き屋敷内を捜索して下さい!」
「プレガーレ!」
「っ、スペランツァ様……」
慌ただしく様々な声が飛び交う中、あの栗色の髪に茶色い瞳の子供がいる事も考慮して本名で呼ばずに、影としての名をルイーナが呼べばセルペンテも目を見開きつつもその名で呼ばれた意味を正しく理解し、ルイーナの陰としての名を呟いた。
「何があった」
「それが……、あの子供を覚えていますか。
栗色の髪に茶色い瞳の子供です」
「その子がどうかしたの?」
「申し訳ありません。目を離したすきに何処かへと行ってしまい……、現在行方が分からなくなっております」
「そんなっ!!」
ルイーナの元へ駆け寄ってきたセルペンテは頭を下げ、保護した子供がいなくなってしまった経緯を話した。
何時ものようにセルペンテは子供に歴史や算術に剣術、魔力の練り方や扱い方を子供に教えていた。
セルペンテが子供に実際に魔法を行使して教えていた所、セルペンテの部下が資料を手に確認を取りに来た。
その資料を見つつ部下に指示を出していた僅かな時間、子供から目を離した数分の間に子供の姿は消えていたそうだ。
そして更に問題が起こった。
目を離す前まで子供がいた周辺から、森の至る所で見付かった使用者不明の魔力痕が確認されたのだ。
「なら、あの子供は誰かに攫われた?」
「それが……、通常使われた際に出来る魔力痕から使用された魔法を調べられます。
実際に調べた所、使用された魔法は子供を攫えられる様な魔法ではありませんでした」
「攫える魔法じゃないー?何さそれ」
「転移や幻覚、幻惑等の一般的に誘拐目的で使用される類の魔法では無く木々の成長を促すものでした」
「あぁ、だから子供のいた場所ではなく周辺から魔力痕が出たんですね?」
「はい。ご覧の通りここは一歩外へ出ればすぐそこは森です。
その為、周辺一帯に魔法を使われては子供の魔力を探し出すのは困難を極めます。
なのでこうして現在部下達と共に捜索中です」
「俺達も捜索に協力するよ。
………子供がいなくなったのはセルのせいじゃない。
だからそんなに自分を責めないで」
未だに頭を下げたままのセルペンテの頬に両手を当て、ゆっくりと促す様に頭を上げさせたルイーナ。
眉尻を下げ下唇を噛むセルペンテに苦笑しつつ小声で自身を責めるなと囁いたルイーナの言葉に、僅かに震えた声で返事を返したセルペンテは、一度頬に当てられた手に擦り寄るとスッと倒していた上体を起こし姿勢を正した。
「寛大な御心に感謝します。
現在の捜索範囲としては、屋敷内部から右翼と左翼に別れての捜索を行っております。
右翼は先にある湖を目安に捜索。
左翼は同じく先にある天然の洞窟を捜索しています」
「なるほど……。
なら屋敷の内部や周辺の捜索はカング
右翼はカテーナがプレガーレの部下達と協力して捜索を
俺は左翼にいる人達と合流して捜索する。
カテーナは引き続きこの場の指揮を頼む」
「「「はっ!!」」」




