第五十七話
誰もが通る事を躊躇う未開の森。
通称、魔女の住まう森のをルイーナ達一行は躊躇うこと無く進んでいく。
「そう言えば、この森って魔女が住んでるんだっけ?」
「でも魔女って言っても魔法が使えるだけの人間でしょう?どうせ近隣の村の子供達が入り込まないように大人が言いふらしてる根拠のない只の噂話ですよ〜」
「うーん、俺も最近まではそうだって思ってたんだけど………」
「何か気になることでもあったんですか?」
「気になる事と言うかセルが送ってきたこの場所の報告書を読んで、本当にこの森に住む魔女が居るんじゃないかなって思って」
「只の子供だましのでは無いと?」
「…………多分?」
ルイーナが受け取ったセルペンテからの報告書には、この森は未開拓な割には所々整備されている場所や明らかに人工的に作られた井戸等が点々と存在していると記されていた。
他にも斧で切り倒された木々や森にある巨大な湖を往復するための小舟や桟橋も存在していた。
念の為に森の周辺にある村や、そこをよく通るという行商人にも話を聞いたが、誰も森には入ったことがないと言うばかり。
森の中は例え日が昇っていっても薄暗く明かり無しでは危険な場所も多く、そんな所で野生の狼や熊に襲われれば一溜りも無いと誰一人として森に入ることを躊躇っているようだった。
「セル達がここに来た時には、誰かの魔力痕があったらしいから誰かが森で魔法を使ったのは確定。
でもセル達がどれだけ森の中を探してもそれらしい人物はいない。
なのに日に日に魔力痕は更新されるし、偶にセル達が知らない花が建てた家の近くに添えられてるらしいよ」
「………それ、確実に誰か居るよね?」
「………その花って何か呪いの呪具って可能性ありません?」
「いるだろうねぇ。
その花は綺麗なだけで害は無さそうだから飾ってるって言ってたよ?」
「精神面強すぎでは…………?」
信じられないと引きつった表情を浮かべるジュラルドとロベルトにルイーナは苦笑を溢した。
事前にこの話を報告された時も、ルイーナ自身同じ顔をしていたのだから彼等のそれは激しく同意といった意見だった。
「ははは…………あ、そろそろ付く頃かな」
「そのようですね。指定されていた目印もありますし」
そう言ってロベルトが指差したのは、周囲に無数に生える木々の内でも小さな子供の背丈程の大きさの幼木だった。
自然に馴染み溶け込んでいるその幼木は、注視していなければその存在を知らなければ誰にも気付かれる事は無いだろう。
その幼木を見付けられたのは事前に知らされていた事と、その幼木に付けられた見慣れた魔力のお陰だった。
「ちゃんとこちらの魔力に反応していますね」
「いや、何でこんなコロコロ変わる?」
「そこは………セルの遊び心と言うことで」
覚えさせた魔力に反応して葉の色を変化させる魔法が掛けてあるとセルペンテはルイーナにそう報告はしたが色の掲示はなかった。
事前に知らされていたルイーナは赤や青といった無難な一色に変化するとその時は思っていた。
「橙色、白……違くて銀色、そして黒ねえ。
ルイーナ様と俺達、そしてセルペンテの瞳の色にしたのか……」
「ジュラルド?」
「何でも無いですよ〜?ただセルペンテは俺達のことが大好きなんだなぁと」
「?」
ジュラルドのその言葉に首を傾げるルイーナと、ジュラルドの言葉で変化する葉の色との繋がりに気付いたロベルトは気恥ずかしそうに指で頬をかいた。
「まぁその話は置いといて………。
無事に目印も見付けましたし、先に進みましょう」
「そうだね。この子達もしっかり休ませてあげたいし………」
馬の首筋あたりをルイーナが優しく撫でれば、馬はその手に擦り寄り小さく鳴き声をあげた。




