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第五十六話

 ファウスト家次期当主の正式な発表を行う日程が決まった翌日、ルイーナは自身で馬を走らせとある場所へと向かっていた。

「ルイーナ様〜、なんで馬車は駄目なのに馬には平気で乗れるんです?」

「可愛いは正義だから」

「………えっ、それが理由なんですか?」

「動物とかなら平気なんですー」

「へん……じゃなくて不思議だねぇ」

「今何か言いかけたよね?」

「何にも?」

 ジトリとした目を向けるルイーナにジュラルドは口笛と共に視線をずらし、それに顔に出そうになる笑いを堪える為にロベルトは天気を見るフリをして目線を二人から反らした。

「まぁいっか。でも何気にセルの家に行くのは初めてだな」

「まさかあの年で家を建てるとは思いませんでした」

「ルイーナ様より何歳か年上だよね?

陰として使える隠れ家があるのは助かるけど、正直期待はできないかなぁ」

「あー………。ルイーナ様、彼が自分で造ったんですよね?業者に頼むのではなく」

「うん。セル一人じゃなくて彼が信用と信頼の置ける人達とで一から造った自信作だって言ってたよ」

「その中に建築経験のある人っています?」

「………報告ではそんな人いなかったなぁ」

「うーん。更に不安になってきたぞぉ……」

 頭が痛くなってきたと、器用に手綱から片手を離しバランスを取りながらも髪の毛をかき回すジュラルドにルイーナは苦笑を溢し、ロベルトは折角整えた髪が崩れるのでやめてくれと注意の声を上げた。

 暫くの間、他愛ない会話を楽しみつつ馬を走らせる。

そして小さな泉を見つけたロベルトが、馬を休ませようとルイーナとジュラルドに、声をかけ休憩を促した。

幸いにも泉の水は透き通っていて、飲む分には問題なかった為三人もそれぞれ泉の水を飲み柔らかな芝生に腰を下ろした。

「長い時間馬に乗ってると尻と腰が痛いぃ」

「確かに。馬が進むのに合わせて体を軽く持ち上げたりと色々試してみたけど、どれも効果が感じられなかったよ」

「余りにも痛みが続くようであれば教えて下さい」

「「はーい」」

 何処か呆れたような、それでいて心配そうな顔をするロベルトに大丈夫だと言う様にルイーナとジュラルドが揃って気の抜けたような返事を返せば、ロベルトは笑った。

持ってきていたパニーノに三人で齧り付き腹ごしらえを行なう。

 数十分間の休憩を挟み、腹も満たされた三人は再度それぞれの馬へと跨がり目的地へと続く道を進んで行った。

「あ、そう言えばセルペンテの所に預けてた子供ってどうなったの?」

「あぁ……あの子なら今はセルが育ててるよ。

もしかしたら今日会えるかもね」

「家だけでなく、その子供がマトモである事を願っておきます」

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