第五十五話
「お兄様!もうお体は平気なのですか?」
「あの、パーティの日に兄様の体調が悪かったなんて知らなくて…………。気付けないでごめんなさい」
「大丈夫だよ。心配掛けてごめんな?
もう大丈夫だから……」
執務室から自身の部屋へと戻る途中、二人で何か本でも読んでいたのか、書斎からルーチェとアルバが顔を覗かせルイーナを見ると慌てたように駆け寄ってきた。
「この後、二人でお兄様の部屋に伺おうと思っていたんです」
「そうだったのか……。二人は書斎で何をしてたんだ?」
「兄様が元気になれるような物を何か姉様と一緒に作れないかと探していたんです。
でも、兄様が何を食べたら喜んでくれるか分からなくて………」
途端に先程まで会えて嬉しいと眩しいほどの笑顔をルイーナに向けていたルーチェとアルバは、シュンと小さくも愛らしい唇を僅かに突き出して剥れたように、或いは耳と尻尾をヘニョリと下げた子犬の様に顔を俯けた。
「んぁっ………可愛さに浄化されそう……」
てえてえ。と小さく呟き片手で両目を抑え、天を仰ぐルイーナ。
そしてルイーナのその行動に慌てたのは、俯きながらも様子を伺っていたルーチェとアルバだった。
「お兄様、矢張りまだ体調が………」
「違う違う。ただ俺には眩しすぎて………。
本当に何でも無いし元気だから、ルーチェもアルバもそんな顔しないで」
今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべるルーチェとアルバに、慌てて何でも無いのだと目元を覆っていた手を外し、二人の目線に合わせるように膝を折って顔を覗き込んだ。
二人を安心させようと、なるべく優しげで穏やかそうな声を意識して笑みと共に声を掛ければ、安心したように息を吐き小さくではあるが、ルーチェもアルバもその顔に笑みを浮かべてルイーナを見返した。
「……もしかしたら、今後もまた心配を掛けるかもしれない。でも必ず二人の居る、家族が待っていてくれるこの家に帰ってくるから……だから俺を信じて待っててくれる?」
「当たり前じゃないですか。家族なんですから」
「私達は何時でもお兄様を信じて、何処に行っても戻ってきてくれると信じていますよ」
「…………ありがとうルーチェ、アルバ。
こんなに優しくて頼りになる妹と弟を持てて俺は幸せ者だなぁ」
涙で潤んだ瞳がバレないようにルイーナはルーチェとアルバを強く抱き締めた。
それに擽ったそうに、それでいて嬉しそうに恥ずかしそうにしながらもルーチェとアルバもルイーナの背に腕を回し力一杯抱き締め返した。
「(温かい)」
愛しく自身の体だけでなく心までも温めるかのように、二人の体温がルイーナの体を包み込んだ。
疲れ切っていた身体も張り詰めていた神経も緩やかに落ち着きを取り戻し、息がしやすい。
「(絶対、二人を護るからな)」




