第五十四話
ファウスト家での次期当主の正式な発表を行う日程が決まった。
現当主であるラウル・ファウストとの話し合いの結果、パーティから一週間後に行なうこととなった。
理由としてはあの日、あのパーティ会場にいた貴族間で次期当主が長男であるルイーナ・ファウストではなく、次男であるアルバ・ファウストだと言う話をより多くの貴族に広める為だ。
「コレで良いのか?」
「はい、感謝します。父様」
正式な次期当主を発表するファウスト家主催のパーティの日程を社交界の重要人物及び顔の広い貴族に手紙を送った翌日、ルイーナの姿はラウルのいる執務室にあった。
「…………体調は、大丈夫なのか」
「はい?」
「倒れたと、聞いた……」
「心配を掛けてしまいすみません。
でももう大丈夫です。もっと力を付けないと陰として使えなくなってしまいますからね。もっと精進しなければ」
「…………本来なら私が陰として動かなければならないんだがな」
「父様は執務がお忙しいでしょう。
聴きましたよ?国の防衛を任されたと」
そう。ラウルは公爵となってからは今までよりも更に多くの執務に追われていた。
それこそ、休む暇も無いほどに。
この国は魔法障壁に覆われ、魔物や敵の侵入を拒んでいる。
だが、今回起こったこの国の貴族が間者を内部に侵入させた事は本来であれば不可能の筈だった。
この国の魔法障壁は外部からの侵入を防ぐことには特化している。
それは揺ぎのない事実だった。
だが欠点がないわけではない。
今までは国内に入る為には国の唯一の出入り口にいる警備隊の者か、首都を防衛している騎士団から直接許可証を貰わなければならなかった。
だが、今回の件でこの国の衣類やこの国特有の何かを所持していればその者に対して国の魔法障壁あその者を外部の人間とは判断しにくいという事実が発覚した。
何故そんな簡単な事に気付かなかったのか。
誰も、誰一人として魔法障壁の効果を疑いもしなかった。
誰も、誰も疑わず何も知らずただ平和と魔法に頼り切りあぐらをかいていたに過ぎなかったのだ。
「新たに魔法障壁の改善だけでなく、首都の防壁をより強固にしたと聞きましたよ。
今も警備隊の強化や間者を入れないための見張りや見回りの改善も行っているんでしょう?」
「ま、まぁな」
凄いと言葉にせずとも言外に瞳を輝かせ尊敬の念をその視線に乗せラウルを見るルイーナ。
そしてその手の視線を受けるのに慣れていないのか、照れくさそうに指で頬を掻くラウル。
家族として、普通で当たり前の形がそこにはあった。




