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第五十三話

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくおねがい致します。

「なるほど……、確かにファウスト家はこの国でも名家と名高い貴族ですからね。

社交界でも中心となる人物が多く訪れるでしょう」

「少し前に侯爵から公爵へと昇格した事も注目の的だしね〜」

ジュラルドが言う様に、ファウスト家は侯爵と言う立ち位置から公爵へと昇格した。

あの日、ルーチェを神の愛娘だと公表しない代わりにルイーナが陰となる事を告げられた日。

その翌日に国王はファウスト家を公爵へと任命した。

表の理由は永きに渡る国とそこに住まう多くの民を護り支えてきた功績を讃える為。

随分と前からその話はまことしやかに様々な場所で囁かれていたものであった為に、それを聴いた他の貴族達からは特にこれといった反感はなく、寧ろ今まで以上に露骨に媚を売ってくる次第だ。

裏の理由としては、ファウスト家を公爵へと昇格させる事により王城へ入る事を以前より容易にする為。

そしてより政治やこの国の情報が入りやすい様にし、陰であるルイーナがすぐに動ける様にと言う配慮からだった。

「それに、この前のパーティにいた人達からもうひろまってるだろうけど俺じゃなくて本当にアルバがファウスト家次期当主なのか確認したいだろうし。

確認して、本当だと分かれば欲に塗れた連中は幼いアルバを自分達の都合よく使いたいが為に近づいてくる」

「もしくは当主争いに敗けたルイーナ様に近づいてアルバ様を陥れルイーナ様を当主にと囁きかけるか、だろうねぇ?」

座っていた席から立ち上がり、ルイーナの背後に回ったジュラルドはその言葉と共にルイーナの肩口から両手を伸ばし耳元に唇を寄せ、その体に垂れかかった。

「どちらにせよ連中は来るよ。欲に塗れた連中はある意味では動かしやすいからね」

耳にかかる息と耳朶を震わせる声に身をよじらせながらクスクスと笑うルイーナ。

その様子が面白かったのかジュラルドはルイーナの耳元から首筋へと唇を下ろして彼の反応を楽しんでいた。

「あぁ、欲に塗れた連中は目先の欲には忠実ですからね。

きっと自分達を誘き寄せる為の餌とも知らずに喰い付くでしょう」

最初はジュラルドの好きな様にさせていたルイーナも流石に擽ったかったのか、ジュラルドにクッキーを食べさせる事で止めさせたルイーナは、自身も紅茶を楽しみつつロベルトの言葉に頷いた。

「怪しい貴族を重点的に捜査してるって言ってたけど、どれくらいに絞れてる?」

「約十名程ですが、より黒に近いのは三名ですね」

「……………爵位は?」

「その三名でしたら、二名が子爵そして一名が伯爵です。

それ以外で現在名が上がってる者の爵位は、殆どが男爵か子爵しかいませんね」

「因みに伯爵って言うのはヴァランガ・チミテーロ伯爵だよ」

「あの人か……」

ヴァランガ・チミテーロ。

ファウスト家よりも前からチミテーロ家は王に使え忠誠を誓ってはいるが、已然としてその爵位は伯爵から変化することは無い。

何故なら……

『チミテーロ家は王の座を狙っている』

『チミテーロ家は厄災を呼び覚まし、厄災の元へと馳せ参じる機会を伺っている』

そんな噂があるからだ。

火のない所に煙はたたない。

何かある筈だと調べても、物的証拠は何も得られなかった。

物的証拠は、と言う言葉が付くが。

かの人物は誰よりも厄災に詳しかった。

そして何よりもその目。

何も映さずただ深淵を覗いているかのような瞳に、その身体に纏うオーラが恐ろしいのだと彼を調べた者達は言った。

だからこそ王は彼を恐れ伯爵と言う地位に抑えているのだ。

「俺は実際に会ったことないからな」

自身の部下であり協力者であり大切な仲間である彼等の言葉や調査結果を疑う訳ではない。

だが、自分の目で見て実際に言葉を交わしてみないことには分からないのだとルイーナは二人に話した。

「その伯爵とも話したいし陛下の命令もあるからね。

パパっと調査しちゃおうか」

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