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第五十話

「ここからまっすぐ行けば城に入れるし、もし何かあれば警備担当が気付くから二人で行けるねー」

「念の為、ここを抜ける手前辺りまでは送るよ」

ゆるゆると片手を持ち上げ道を指差すカングに、苦笑を溢しながらノアとエイダンを促す様に背を押すスペランツァ。

そして未だ脳が追いついていないのか、目を白黒させる二人と、そんな彼等を面白がり又は微笑ましそうな目で見ている同僚となった彼と主たる彼の後で小さく笑いながら後をついて行くカテーナ。

暫く歩いていれば、漸く脳が自身に起こったことを理解し始めたのか、ノアとエイダンは立ち止まり、自分達の真後ろにいたスペランツァへと向き直った。

「聞いていたものでも見たことたるものでも、矢張り自身の身で体験するとでは大違いですね!!」

「すげー!すげー、すげーよ!!

瞬きしたらパッ!て部屋から外に出やがった!!

はえーし、はえー!!すげぇ!!」

細められ見えることのなかったノアの紫色の瞳がキラキラと輝きを放っているかのように覗き込み、エイダンもその赤い瞳を輝かせノアの様にスペランツァを覗き込んでいる。

「確かに初めてだと驚くしワクワクしちゃうよな〜。

俺も初めての時はそうだったし」

その様子を微笑ましそうにマスクから覗く口元に笑みを浮かべノアとエイダンを撫でるスペランツァは、自身も彼らの様にはしゃいだのだと話した。

「それにそれに!三人係と言う事は相当の魔力を有するのでしょう?

それにあの陣!あんなに複雑な物は見たことない!」

「転移魔法は細かい所まで設定と調整をしないと、正常に作動してくれないからね。

一つでもズレてたり問題があれば、術者も使用者もどうなるか分からないから」

「どうなるかある程度は把握してるのか?」

「んー、体の何処かしらとか散り散りになってそれぞれ別の場所に転移させられるが、目的とは全く別の場所に転移させられる……………くらいかな?」

「うわぁ………、こわぁあ」

「怖いよねぇ〜、でもそれをまだ準備段階にも関わらず危機として飛び込んでいったのがこの人です」

「まぁ魔法が発動する前に、カングに回収されて仕置きまでされて涙目でしたけどね」

「い、言わないでぇ………。好奇心が、転移とか自分で体験できるんだって思ったら体が動いてたんですぅ。無意識だったんです……」

「なお悪いよねぇ〜?」

「はぇ~、マスク越しでも分かる目が怖いんじゃあぁ…」

そして話の流れに便乗してスペランツァの痴態を嬉々として話すカングとカテーナ。

そしてノアとエイダンの前で自身の恥ずかしい黒歴史とも呼べるものを暴露されたスペランツァは、自身の顔を両手で多い隠し身体を小さく丸めて蹲った。

サラリと流れた黒髪の間から覗く耳が赤く染まっていた。

「よし!それじゃあスペランツァ様を弄るのはまだ今度やるとして………」

「いや弄らないで?!」

「嫌だよ〜。兎に角、二人を早く城に連れて行かないと」

「確かに、余り遅ければ何かあったのかと騎士団が動きかねませんからね」

「うぅ……そう言う事だから先を急ごうか。

あと、さっきの話は忘れてくれると助かるなぁ」

「無理です」

「無理だな」

立ち上がり項垂れながらも自身の暴露された黒歴史を忘れてくれと話すスペランツァに、ノアとエイダンはそれぞれ愉しげな深い笑みを浮かべ出来ないと答えた。

その言葉にガクリと肩を落としたまま先を進んでいくスペランツァの背後ではノアとエイダン、そしてカングとカテーナは四人で顔を見合わせクスクスと笑い合った。

「それじゃあ、俺達はここまでだよ」

木々に覆われた道が途切れ、あと一歩でも足を踏み出せば塗装され整備された道へと変わるその境界線で前を歩いていたスペランツァは足を止めた。

「何かあれば警備担当に聞けば分かるから」

「分かりました。

改めて、助けて頂きありがとう御座いました。

今の力では貴方を護るどころか支える事も難しいでしょう、

ですから、力を付けたらこの御恩をお返しに参ります」

「君が健やかにのびのびと育ってくれればそれでいいよ。

お礼が欲しくてやったわけじゃないから」

「あー、でもスペランツァ様を護り支える人が増えるのは大歓迎だよ〜」

「そうですね。この人の無茶振りを止める人物が増えるのは好ましいですし」

「俺も、俺もいつか人型を取れるようになって力を付けたらアンタを護って支えられる男になってやる。

助けてくれて、ありがとう…ございます」

「………護るとか支えるのは置いといて、まずはゆっくり休みなよ?」

スペランツァの言葉に返事を返し、整備された道を踏みしめたノアとエイダンは一度も振り返る事なく門へと向かって行った。 

そしてその姿が重く硬い扉の奥にノアとエイダンが消えたのを見届けたスペランツァ達はそれぞれマスクを外した。

「お疲れさまでした。この後は他の仕事も無いし屋敷に戻って休もう」

「そうだねぇ。流石に働き詰めは大変だぁ」

「そう言えば今回の報告書を書く際にプレガーレと一緒に別れたあの子供はいいとして、あの二人の名前はご存知ですか?」

「ご存知、ない……ですね」

冷や汗を溢し二人を伺い見るルイーナにため息を一つ溢したロベルト。

「銀髪の子供はノア・チェイス

そして赤毛の人狼の子供はエイダン・アドルファスですよ」

ロベルトが彼等の名前を告げた途端、零れ落ちてしまうんじゃないかと錯覚してしまう程に目を見開いたルイーナは声にならない叫び声を上げた。

「(なんで攻略対象キャラと会っちゃってんのーーーー?!)」

ジュラルドに口を塞がれたまま、ルイーナは目を回しパタリと眠りに落ちた。

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