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第四十九話

城壁に護られた巨大都市に続く入り口近くにある林の奥で馬車は停まった。

「ここからは歩いて行くけど、それなりに近くなったら俺達は戻るから後は君等二人で城に入ってくれ」

「分かりました」

「分かった」

スペランツァの言葉にそれぞれ返事を返したノアとエイダンは先を歩く彼の痕をついて行った。

そしてその背後からは先を進む彼等を護るようにしてカングとカテーナが歩いている。

「あれ、でも国に入るには城門を超えないと行けませんよね?」

「そうだ、姿を見られたくないのにそれは大丈夫なのか?」

「大丈夫。俺達専用の抜け穴があるんだ」

「抜け穴、ですか?」

そう言って五人がついたのは城門の正門…………ではなくその近くにある見張り小屋。

「この近くに美味しいパン屋があるそうだな?」

「あぁ、あの小麦パンの店か?」

「そうそう、あの店の小麦パンが忘れられなくてね。

特に黒パンは良かった。

それに中に橙色の、マーマレードだったか。そのジャムを練り込んでいるんだったな」

「話が分かるな。じゃあこれなんかどうだい?」

「あー、それよりクリームをたっぷりの方がいいな」

見張り小屋にいた兵士に気さくに声を掛けたカング。

そして王都にあるパン屋の話をしだした彼に、ノアとエイダンは揃って首を傾げ傍に立っていたスペランツァとカテーナを見た。

「安心して下さい。別にただ話しているだけじゃありませんよ」

「抜け穴を通る前の下準備、って所かな」

「でも、ただパンの話をしてるだけにしか見えないぞ?」

「下準備……抜け穴………、もしかして暗号か合言葉的な物ですか?」

「ご名等!まぁ例え今のを誰かに聴かれても、一度使ったものはそれ以降使えないから安全策もバッチリなんだ」

「それにコレを知っているのは私達以外はスペランツァ様が信頼出来ると判断した者にしか知らされてません」

正解だと手を叩き褒めるスペランツァに苦笑を溢しつつ、補足するように言葉を足したカテーナにそれを聴いた二人は頷いた。

「おーい、彼がオススメのパンを教えてくれるそうなんで、皆さんもお邪魔しましょーよー」

「はーい!

それじゃあ行きましょうか」

手を大きく振り四人を呼ぶカングに返事を返し彼の元へと向かうスペランツァと共にノアとエイダン、そしてカテーナは見張り小屋の中へと案内されるまま入っていった。

「では、任務お疲れさまでした。

このまま城の前まで転移なされますか?」

部屋に入りその扉が湿られた途端、見張り小屋の中にいた二人とカングに対応していた一人は敬う様に三人を見て頭を下げた。

「ありがとうございます。

早速ですが転移をお願いできますか?」

「はっ!直ちに用意しますので、そちらで少々お待ち下さい」

部屋にあるテーブルに案内され席に付いた五人の前にお茶を置いて見張り人の三人は別室へと向かって行った。

「……今の方々も貴方方の事をご存知なんですね」

「ふふっ……まぁ、このまま国の中に入ろうとすれば疑われてしまうでしょう?

だから事情を知っている人が対処してくれた方がこちらとしても助かるし、転移魔法なんて俺達には難しいし、魔力不足で動けなくなる」

「だからここに?」

「そーだよー。だって一番簡単だしリスクも低め、それに行きやすいし戻りやすい」

「転移魔法かぁ………、俺の魔力は無いに等しいからな。転移魔法なんて夢のまた夢だ」

「あぁ、だから人狼族だと言う割に人にならなかったんですね。

獣と人の二つの形を持つ獣人は魔力で姿を変えますし」

「おかしーよなー、普通はこの量でなら問題なく人型になれる筈なのに」

机に置いた自身の腕に顔を押し付けながら言うエイダンに四人が掛ける言葉を探していれば、別室に居た見張り人の一人が部屋へと入り準備が出来たと伝えた。

「普通は見張り小屋なんかに、こんな場所があるなんで誰も想像出来ないだろ」

「まぁそれが狙いだからねぇ」

五人がいた部屋の真隣、その部屋の家具を動かし現れた取手に手を掛け自身の方へと引っ張り上げた。

そして現れた地下へと続く階段を降りきったその先にソレがあった。

所々木製の壁から地面の色へと変化しているものもあるが、その場所はノアとエイダンが捕まっていたあの場所よりも遥かに清潔だった。

「座標は?」

「城の付近にある林の中です。その周辺は誰もいない事を既に調査してあります」

「何時もありがとな。助かる」

「お役に立てて光栄です。では陣の上に……」

地下室の中央にある、淡く緑色に輝き図形がいくつも重なるようにして描かれた転移の魔法陣の上に五人が入る。

「では転移させます」

「おー、失敗すんなよ〜?」

「しませんよ」

茶化すように言うカングに答えた一人が小さく笑う声が部屋に木霊する。

そして五人が魔法陣の中に完全に入った事を確認した三人は杖を持ち魔力を込めた。

その魔力は杖を伝い魔法陣へと流れ込む。

そして流れ込んだ魔力に反応し、より一層眩く存在感を放つ魔法陣の眩しさに目を瞑ったノアとエイダンがしばらく閉じていた目を開けば、目の前は先程までみていた木造の家の壁ではなく、緑に彩られた草木が芽吹き、薄っすらと城の門が見える外だった。

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