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第三話

朝食を済ませ、ルーチェとアルバと共に俺の部屋で寝込んでいた間の事を聞いた。

そしてさらなる改善すべき点が見付かった。

「………嘘だろ、食事も制限されてるのか?

しかも問題を間違えただけで叩かれる?

は?キレそうなんだが????」

「兄様!僕は慣れたので大丈夫です!!」

「私も慣れたので大丈夫です!」

「慣れちゃ駄目だ慣れちゃ駄目なんだよ………」

もう俺の中のグッピーが死にそう。

グッピーが何かはよく分かってないけど、兎に角この状況は不味い。

第一に食事の制限についてだ。

神の愛娘は妖精と心を通わせられる特別な存在なのだから、自然の恵みから取れた野菜しか取ってはならないなんて言う意味不明な言い分で食事は野菜しか取れていないルーチェ。

次に勉強についてだ。

問題を一問でも間違えれば怒鳴られ叩かれるアルバ。しかも食事を抜かれる事もあったと聞いて俺は頭と腹が痛くなった。

子供の為という大人の言い分で管理される子供が幸せになれるわけがない。

それは本当に子供のためと言えるのだろうか?

親は子供を守る義務がある。

確かに子育ては難しく言葉で言い表せるものではないと分かってる。

でも望んで産んだ子も、例えそうでなくても、子供を護れるのは親しかいない。

子供が頼れるのは親しかいないんだ。

お前のためだと言い聞かせ、物事を強制してしまっては、それは子供の心を苦しめ最悪の場合は壊してしまう。

幼い頃に壊された心は、もう戻せない。

それだけ幼い頃の出来事は鮮明に残るのだ。

「二人共、それは慣れちゃ駄目だ。慣れて良いものじゃない。

自分を無理やり押さえつけてまで良い子でいるのが偉いわけじゃない。

辛い時は辛いと言って良いんだ。嫌なものは嫌だと言葉にして良いんだよ?」

二人の幼少期のストーリーではこんなのは書かれていなかった。

知らない所でこんな事が起こっていたなんて………そんなのあんまりじゃないか。

二人の頭を撫で抱き締める。

強く、強く抱き締める。

ごめん。ごめんな。

俺がもっと早く目覚めていれば、あの両親を止めれたかもしれない。

二人が苦しんでいるのを少しでも助けてやれたかもしれない。

………今更そんな事を言っても、起こってしまった過去はもう変えられない。

変えることが出来ないのなら、支えなければ。

頼って良いのだと教えてやらなければならない。

人は、独りでは生きていけない。

自分の中に苦しみも悲しみも痛みも、吐き出さずにいてはいつか壊れてしまう。

「お兄様、苦しいですよ……」

「兄様、本当に……だいじょうぶですから」

「ここには俺達しかいない。だから、だから泣いても良いんだ。

誰もお前達を攻めたりしない。もしそんな事を言う奴がいたら、兄ちゃんが倒してやるから。

だから、大丈夫だよ」

何度も何度も優しく頭を撫で続けていれば、両肩が温かな何かで濡れた。

………何かなんて分かりきってる。

我慢していた分、沢山流せば良い。

泣き止むまで、俺が側にいるから。

「本当は、勉強なんて嫌いです」

「俺も嫌いだなぁ。あれやってると頭痛くなるもんな」

「叩かれるのは痛いし、怒られるのも怖いです」

「痛かったよな、怖かったよな……もうそんな事はさせないからな」

「私、野菜だけなんて嫌です。皆と同じものが食べたいです」

「そうだよな。野菜だけなんて俺も嫌だ。

皆で一緒に美味しいもの食べような」

「美味しいもの、沢山食べたいです」

「上手く作れるかはちょっと心配だけど、好きなもの作ってあげるからな」

「兄様が作ってくれるの?」

「お兄様の手作り?」

「かっわっ!………んんッ俺が作れるものなら何でも作るよ」

涙で濡れた目とキョトリとこちらを見上げる無防備で幼い顔。

もう可愛いの化身でしかない。

護りたいこの笑顔ってやつだ。

半分と言うか半分以上本音が漏れ出てしまった。

「何が食べたい?」

「……お兄様が私達のために作ってくれるのなら、何でも好きです」

「僕も、兄様が僕達を想って作ってくれるなら何でも好き、です……」

「はわわわわわ」

ねぇうちの子天使すぎない?可愛らしさと愛らしさを兼ね備えてるんだよ??

最高で最強すぎない??

君等の可愛らしさで兄の心のグッピーは元気どころか踊りだしてるよ?

「……お昼とおやつ、楽しみにしててね」

「はい!楽しみです!」

「楽しみです!」

涙の跡は残っているが楽しそうに笑い俺に抱きついて来る天使達を抱き締め返せばキャッキャと嬉しそうにする妹と弟がこんなにも可愛い。

……今日の俺、二人が可愛いしか言ってないな?

事実だから仕方がないがな!!!

「ルーチェ、アルバ」

「どうしたのお兄様」

「どしたの兄様」

「辛いと思ったら我慢せずに言うこと。

嫌なことも無理してやる必要はないんだ。逃げても良い止めても良い。

でもそれを乗り越えたいと言うのなら一人でやるんじゃなくて頼りなさい。

俺は二人の味方だから」

「はい!」

「うん!」

頭を撫でる手にすり寄ってくる妹と弟の為に何を作ろうか。

そして護るために、俺は前の世界にはなかった魔法を使えるようにしなければならない。

使い方は何となく俺としての意識が戻る前のルイーナの記憶で分かってはいるんだ。

それを俺の記憶で更に強力なモノにして、俺自身の力にする。

せっかく魔法を使うための魔力が沢山あるんだ。

使える力は使わないとな?

まぁそれは今日の夜にでもやるとして、今は昼飯を用意するまでの間で今まで沢山我慢していた二人を名一杯甘やかして褒めまくろう。

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