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第二十五話 予想外の第二フラグ

「おー、いたいた」

「ルイーナさん……?」

走った先に目的の人物、カイル・ダミアンが本を抱えて廊下にいた。

恐らくアルバがオススメした本なのだろうそれを部屋に運ぶ所だったようだ。

「渡したいものがあったんだけど、まずはその本を部屋に運ぼうか」

彼の腕に抱えられている本を何冊か抜き取り彼の部屋へと向かう。

何故か固まった彼を少し進んだ先で待っていれば、ハッとした顔で慌てて着いて来るものだから、その姿がまるで小動物のようで癒やされる。

まぁルーチェとアルバも可愛さは勿論様々な部門でも優勝確定だけどな!!

「これ何処に置く?」

「あ、そこのテーブルに置いていてもらってもいいですか?」

「あいよ〜」

抱えていた本をテーブルの上に置き彼に許可をもらって部屋にある紅茶セットで飲み物の準備をする。

部屋に紅茶の爽やかな匂いが広がる頃、本を片付け終えた彼がソファに座った。

紅茶を一口飲んで軽く喉を潤すし、口を開く。

「さっき言った渡したいものってやつなんだけど」

「はい」

「俺からのプレゼント。受け取ってもらえると嬉しいな」

「プレゼント、ですか………?」

青いリボンでの結ばれた黒い小さな箱をポケットから取り出し彼に手渡せば、恐る恐るといったように受け取られた。

もしかして俺の顔怖い………?それとも俺が何か怯えられるようなことしたかな……。

心当たりがないが、もし気付かないうちにしていたのなら申し訳ないことをしてしまったな。

………後で鏡の前で笑顔の練習でもしたほうがいいかな。

「どうして俺に?」

「お守りみたいなものだよ。気に入ってくれた?」

「これって”妖精の夢”ですよね……こんな高価なもの俺には勿体ないですよ」

「別に高価なものって言われても偶々ダンジョンで手に入ったものなんだ。

だから値段なんて気にしなくて良いんだよ?」

「ダンジョンッ?!」

おぉうビックリした。そんなおっきい声出せたのね君。初めて聞いたよ。

「それなら尚更頂けません!そんな危険な場所で苦労して手に入れた物なのに、俺なんかが……」

「君の為に探してきたのに?」

「俺の、為に……?」

”俺なんか”ねぇ……。この前彼から聞いた話で、彼自身が自分に対して余りいい感情を持っていないのは分かってはいたけど、これは重症だよなぁ。

謙虚は度が過ぎれば皮肉になると言うが、彼の場合いつか自分という個人を傷付けて取り返しの付かない事態になってしまうだろう。

前世でもその手の話は多くあった。

仕事に追われ学業に追われ人間関係でも相手に気を使わなければならない。

『お前は頭悪いもんなぁ!』

『これやっといてくれない?それくらい出来るよね?』

『下手くそだねー』

『ロボットじゃん』

『人間じゃなくて人形みたいだよね』

例え相手に悪気が無かったとしても、お巫山戯の延長線であったとしても言われた本人に取っては辛いものが多い。

それに対して

『そうなんだー、馬鹿だからさ』

『大丈夫、任せてよ』

『ごめん。下手くそなんだー』

『ハハハ、ちゃんと人間だよ』

作った笑いで場を濁さないようにごまかして、誰にも親にさえも言えず独りで不満も恐怖も何もかも溜め込んで、最終的には自分の心を傷付けて壊してしまう。

子供や大人も関係なく、誰もが様々なものを抱えている。

嫌われるのが、疎まれるのが好きな人なんていない。

誰もが本当の自分を押し殺して日々生きている。

好きでもない物が好きな振りをしたり。

嫌な事も作り笑いを浮かべてやらなきゃいけない。

独りにならないように。

痛いのも苦しいのも怖いのも何もかも押し殺して行きたくもない場所に行って言いたくない言葉も言ってやりたくない事もやらないといけない。

そうしないと生きていけないから。

独りは寂しくて寒くて辛いから。

『生きていて』

『大丈夫、側にいるよ』

『話を聞くよ』

『力にはなれないかもしれない。でも話は聞けるから…』

何でもいいんだ。

ただ、ありきたりな言葉でいいんだ。

難しい言葉じゃ響かない。

自分がここにいて良いのだと、生きていても良いんだと言ってもらえれば、その言葉でその行動で救われる命がある。救われる心がある。

それは今目の前にいる子供も同じ。彼は自分で自分を傷付けてしまっている。

まだ間に合うけれど、それも時間の問題だろう。

「俺なんかじゃないよ。君だからコレを渡したかったんだ。

俺がただ勝手に取ってきてブローチにしただけ。

受け取ってもらえなかったら、それは捨てるしか無いかもなぁ………?」

「えっ、あ……ありがとうございます」

「うん」

押しに弱いのね。まぁ少し脅した感が否めないけど……。だから怖がられてるのかもしれないな。

強引だったよな…。

こうでもしないと受け取って貰えないとは言え、最低な事をしてしまったな。

「これがお守りって、どういう事ですか…?」

「ん?あぁ、妖精の夢は闇魔法を抑える効果があるんだ。

ブローチの形にしたのはその方が身に着けやすいし、ポケットとかにも入れられるでしょう?」

ブローチにしたのは俺が何とか形にできるのがそれだったからって言うのもあるんだけどね。

何度手に針を刺したりしたか……。もう少し器用になるように今後裁縫だったり料理とかもやらないとな。

そんな事を考えながらうんうん唸っていると、俺の耳にすすり泣く声が聴こえてきた。

「うぇっ?!何で泣いてるの?!!」

ブローチを両手で握りしめ自身の額に押し当てながら涙を流す彼の元に駆け寄り小さな背を擦る。

流石に気持ち悪かっただろうか。

それとも何か傷付けるような事をしてしまったのだろうか。

………やっぱり、俺では彼を本当の意味で救ってやる事は出来ないな。

一人で慌てていれば彼が額に当てていた手が彼の側に立っていた俺の腰元に回され抱き締められた。

頭を撫でれば更に抱きつかれる。

「あり、ありがとうございます」

腹辺りせ話され聞き取りにくかったが、礼を言われたのは分かった。

ゲームでは悪役に付き従いヒロインを監視していたキャラだったが、幼少期は泣き虫だったのか。

でも、彼に幸せを与え笑顔にすることは出来ない。

それは俺の役目ではないし、ヒロインであるルーチェでもアルバでもない。

明日の朝に家に帰ると言い泣き止んだ彼に妖精の夢についてと彼の事について書いた手紙を彼の父親に渡してくれと頼んだ。

ただの余計なお節介でしか無いかもしれないけど、少しでも彼が笑えるように。

それに彼にもちゃんと気付いてほしいから。

彼が家に泊まることになった次の日に届いた彼の両親からの手紙。

それは正しく子を想う親の心の籠もった手紙だった。

「(君はちゃんとご両親から愛されてるんだよ)」

願わくば彼の両親も彼自身も笑顔になれるように祈ってるよ。

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