表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/161

第二十三話 予定外の第二フラグ

〜カイル・ダミアン〜


俺は何もなかった。

産みの親である母は俺を産んですぐに亡くなってしまった。

父は母を愛していたけれど、父方の祖父母に言われ新たに女性と再婚した。

その女性は母親譲りの黒髪黒目の俺とは似ても似つかない色を持った美しく年若い人だった。

その女性は子供を連れており、俺には血の繋がらない弟が出来た。

母を失った悲しみに長い間苦しんでいた父は、俺を見ては母を思い出し苦しそうに顔を歪めていた。

だから俺は父から離れ新しい母親からも離れた。

『どうしてお兄様は似てないの?』

元より今の母親に似ていない俺はこの家で居場所はなかった。

母の頃に使えていてくれた使用人達もいなくなってしまったこの家で俺は使用人達の間ではよく噂されていた。

『妾の子』

『望まれないで産まれた子』

『呪いの子』

そして実の父親にも酒が入っていた影響もあったのだろうが

『お前のせいで、お前のせいで彼女は……』

そう言った直後、父には謝られたが俺にはそれが父の本音なのだろうと理解できた。

黒は闇の色。

黒は悪魔の色。

そして俺の魔法適正は、闇と風。

魔法適性が分かってからは皆が俺を避けた。

誰にも似ていない子を誰が愛せると言うのだろう。

俺自身も誰かを愛する事は出来ないだろう。

それから俺は家族から逃げ、朝早くから夜遅くまで出かけるようになった。

そんな時に俺の何を気に入ったのかアルバ・ファウストという同い年の子が話し掛けてきた。

俺が闇の魔法適性があると聴いても態度を変えなかった不思議な人。

剰え俺を彼の家のお茶会に誘った可笑しな人。

断りきれなくて行った彼の家で、俺は衝撃を受けた。

彼の兄だと紹介された人物が、彼とは似ていなかった。

黒髪に橙色の瞳の穏やかな笑みを浮かべる男の人。

彼の姉にも似ていない色を持つ人。

お茶会の席でずっと彼のことを目で追っていた。

それで気付いた。

似ていないのに自分の弟と妹を愛しているのだと目で語るその人が不思議でならなかった。

だって人は自分と違う物を持つ者を同じ人だと思えない。

なのに何故彼は愛せて愛されているのだろう。

それにお茶会の席で驚いたことは、彼の側に騎士がいた事だ。

その騎士様も彼を見る目は優しくて相手を愛しく想う人のそれで、それを向けられる彼も騎士様とは違うがそれでも優しい目をしていた。

「失礼なことだって、分かってる…けど、どうしても、聴きたくて………」

だからどうしても聴きたかった。

自分と似ていないのに愛せるのかを。

他人にでもその目を向けられる意味を理由を知りたかった。

目線を合わせるために屈んでくれたお兄さん、ルイーナさんは俺の質問に驚いたけど、すぐにあの優しい笑みを浮かべた。

「確かに俺は両親にも弟妹にも似ていないよ。

逆に遠いご先祖様に似ているらしいから、先祖還りってやつだね」

君とお揃いの黒髪だね。と言って俺の頭を撫でるルイーナさん。

「寂しくないの……?」

「寂しくないよ。だって俺が皆を好きなのは変わらないからね」

「辛くはないの……?」

「辛くないよ。例え似ていなくても皆が皆である限り、俺が俺である限り今と何も変わらないだろうから」

いいなぁ……。

俺もそう割り切れたら良かったのに。

割り切れて前のように過ごせたら良かったのに。

「君は?君は何を悩んでいるの?」

手を引かれソファに座った彼の隣に腰掛ける。

手を引かれた時に繋がれた手を離し難くて思わず握れば、彼は何も言わず俺の好きなようにさせてくれた。

「俺は……______」

繋がれたままの手から伝わる温もりに励まされ、温かな優しい目を向けられて、俺は今まで奥底に隠していた想いを打ち明けた。

痛くて苦しくて俺自身何も出来ないどうすれば良いかも分からない黒いモノが溢れ出す。

今日会ったばかりの俺の、聴いてて楽しいモノでは無い筈のモノを聴いて、時折繋いだ手を握り返してくれたり寄り添ってくれた彼に流すつもりのなかった涙まで溢れてきた。

突っかかりながら辿々しく話す俺を急かすこと無く聴いてくれた彼の優しさに、余計に涙が溢れた。

「………頑張ったね」

最後まで離し終えた俺に彼はそういった。

「………よく頑張ったね」

抱き締めて頭を優しく撫でてくれた。

それだけで、俺は救われたような気がした。

アルバにも言えなかった俺の適正魔法の事を聴いても態度も俺に向ける目の変えない彼に、確かに救われた気がした。

だって愛されることも優しくされることもないと諦めていたから。

諦めていたからこそ、それを与えてくれる彼が受け入れてくれる彼が救いだった。

「暫くここに泊まらないか?ほんの少しだけにしかならないだろうけど、君のその不安を和らげることが出来るだろうから」

「なにを……?」

「それは後からのお楽しみ」

顔を上げた俺にそう言ってウィンクを返す彼に思わず笑ってしまった。

「おぉ、笑った」

「あ、ごめんなさい……」

「なんで?笑って良いんだよ。

誰にも君の笑顔を否定する権利なんて無いんだから」


その後、赤くなった目を冷やした後でお茶会場に戻りここに泊まることを伝えた。

丁度その場にいた当主様もアルバやルーチェ嬢も快く俺が泊まることを許可してくれた。

ルナ嬢の帰りを見送り、アルバのご家族と食事をとりお風呂も借りて、与えられた客室のベットに潜り込んだ。

「じゃあお休み。また明日」

「あの、えっと……」

話足りなくてまだ離れていってほしくなくて、何かを言おうとしたけれど言葉が出てこなかった。

そんな俺にクスクスと笑った彼は俺をベットに戻すと肩まで毛布を掛けてくれた。

「よい夢を」

額に軽く触れるだけのキスを送られた。

よく本に書かれている眠る我が子に親が送るお休みのキス。

彼が部屋を出ていくまで、何が起きたか分からなくて理解してからは恥ずかしくなって思わず毛布の中に潜り込んでしまった。

でも、けして不快ではなかった。

寧ろ嬉しかった。

怖かった筈の望んでいなかった明日も、今の俺にとってはとても楽しみなものに変わっていた。

送られた額から温かな彼の優しさや温かさを与えられ、その日はぐっすりと眠ることが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ