第百五十七話
作者体調不良のためお休みしてました。
なるべくいつもどおり投稿しますが、時たままた同じ様に急に休むかも知れません。
今後とも彼等彼女等の物語をお楽しみ下さい。
「殿下!護衛も連れずにどこに行っていたんですか!?」
ルイーナとルーチェ、アルバとオスカーが学園の門を潜ると同時に聞こえてきた怒声に何事かと周囲がざわめき出す。
「………君は護衛を外されたはずだが?」
「えぇ殿下のワガママのせいで我が家門は大恥をかきましたよ。
ですが父であり現国王の宰相である父に変わり殿下をお守りするのが今の私の役目ですので。
ですから殿下もご自身の立場を弁えて下さい」
凄まじい勢いで走り寄ってきたのはどうやらオスカーの護衛の一人らしい。
だが王太子の護衛、お付にしては随分と品が無いなと言うのがルイーナ達三人の意見であった。
学園の制服は全体的に男は紺色のジャケットにシンプルながらも貴族然としたものだ。
この学園は他国との交流会のようなものも数名の生徒限定ではあるが行う事があるためによく考えられている。
女性は同色だがフンワリとしたロングスカートで全体的に男よりも身体のラインが出にくいように作られていて配慮もバッチリだ。
…………だと言うのに、どうすればこうも品のないように着こなせるのか不思議である。
見た目はルイーナと同じくらいの身長。そして切れ長の目。
髪も固めているのに………別に着こなしが悪いわけではない。
なのにどうしてこうも不快感がヒシヒシと伝わって来るのか。
まぁその疑問も男の放った言葉によって知ることとなったが。
「全く………。
ん?貴様らは……はぁ、殿下…殿下はもっと国王陛下のように聡明だと思っていましたがそのような者達を護衛に登校するなど危険だとは判断なされなかったのですか?」
王太子であり自身の護るべき主人に対してのこの言いよう。
そして彼と共にいたルイーナ達三人に対して向けた目。
こちらを下に、蔑む色を隠しもしないその目。
馬鹿にした様な態度。
全てが男が与えてくる不快感をより強くする。
「………この三人は私の友人だ。
発言は控えるように」
「これは失礼しました。
ですが私は殿下を思って言ってるんです。
ファウスト家の長男でありながら次期当主を外された者やそんな兄に劣る弟。
殿下には余りにも不相応だと思いますよ。
……まぁ神の愛娘と言われるルーチェ嬢は我が国の役にはたつでしょうが」
蔑む色をそのままにルイーナとアルバを睨みつけていた男が不意にルーチェへと目を向ける。
「(あぁ駄目だ)」
ルイーナは自身を抑えるのに必死だった。
「(こいつは……)」
弟を蔑み、妹に対して欲に塗れた目を向け全身を上から下に舐め回すように見る男から二人を背後に庇うように前に出ながら。
「(こいつは、敵だ)」
その目は知っている。
欲に塗れたその目は、前世でも今世でもよく見てきた。
自身が世界の中心で、思い通りに行かなければ周囲のせいだと自身の事を棚に上げて喚き散らす害悪。
人を、自身のおもちゃか何かと勘違いしている醜悪。
自身の欲の為に他者を踏みつけ努力を奪い、果には命や人生を奪って愉悦を感じるようなそんな凶悪。
前に進み出たルイーナに男は眉を潜め隠しもしない舌打ちを零す。
だからこそ、男は気付かない。
起こしてはいけないモノを起こしてしまったことに。
ルイーナの目が、あの温かな光を携えていた目が底の見えない程に暗く深い闇を浮かべ男を見据えていることに。