第百三十九話
怪我をして動けない者の探索や瓦礫の撤去等の作業を行いながらルイーナやアルバとルーチェの探索も行っていたが、ついぞ見付けることは出来なかった。
騒動が落ち着き、瓦礫の撤去や住民の安全が保証されて数日たった後にファウスト家を訪れた。
だが、ファウスト家の主人である夫妻は勿論だがルイーナは愚かアルバやルーチェにも会うことが出来ず、ファウスト家の使用人に追い返されてしまった。
毎日、は復興作業もあった為に行くことは出来なかったが休みの度にファウスト家を訪れた。
雨が降ろうが風が強かろうが、追い返されても門前払いされようとも通い詰めた。
「どうだった?」
「今回も駄目でした」
「そうか……。無事だと良いんだけれど」
王城にある王太子の部屋にノックと共に入れば、オスカーがそう問いかけてきた。
最早恒例と言うか挨拶代わりに近い物となったこの問い掛けに、セルペンテは疲弊しきった声でこの数日間変わることのない答えを返した。
ファウスト家の現当主、ラウル・ファウストは公爵となってからは良く城に来ていたが、あの事件の後からはオスカーとセルペンテが知る限りここを訪れたてはいなかった。
「せめて怪我の具合が分かれば薬を届けたり出来るんだけど………」
「怪我をして療養中だとは陛下から聞けましたが、それの具合がどうなのかも何も分からないですからね」
そう、ファウスト家から戻ってくる度に疲弊して窶れていくセルペンテ。
国の現状や修繕すべき箇所や住民の状態と今後の生活への給付金の勘定等、自身にできる限りの仕事を行いながら青白い顔で大丈夫なのかと問うてくるオスカーの姿に、流石にこれはヤバいと思ったのか国王自身が態々この部屋にまで来て二人に教えてくれたのだ。
これで少しは安心して休むだろうと考えたのだろうが、結果的にそれは二人の中にあった不安や焦りを増幅させるだけとなってしまった。
怪我を負っていた住民の殆どが回復に向かっていき、重症者はもう数日間は療養が必要だが日常生活に戻りつつある中でファウスト家だけが沈黙している。
それも今回の危機を救った英雄でもあるルイーナや神の愛娘だと言われるルーチェ。
そしてルイーナと同じくしてモンスターと戦っていたと貴族の間で噂されているアルバ。
そしてそんな三人の親であるファウスト夫妻も何も言わずにいるのが現状だ。
心配するなと言われても無理な話である。
「父上もあれ以降何も教えて下さらないし、ラウル公爵も城に来ていないし………」
どうしたものかと頭を悩ませるオスカーとセルペンテ。
そんな時、数回のノックとが部屋に響いた。
「誰だ?」
「失礼いたします。
ファウスト家のラウル様がお見えです」
「なッ?!」
聞き慣れた執事の声、だがその声の主が発した言葉にオスカーは座っていた椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、セルペンテはバッ!と風を切り勢いよく扉の方へと振り返った。