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第百三十三話

「よーお眠り姫、王子サマのキスは要らなかったみたいだなぁ?」

「レ、レオーネ…………」

 ルイーナの両肩に手を置き、ニコリと不気味なほどに綺麗な笑みを浮かべるレオーネにルイーナは体中から冷や汗を吹き出した。

 オスカーと友人という関係になった後、ルーチェとアルバそしてオスカー達は免除されたと言ってもその次のものには参加できるらしく、一応教職員の立場にある二人に案内されそれぞれの教室に向かっていった。

その姿が見えなくなるまで手を振っていた三人に同じく手を振り返し見送った後、ルイーナはこの学園に施すための魔法の主軸……魔法をその場に縫い止め確定させるための柱となる場所を目指して校内を歩っていた。

生徒は教室内にそして教師達は生徒に着いているか教職員用の部屋にいる為、誰かに会うかもしれないという考えがあったせいか油断していたルイーナは背後から近付いてきた彼の存在に気付かなかった。

右肩に背後から手を置かれた瞬間、背後を振り返る前に引き寄せられた相手を向き直ると同時に両肩に手を置かれ逃げれないようにされてしまったのだ。

 そして冒頭の台詞だ。

本来であれば二年前にこの学園に入学した筈の彼が何故一年の腕章を付けているのか、そもそも生徒は教室内に居るはずなのに何故こんな人気のない場所に居るのか等疑問は尽きないが、驚きのせいかルイーナはそれらを上手く言葉に出来なかった。

「驚いて言葉も出ないのか?

俺もお前が意識不明の重体だって聴いたときはそれ以上に驚いたぞ」

 ゆっくり、ゆっくりとだが着実に力の増していく手。

痛みを訴える肩から骨が悲鳴をあげる音を聞きながらも、ルイーナはその手を振り払えなかった。

 怒りを滲ませながらその瞳の中に悲しみの色を見付けてしまったから。

ルーチェやアルバの時とは違う。

オスカーの時とも違う。

この世界で初めて出来た友の叫びは、酷く耳にこびり付いて、そして痛かった。

今日は悲しい顔をさせてしまう日なのかと、ルイーナ自身も胸が締め付けられた。

その顔をさせた理由が己自身であることも、振り払えない原因の一つだった。

「………ごめん」

「それは何に対してのごめんなんだ?

俺に何も言わなかった事?

家族のためにその身を犠牲にした事?

お前の言う幸せの中に自分を入れていない事?

それとも、何も言わずに消えようとした事に対してか?」

 苦々しく苦しそうな声で言われた言葉が、より一層ルイーナの胸を締め付ける。

その言葉も表情も何もかもが重く感じる。

外から聞こえていた他の生徒達の楽しそうな声も暖かな温度も感じられない。

何も聞こえず耳に痛いほどの静寂は、まるでルイーナとレオーネの周囲だけが切り離されたようだった。

「俺がお前のことを人伝に聞いたときの衝撃がお前に分かるか?

この国があんな事になって、お前がどうしてるのかと聞きに行けば答えられないと言われたときの俺の気持ちがっ!お前に分かるか?!」

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