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第百二十九話

周囲から生徒が居なくなったとは言え、そんな廊下のど真ん中にいては何時誰の目に止まるか気がきではない。

取り敢えず場所を移動しようとすれば、いい場所があるとジュラルドとロベルトに案内された。

そんな彼らの後をついて行きながら、腕を掴む王太子はそのままにルーチェとアルバを連れて彼らの後をついて行く。

ルイーナを含めた四人の不在は移動すると同時にロベルトが連絡していたらしく免除となったらしいが、その動作そのものを何時やったか悟らせないのだから流石としか言いようが無い。

「この部屋なら誰も使う予定が無いので大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。カプレット先生、パオロ先生」

 教室の扉を開きここまで案内してくれた二人にルイーナはが感謝をを伝えれば、二人はニコリと口元に笑みを浮かべた。

変装し学園の教師として働くのだから、彼らの本名も陰としての名前も使えない。

だから彼らには新たな名前を作り、現代で言うところの戸籍も作って貰う必要があった。

秘密裏に裏で動く陰であれば名前は誰かに聞かれたとしても問題ないように戸籍も何もかも必要ではない。

だが教師という場所はそうはいかない。

教師はその字の通り教える師を指すものだ。

その教える立場の人間が、ぽっと出の者であっては生徒達の保護者や同じ教職に就く者達や、もしもこの学園の情報を集めるような第三者に情報を取られこちらが警戒していることを悟られれば相手側が何を仕出かすか分かったものではない。

 だからこそ新しい名前や戸籍が必要なのだ。

ジュラルドはカプレット・オルトマーレ。

ロベルトはパオロ・オルトマーレ。

中央から離れた場所で暮らすオルトマーレ辺境伯の孫、という設定になっている。

辺境伯は田舎の貧乏貴族と思われがちだが、正しくは国の中央、王都のある場所から離れただけで伯爵よりも地位があり侯爵に近い立ち位置にいるのだ。

王からの信頼も厚いがその姿を国民に見せることが少なかった為に様々な噂が絶えないが、その噂の中には孫がいるという物があったからそれを利用させてもらった。

本人もそれを了承しており、裏付けもバッチリだ。

兄弟で教職に就くのは珍しく、一時期は生徒や教職員達からの好奇の目に晒されてはいたが、それは当の本人であるジュラルドやロベルトに魅せられ深追いするような事はなくなった。

 だがそのせいで様々な属性が彼らに付けられた事は当事者である二人もルイーナ達も知らないことだった。

「それで、王太子殿下は何故私を?

失礼ながら私は王太子殿下と面識はなかったかと…………」

「ルイーナ様を忘れた事も、ましてや間違えた事もありません。

あの時、恥ずかしながら泣いていた私を慰めて下さったこともこのハンカチを渡して下さったことも」

「それって………?!」

 王太子がポケットから取り出したのは何の変哲もないハンカチ。

だがそのハンカチは王太子が持つのには味がなく、貴族が持つにしても質素すぎるハンカチはルイーナがよく愛用している物だった。

「あの茶会の時に助けてくれた恩人を忘れた事など、ただの一度もありません」

 茶会、ハンカチ、ルイーナが助けた。

この単語から連想されるのはゲームにおける王太子とヒロインのイベント。

ヒロインが王太子と出会い、学園で再開した時にアタックされる為の重要イベントであった筈の茶会で出会った少女の事。

今思えば、その時の少女の容姿は目の前の王太子と同じ色合いを持ち似た顔立ちをしている気がしなくもない。

「チーロ・ステファノ、と言えば思い出して頂けますか?」

「(わぁお…………、ヒロインじゃなくて俺が王太子とエンカウントしてたのか)」

 王太子の口から出たチーロ・ステファノという名前で確信がもてた。もててしまった。

ルイーナが出会い縁を結び、手紙などでやり取りもしていたあの少女がゲームの攻略キャラの王太子であるということが。

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