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第十二話 第一のフラグ

暫くの間、俺はチーロと会場から聴こえる楽しげな声を背後に、木陰に座り当たり障りのない様々な事を話した。

チーロは中々家から出して貰えず、同じ年の友人が出来ないらしい。

だからここで友達を作りたかったらしいが、先程の三人組に絡まれてしまったらしかった。

「なるほどなぁ。俺の妹と弟を紹介しようか?」

「でも、本当の友達は自分で自分の力で見付けないと友人にはなれないって本で読んで……」

「友達は信頼してるけど信用はできない。友人は信用も信頼も出来る存在だからか?」

「あの本を知ってるんですか?」

「いや、俺の経験からだな」

それを知ったのは今世じゃなくて前世の俺だけどな。

本当に前世の俺は友達運が無かったと思う。俺自身が悪かったのかもしれないけど……。

『友達でしょ?』と言う奴にろくな奴はいない。

そう言って自分の不注意で失くした物と偶々同じ物を持っていた俺を泥棒扱いして孤立させ、失くした物が自分のポケットから見付かったのを俺に見られても謝罪の言葉すら無かった。

だと言うのに『友達でしょ?』の言葉で近付いてきては笑顔で何事もなかったように話し掛けて来るのだ。

………そして俺の親友と仲良くしたいからと俺を貶し離れさせようとした。

大人達からも友達だと宣う連中からも離れたくて進学した学校でも友達は出来たが、それも一瞬の事だった。

寮制の学校で寮で過ごしていた俺は、同じく寮で過ごしていた友達から『寮の門限が過ぎて入り口の鍵が閉められるから、帰ってきた時に扉を開けてほしい』と言われた。

俺は帰ってくる時は早めにメールを入れて欲しいと事前に連絡し帰りを待っていた。

間違っても眠らないように冬だと言うのに窓を開け、律儀に待っていた。

……だが、日を跨いでも連絡は無かった。

楽しい時間を邪魔して悪いと思ったが何時に帰ってくるか連絡しても反応はなく、ただ時間だけが過ぎていく。

そして深夜四時、何故か寮内にいるその友と会った。

『開いてたからそのまま入って来た』

何の悪びれもなく、そう言われた。

謝罪も感謝の一言もなく悪びれもなくあっけらかんと話し、更にはまた用事を押し付けようとする。

信じられなかった。

後日、『改めて考えると悪かったなって思った』なんて言われたが俺はその友達だった人達と離れた。

信用も信頼も出来るのは友人。

信頼は出来るが信用は出来ないのが友達……と言うか表面上の上っ面な関係が友達。

そう学んだんだ。

その程度の事で?

心が狭い。

器が小さい奴だな。

なんて思われるかもしれないが、それは友達を信じていた俺にとっては酷い裏切りのように感じられた。

俺の存在を比定されている。

都合の良い時に使って用が終われば捨てる。

そんな存在の様に扱われて、俺自身が人では無く人に近い操り人形のようだと、そう思えてしまって苦しかった。

 まぁその後では本当の友と呼べるくらいにお人好しな奴に会えたから別にもう何とも思って無いが。

「ファウスト様に、友人はいますか……?」

「………いるよ。俺には勿体ないくらい格好良くて自慢の友人が」

前世でも今世でも、ちゃんと正面から向き合って俺を見てくれる友ができた。

喧嘩をする事はあってもちゃんと仲直りできる。

どちらかが辛くなれば寄り添って支えて、時には蹴り飛ばして背中を押してくれる存在がいる。

俺を一人の人間として見てくれて、個人の意志を尊重してくれる友人がいる。

側にいてくれて、心の底から安心できて笑い合える友人がいる。

「________それって俺のことか?」

「そうそう、レオーネは俺の自慢の…………は?」

よっ!と片手を持ち上げニヤニヤと笑い近付いてくるレオーネを見たまま固まってしまった。

まさか、聴かれてた………?

「いやー、自慢の友人だなんて嬉しいなぁ。

俺もお前を友人だと思ってるし大切な奴だぞ?」

「っ____!!!」

顔が暑い。と言うか全身がボッ!とまるで火でも付けられたかのように一気に熱を持ったのが分かった。

やっぱり聴かれてたッッッ?!!

「ちょ、ちょっと急用が出来たからまた今度話そうな!手紙でもいいから!」

「えっあっはい!分かりました!」

「ごめんな!」

赤いであろう顔を見られたくなくて口早に言葉を紡ぎ足早にこの場を離れる。

レオーネを置いてきたが、コミュ力は無駄に高いんだ。意地悪だけど紳士的な奴だからチーロとも仲良くなれるだろうし。

「あ”ーーーもう!!恥ずいっ!!!」

会場に戻るとルーチェは俺を見て駆け寄ってきた。

「お兄様どうされたのですか?お顔が赤くなって………まさかレオーネ様に何かっ!」

慌てながらも水を差し出してくれるルーチェからそれを受け取り一気に流し込む。

冷たい水が火照った身体を内側から冷ましてくれる感覚が心地よかった。

「何でも無いよ。それより友人とはもういいのか?」

「はい!今度家でお茶会をしようと言う話になりました!」

汗を拭おうとしてハンカチをチーロに渡した事を思い出した。

ハンカチを取り出そうとした体制のまま固まった俺に察したのかルーチェがハンカチを貸してくれた。

ごめんな。後でちゃんとした物を渡すから。

「そっか、良かったな。他には何かあったりしたか?」

「いいえ、ずっとルナと話してただけです」

「なら良かった…」

どうやら王太子とは会っていないみたいだな。

今日がイベントの筈だが、イレギュラーの俺がいたから何か変わったのか?

それとも俺の記憶違い……?

まぁ何もなかったのならそれで良いが、今後もお茶会の席に行くことがあったら警戒を続けないとな。

「そろそろ帰ろうか」

「お兄様はもう良いのですか?」

「あぁ」

と言うかちょっと離れたい、かな。

馬車を止めてあった場所へルーチェと移動し乗り込む。

帰りも乗り物酔いするのは確実なためお茶会で出された軽食の類は食べないようにしたが、色々と心配だ。

早速動き出しガタガタと揺れる馬車に早くも辛くなってきた。

俺の記憶だと確かに今日がヒロインと王太子とのイベント日だった筈だが、ルーチェの反応を見る限り王太子とも出会ってないしフラグも立たなかったみたいだな。

今後も王太子が参加するお茶会が開かれるのか?

考えても仕方ないか。

今後また王太子の参加するお茶会が開かれるなら変装とフラグが立たないよう注意しよう。

そう考え、俺は乗り物酔いに耐えるべく目を瞑った。




◇◇◇◇◇




「で?念願だった茶会に出席したのにこんな所で何してたんですか」

「……ちょっと、な」

「このお茶会を一番楽しみにしてたのは貴方でしょう?_____王太子様?」

「でもちゃんと友人は出来たぞ」

「アイツにとって今の貴方は庇護対象でしょうけどね」

レオーネは呆れたように木陰に座るチーロ基この国の王太子であるオスカー・バージルを見る。

この泣き虫な王太子は現国王が弱愛し無用な危険に晒さないために時が来るまでは公の場に出さないようにしていた。

だが友人が欲しいと言う王太子の為に性別を偽ることを条件にお茶会の参加を許された。

念願叶って同年代の子息や令嬢に会えたというのに望んだ本人が何故こんな会場の外にいるのか。

そして何故ルイーナと共にいたのか。

またルイーナが無意識に誑し込んでなければ良いが、それも希望的観測でしかないんだろうなぁ。

両手で包み込むようにして握られたハンカチを見て諦めにも似た溜め息が口から溢れた。

「格好良かったなぁ………。俺もあの人みたいになれるかな?」

あぁやっぱりこうなった。

さながら恋する乙女の様に頬を赤らめ熱い息を吐く姿に頭が痛くなってきた。

寄りにも寄って王太子かよ。

また癖の強い奴を誑し込みやがって…!

「はぁ……。」

これからまた忙しくなるな。







『ねぇお兄ちゃん知ってる?このゲームの王太子って小さい頃は泣き虫で身を護るために女装してたんだって』



ここまで呼んで頂きありがとうございます。

もし宜しければ読者様が可愛いと思う仕草等があれば教えて欲しいです。

可能であれば物語の中で使わせていただきたいです。


最後にここまで目を通して頂きありがとうございます。

拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

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