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第百九話

 ルイーナがアンドレアを慰めている間にアルバとルーチェは、カルロッタと挨拶を済ませお喋りをしていた。

「すみません……」

「いえ、気にしないで下さい」

 未だ鼻を愚図らせながらだが、ルイーナから離れカルロッタが入れた紅茶を飲み込んだ。

「ふふふ、それにしても聞いた時は私も驚きました。

お二人が仲がいいのは知っていましたが、こうも早く結婚するとは……」

「あぁ…それは私自身も驚いてますよ」

「アンドレアさんからカルロッタさんに結婚を申し込まれたんですよね?」

「いえ…その、けっ結婚しようと言ってくれたのは彼女からなんです………」

「えっ女性の方からですか?!」

「もうアルバ!そんなに驚くことじゃないでしょう?」

「すっ、すみません」

 結婚を申し込むのは一般的に男性からだと思っていたアルバだったが、その予想が外れたことと女性からの結婚の申込みだと聞いて思わず驚きの声を上げてしまった。

それを咎めるルーチェだったが、アルバの驚きにカルロッタは眉尻を下げ悲しげな……何処か諦めにも似た表情を浮かべた。

「アルバ様の反応が、普通なのでしょうね」

「カルロッタ……」

 目線を下げて呟くカルロッタの肩にアンドレアが片手を添えた。

その手に自身の手を当てながら、カルロッタは小さな声で語りだした。

「……皆さんはレディーファースト、と言う言葉をご存知ですか?」

「確か、女性をたてるというより優先する様な意味を持つことばですよね?」

「はい。

では、ルーチェ様にお尋ねします。

それを男女差別だと思ったことは、ありませんか?」

「そ、れは……」

 確かに女性は男性より力が劣る。

女性であるが故に救われた事態もあるが、どうしてもカルロッタにはソレが男女差別のように思えてならなかった。

男は女を守る者。

女は男をたてる者。

そう言われているようだと、常々感じていた。

「守ってくれなんて頼んでいません。

私はただ守られるだけの姫なんかじゃありません。

……そんなのは、男性側の傲慢のように思えてならないのです」

 カルロッタの言葉にアルバは先の己の言葉にハッとした表情を浮かべたあと、静かに顔を俯けた。

そして彼女の言葉を聞いていたルイーナは、胸が痛かった。

確かにルイーナは守ってくれなど言われていないにも関わらず、自身が大切だと思う者達を勝手に守ろうとしてきた。それは今も変わらない。

厚かましいのも、勝手なのも十分承知の上での行動だ。

だがそれを、ルイーナは決して止めようとは思わない。

自分勝手だと非難されたとしても、ルイーナはそれを受け止めるしかない。

だって本当の事なのだから。

これはルイーナが勝手に動いて勝手に決めたことなのだから。

 だが、一つだけ。一つだけカルロッタの言葉には訂正箇所がある。

「男が女性を守ろうとするのは、差別ではありませんよ」

「………ですが、守ると言う事は結果的に女を下に見ているのと同義でしょう?」

「カルロッタッ……」

 差別ではないと言ったルイーナの言葉に噛み付くように返したカルロッタに焦ったアンドレアの声がかかる。

しかし、ルイーナはカルロッタの言葉に気分を害した様子も見せずただ静かに首を横に振った。

「見下しているわけでもありませんよ。

それは、差別等ではなく敬意を払っているんです」

「敬意………?」

 思ってもみない言葉に、カルロッタはルイーナの言った言葉を半ば呆然と繰り返し呟いた。

「女性は強いです。

それこそ男なんかより遥かに。

例を上げるなら出産でしょうか?

新たな命をその身に宿し育み産む………それは男からすれば未知の領域で、こちらが考えている以上に大変なことだと思います。

ですが女性はそれをやってのけてしまう。

………貴女方の強さは我々男がずっと理解しています」

 そこで一度言葉を切ったルイーナは、カルロッタだけでなくこの場にいる全員に語るように再度口を開いた。

「ですがその体は男よりも脆く柔い。

だから男は、せめてここだけでもと守ろうとするんです。

自分勝手だとか自己満足だとか言われても、命を賭けて新たな命を産み出す……なんてどうあがいても男が勝てない強さを見せ付けられているからこそ、それに救われ助けられているからこそ守りたいと思うんです。

女に手をあげる男は屑だとか、女は男に守られ男は女を守るものって言う言葉の意味を、俺はそう思っています」

 僅かに微笑みながら語られた言葉に、誰も何も言うことが出来なかった。

カルロッタもルーチェもアンドレアもアルバも、ただただルイーナを見ていることしか出来なかった。

「あ、そうだ。

カルロッタさん。貴女はプリンセスではありませんよ?

___貴女のように強く美しい女性は、レディと言うんですから」

 何処か楽しげに放たれた言葉を聞いた四人は、一斉にルイーナから目だけでなく顔を反らした。

そして、逸らされた四人の顔は赤く染まっていたのだった。

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