38. カケル記者会見
カケルは、記者会見を開いていた。
というか、ハネムーン帰りの空港で、なかば拉致されるかのようにホテルの大宴会場にある会見場まで連行され、大勢の記者やカメラマンの前に座らされている。大日本記者クラブがセッティングしたらしい。
「桔梗さまとはどのようなご関係で?」記者がヒステリックな声で質問する。
「えっ? キキョウって誰ですか? あの、状況が呑み込めないのですが……。ところでアレッサはどこ? ハネムーンでハワイに行った帰りで、これから家に帰るところなんですけど」
カケルは現在、大都会、登戸のタワーマンションの最上階に住んでいる。プリズンで数百億円の資産を築き、浅草のディスコでゴーゴーを踊るのだけが生きがいという堕落した生活だ。しかしこの会見には、本人なりに真面目に答えている。
「いえ、私は悪人ではありません」
「いえ、私は泥棒ではありません。サッカーではインターセプトが得意でよく泥棒呼ばわりされていましたが」
「アレッサは150歳年上の、天涯孤独のヂューン星人だと聞いております」
手を鼻に当て、降ろしながらヂューン、ヂューンと発した。これがヂューン星のあいさつだという。
記者たちはあきれ返った。こんな大嘘を平然と言ってのける。これほど不遜な男は見たことがない。
「結婚詐欺? 何ですかそれ? はあ? 詐欺師呼ばわりされるのは何でですか。それよりもアレッサは? 婚姻届けは今から登戸区役所に行って出すんだよ!」
「私が言うところのアレッサが桔梗? 桔梗がアレッサ? 将軍の娘? えっ? なにそれ」
記者連中がいうには、将軍の娘をカケルがたぶらかし、国民全員が激しく怒っているとのことだ。
「10日前に浅草のディスコで声をかけてきたのはアレッサのほうだし、結婚を言い出したのもあいつからだし」
記者が更にヒートアップし、ヒステリックな声でがなり立てる。
「いや、俺はあの女がドスケベでいいなと思ったから結婚するのであって、将軍の娘だとかそんなことは知らなかったし……」
田舎者のカケルにとっては川崎の憲剛家の殿様がいちばん偉いのであり、将軍や吉長家はあまりに遠い存在でピンとこない。個人崇拝や独裁体制でもないのでカケルのように本当に知らない者もいる。身分や上下関係などさほど気にもしなくても普通の生活は送れるのだ。
刹那の静寂。記者たちの怒りが頂点に達する。
「逮捕だ!」「殺してもいいっすか? いいっすか?」などと叫びながら、銃を持った警ら隊が突入してきた。記者やカメラマンも殺せ! 殺せ! と叫ぶ。
カケルはとっさに逃げる。記者連中の帽子や服、ズラなどを強奪し、物や通行人を障害物代わりに転がし、建物の外に飛び出した。そこで自転車を強奪し、闇夜に紛れ逃げおおせた。
途中、どっきり大成功の看板を持った人を探したが、いなかった。
自転車を川に捨て空港の駐車場付近まで逃げてきたが、その暗闇で突如ホークアイ・藤田が現れ、手招きされたので駆け寄るとビンタされた。
「カケル、車に乗れ。おいバカ野郎、これで本当に日本に住めなくなったぞ」
そう小声で言って、車のトランクを開けた。
「座席じゃねーのかよ!」笑顔で渾身のツッコミを入れる。
「うるさい、黙れ。見つかったら俺もお前も終わりだ」車のトランクにはゴルフバックやキャンプ用品でぎゅうぎゅう詰めに見えたが、藤田は2,3個の荷物を動かし少しのスペースを作った。続けてカケルの関節を2,3か所外し、トランクに押し込んだ。まるでプレス機で挟まれる拷問のようだが、冗談のようにぴったりと収まっている。
トランクに乗れというボケかと思ったら、マジだった。(エスパー伊藤ってすげえんだな)などと感心している場合ではない。
「だから何ッ! 何が起こってるんだよ! なんで藤田GMがここにいる! アレッサはどこだ!」
藤田の車はライトを点けず数キロ走り、そこから実家がある豪雪地帯、八王子まで高速道路を使い移動した。
1時間20分後、深夜2時に自宅に着くと死にかけたカケルを引っ張り出し、ぶん殴って気絶させた。関節をはめる時にカケルが大声を出さないようにするためである。そして使用人を起こさないよう、静かに家に運び込んだ。
書きためたぶんが無くなったので、いったん終了させていただきます。中身がスカスカで申し訳ありません。
初めて書いた小説で、小説を読む習慣もないので「小説って何?」というレベルの初心者です。セリフ回しやアクションなどを入れればそれっぽくなる気もしますが、まったく思い浮かびません。誰か書いてくれないかと思っています。パロディもどこまで伝わるものか、ギャグになっているのかさえ分かりません。プロや出版を目指している訳でもないのでガチの批判は勘弁ですが、何でもお気軽にコメントしてください。