37. 健太郎の異世界チート生活
健太郎は、メキシコ田舎暮らしのハッピーライフ・スローライフ生活を満喫していた。思い起こせば将軍家の嫡男に生まれ、幼少期より帝王学などと虐待に近い厳しい教育を受けてきた。
当初はマコちゃんと連絡が取れなくなったことに錯乱したが、ふと思い起こせば一人になれた。将軍など世間知らずの無職のニートとなんら変わりはない。それが、遠い異国でひとりぼっち。これは……異世界転生と変わらないじゃないか。何もないが、自由だ。
(桔梗のことは心配だが、将軍として血統を絶やさないことも大事だ……)
さっそく村の未亡人に手を付け、所帯を持った。仕事は村人の手伝いで、頼まれれば何でもやる。連れ子が3人いたがみな健太郎によくなつき、貧乏ながら平和で明るい生活を送った。
「異世界転生の序盤としては悪くない。次はやっぱりハーレムだ。ハーレム、異世界でハーレムを作るんだッ」とウッキウキだったところ、足元にインカムのマイクが落ちてきた。マコちゃんが来たということだ。
緩み切った表情は一瞬で消え、将軍としてのキリっとした顔に戻った。インカムを装着する。
「マコちゃん、遅かったな」
「ええ、桔梗さまは帰国されました。もはや長居は無用」
「……」
「っていうかさあ! 健太郎ふざけんなよ! 所帯まで持ちやがって! 浮気だ浮気! 女の敵だなあ、バカ野郎!」
「違う! 側室だ! 将軍に側室がいてなにが悪い! 」
「側室って連れ子はどうすんだよ。さすがに子供たちまで連れてけないぜ」
「……」
「マコちゃん。俺は旅に出た。まだ旅の途中だ。日本には帰れない。将軍の座も捨てる。死んだことにしてくれ。マコちゃんも日本に帰れ」
マコちゃんもため息をつく。(40にしてメンヘラを発症しやがった。箱入りバカ息子め……)もはや救いようがない。
「分かった。ベットの下に10億円ほど置いていく。これでお別れだ」
どろん、と消えた。
健太郎はその10億円でハーレムを建設した。特殊部隊並みの知識や技能に加え、10億円の資金はメキシコでは100億円の使い道ができ、チート確定である。もはや日本に帰る気などさらさらない。
金がなくなれば帰ってくるだろうと思っていたが、想像以上に早かった。半年後には金も女も全て失ったらしく、マコちゃんに連絡してきた。
「すまん、あと10億送ってくれ」
「送らねーよ。あのアニータとかいうバカ女にいくら分捕られてんだよバカ野郎」
「マコちゃんは全て見ていたか。異世界チートごっこは終わりだ。とんだクソゲーだった。日本に帰る手はずを整えてくれ」
威厳のある、キリっとした将軍の顔に戻る。
「あー、はい、了解です」
マコちゃんは冷たく答えた。




