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カケルが成す THE BIRD  作者: 荒巻鮭雄
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36. 将軍家、バードの秘密

メキシコ到着後、ネコロボはゴッチ文書に目を通した。関節や筋肉の構造、重心、技を極める角度や力加減など、プロレスの技術的なものが大半である。

「これの何がいったい秘伝の書だとか権威の象徴になるんだよ」

ネコロボは、アランドロン猪木のバカさ加減に振り回された労力に怒りを覚えた。在米日本人、日系人は私財没収、収容所に監禁されたのも意に介さず暴力的に奪っていった。重大な外交問題になり、石油や鉄くずなどの輸出を止めるとまた真珠湾攻撃のような逆切れをする可能性もあるのでしなかったが、かなりきつめの経済制裁もした。信長の野望もワンピースも本宮ひろしも知らないアメリカ人に、理解できるはずもない。日本のサブカルが生んだモンスター、それこそがアマノハシダテ猪木であった。ちなみに借金逃れのため名前を80回ほど変えており、どれが本当なのか誰も分からない。猪木は猪木であり、強いていえば「THE猪木、その猪木」といった唯一無二の存在である。


ある日、ネコロボはゴッチ文書の中の1冊のノートに目が留まる。日本のBirdバード? 能力者? 将軍家? 日本について書かれたノートのようだが、ゴッチがなぜこんなことを書き残したのだろうか? 


クロウズアイという特殊能力、血統こそが将軍家としての証。

それが数ある大名の中から吉長家が将軍に選ばれた理由、正統性を示すものだという。


念のためウィキペディアでも調べてみると、同様のことが書かれている。

「間違いないようだ」

大日本学術会議とウィキペディアが間違ったことを書くわけがない。それを疑えば世界は終わりだ。啓示も加護も無い世界で人間は生きられないのだから。


しかし、そのノートには「ぶっちゃけ、バードってのは、頭の中に鳥を飼っているやつ。それ以上でも以下でもない」との注釈がある。ピヨピヨという挿絵も入れてあった。ゴッチはプロレスのみならず、文学、歴史学、絵画にまで素養があったのである。


「なるほど……これがバレると、将軍としての正統性を失うということか……。権力の座から引きずり降ろされ、内戦が始まる」

日本のことなどネコロボにとってはどうでもいいことであったが、将軍の娘である桔梗がこちらに来ると知り、すぐにこれを狙っていると判断した。アーミテージ猪木をたぶらかせたのもこの将軍家であろう。プレイボウイと差し替えたのに激怒しアミノサンナトリウム猪木もろとも太平洋で船を木っ端みじんに爆破したのも彼らだろう……」

実際はアメリカ空軍の爆撃機がやったのだが、ネコロボはそこまでの機密を知らない。


「どうしたものか。燃やしても粘着されるだろうし、渡しても口封じで殺される」

とんでもない厄介ごとを呼び込んでしまったと、後悔した。まあ、最悪の場合はアメリカに保護を求めようと決め、もう少し様子を見ることにした。


ウィキペディアに将軍家のことは詳細に書かれており、とにかく頭が悪いのだけは確証が持てたからだ。Bird(鳥)かBard(吟遊詩人)か、翻訳したというジョン万次郎のスペルミスという説もあり、どちらが真実かも分からないという。大多数の日本人は英語が分からず、聞いても「ガタガタ細けえことはいいんだよ! 知るか! クソボケアメ公!」とヘイト発言をすることは有名だ。昭和や平成、令和といった時代よりも鎌倉時代のDNAに近い。モンゴル(元)の使者を皆殺しにして無視とか平気でするようなきらいもある。


マコちゃんこと田代誠、リングネームは藤波、のことも陰謀論かUMAユーマのような存在らしいが大日本学術会議公認の月刊ムー(公文書、学術論文と同じ)の特集で30ページにわたり書かれており、対決時に「なんでも知っているさ」といった言葉に嘘はない。ネコロボこと「ボロックス・ネコシェンコ」はハーバードで考古学を学び、冒険家、保険調査員、傭兵、科学調査官などの映画を観てその辺のウンチクやお約束も熟知している。


とりあえず、娘は即時追放だ。虎穴に入らずんば……という言葉もあるが、日本の将軍は「道具として」ひとり娘を放り込むようなサイコ野郎だ。桔梗は何も知らないだろうし、今後どう利用されるか分からないがとにかく可哀そうである。


「ペネロペ! なんで急に帰国しろなんて言われるのですか? あんまりです! 」

「うるせーバカ女! 破門だバカ野郎!」

カナディアン・バックブリーカーを極められ、取り付く島もない。

道場に来て30秒でこの状況、何が何だかさっぱり分からない。ペネロペも、事情がまるで分かっていない。ネコロボからの指令でやっているだけだ。


桔梗は浜口先輩に港まで送ってもらい、船に乗せられた。

「このカバンを持っていきなさい」

中身は浜口も知らない。彼女たちは、理由を聞かないし説明もしない。事情を知れば、後で責任を取らされたり消される恐れがある。知らなければ、無駄な感情を持つこともない。どうせ他人事なのだ。「聞いてない、俺を通せ」と言うやつが、本当に責任を取った試しがあるか。無い。あるわけがない。未来も結果も、誰も分からないのだから。成すか成さないか、ただそれだけで説明や決断など空想でやっていればいい。


浜口は、ただ持って帰るだけでいいという。カバンにカギがかかっていたが、帰国後に壊して開けろということだろうか。


ネコロボは、ゴッチ文書のノートを桔梗に持たせ帰国させた。複製コピーは無い。他言しない、という手紙も挟んでおいた。

出航し、桔梗が食事で部屋を離れた時、マコちゃんがすぐにそれをチェックする。カバンの簡易なカギなど、2秒で解除できる。


一読し、マコちゃんはすぐに、すべてを理解した。しかし、

(遠いなあ……、ズレ漫才でもここまでズレたら誰も分からんぞ……)


実に下らない。マコちゃんは船から飛び降り、泳いで陸へ向かう。部屋や盗聴器などの痕跡を全て抹消し、健太郎を探す旅に出た。


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