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カケルが成す THE BIRD  作者: 荒巻鮭雄
35/38

35. ゴッチ文書と三種の神器

ここで解説が必要だろう。

ネコロボは10年前、カールゴッチの残した書籍(ゴッチ文書)を盗み出しメキシコに亡命。ペネロペは偶然その盗難現場を目撃し巻き込まれた格好で、死ぬか一緒に亡命するかという二択により来たに過ぎない。もし仮にだが、マコちゃんがペネロペをさらってもネコロボは助けない。ネコはアレックスという丸眼鏡のダメ人間が好きで手助けしていただけだった。


なぜアノネノネ猪木がゴッチ文書を狙ったのか? 否、ゴッチ文書に興味は無かった。

アッパッパ猪木は、世界中の全てのプロレス団体は世界征服を目指しているのだと決めつけ、信じ切っていた。信長の野望であたかも全ての戦国大名が日本統一を目指しているという原則、間違った世界観。それは、どんな弱小であろうが全ての高校野球部は甲子園を目指しているのと同様である。普段から練習なんてろくにしていないくせに、県予選の1回戦で負けたら号泣する。それがなによりの証左であろう。

レスラー同士、路上で目が合えば、その場でゴングが鳴り試合が始まる。プロレスラーとはそういうものだ。息をするように、闘い、世界征服する。理屈などない。あってたまるものか。


また、世の中には「3秒」という絶対的なルールが存在する。食べ物を床に落としても3秒以内なら食べてもOK。そんなの常識。戦いにおいても、3秒以内なら反則してもOK。


プロとアマには超えられない壁がある。道徳の壁だ。ルールを順守する真人間、アマチュアは人間がほんらい持つ能力の20%程度しか能力を発揮できない。なんでもありという状況でこそ、100%の実力を発揮できる。中途半端な原則論を持つやつが超えられない壁を平気で突破する。それが勇者であり、英雄なのだ。プロレスラーとは、もちろん後者のことを指す。


アンコロモチ猪木は日本のプロレス界を統一し、次は世界統一を目指した。プロレスこそが最強であり、世界のプロレス団体を統一する「プ皇帝」になる。それにはゴッチの正式な後継者としてアテコスリ猪木が選ばれなくてはならない。権力だけでなく、権威も併せ持たなければ真の皇帝とはいえない。ゴッチのパンツ、シューズ、ベルトの三種の神器がプロレス界の王道、本流、正統性を示すものだ。

「プ皇帝に、俺はなる!」というアッチッチ猪木の宣戦布告が日本のゴシップ誌の表紙を飾る。それが、アメリカプロレス団体にまで伝わってきた。


もちろん本質はパンツ等にあるわけではない。プロレスの神、ゴッチの考えや精神、技の習得こそが大事であり、その知の体系としてゴッチ文書がある。

もちろんゴッチはアメリカ人だしプロレスの本家本元はアメリカである。三種の神器などと言いだしたのもアメアガリ猪木である。それまではゴッチ博物館(入場料3ドル)で展示してあっただけの代物に、そんな貴重な物だという認識も無かった。


しかし、それを頭のおかしい日本のプロレスラーが奪いに来るというと、なんとなく重要な遺産のようにも思えてくる。何もない山を切り開き、宅地開発すれば値段が付く。そのように、価値観や歴史も作られていくのだ。それを長年押し通せば、やがて伝統や文化となる。

歴史の浅い人工国家であるアメリカ人だからこそ、その辺は敏感だった。我が国の誇りを決して渡すわけにはいかないと、全米のプロレス団体は団結し、アパッチケン猪木包囲網を形成。総力を挙げ88人のプロレスラーが迎え撃った。


1日1試合、88日の決闘すべてにアホノコノ猪木が勝利し、三種の神器を奪われたのが10年前の出来事である。試合中も試合後も観衆から罵声や物を投げつけられ、それに動じない鋼のメンタルにも世界は驚愕した。まるで英語が全く理解できないかのようにさえ思えた。


この時、ネコロボの中身(正体不明)は34日目にアジャパー猪木に負けた。しかし、ふと気づく。アメリカ側のレスラー全員はゴッチ文書を奪いに来ていると思っているが、アップリケ猪木が欲しいのは三種の神器だけなんじゃなかろうか。しかも本物かもどうでも良いと考えている節もある。

日本側のプロモーターが「来年は日本で三種の神器を賭けた興行を行いましょう、東京ドーム押さえますから」と提案してきたからだ。とにかく、お米(プロレス界でのお金の隠語)の話しかしない。昨年に行った北朝鮮興行で大赤字を出したとの情報もあり、リスク覚悟でビックイベントを開催しないといけないという裏事情もあるとの噂だ。


ということで、ネコロボはゴッチ博物館から三種の神器を盗み出し、他のレスラーのものとすり替えた。ミカン箱で25個ぶんにもなるゴッチ文書は週間プレイボウイと入れ替え、自分も一緒にメキシコへと渡った。ペネロペに見つかったのは誤算だったが、結果的には荷物運びができて助かった。


サンフランシスコ港の船上、ポカホンタス猪木は満面の笑みで誇らしげにゴッチのパンツを空高く掲げ、

「俺がプ皇帝だ! 世界最強だ!」と叫んだ。聴衆は石や履いていた靴などを投げ、罵声を浴びせたが、やはり全く意に介していない様子であった。


凱旋帰国中、アメンボアカイナアイウエオ猪木の船は謎の爆破で沈み、太平洋のど真ん中で藻屑と消えた。死の間際、「キャー」と叫んだという。


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