33. マコちゃんVSネコロボ
マコちゃんが、ネコロボの前に立つ。
設定の都合上、マコちゃんにはモザイクがかかっている。彼もまた、某有名芋掘りロボットの着ぐるみを纏うコスプレイヤーであった。割と版権がうるさい所で、大人の事情もある。しかしこの時代は版権が切れているので問題ない。
「誰だ?」ネコロボが尋ねる。
「そうだな。ゴンベイとでも名乗っておこうか」
「ほう、で、クロウズアイがなんの用だ?」
「……なぜそれを知っている?」
「なんでも知っているさ」
目的は何か、どこまで知っているのか、ともに探りを入れている。戦意や殺気は感じないが、そんなものを出してしまうやつは二流だ。この二人には関係ない。会話さえ不要なのかもしれない。
「私は将軍父子の護衛で来ている。無事、日本に帰れれば何も問題ない」
(なぜゴッチ文書の話をしない……?)会話にワンクッション置いたことに若干の怒りを覚える。
「なぜあの小娘を送り込んできた?」
ネコロボにしてみれば、自転車泥棒などという茶番などどうでもいい。
(ゴッチ文書を狙っているわけではないのか?)
それだけ言質を取ればいいのだが、もう少し踏み込んだほうがいいだろうか?
(桔梗さまを我々が送り込んだと思っている? 何か問題でもあるのだろうか……?)マコちゃんも意味が分からなくなった。
「そちら側に危害を与えようとか、邪魔をしようなんて気は全くない。それは信じてくれ」
マコちゃんが近づいてきた時点で、ネコロボは死を賭した戦いになると腹を決めていた。半ばこの時点で勝負はついている。
(いや、クロウズアイの秘密が書かれたゴッチ文書しか、彼らの目的はありえない。あくまで白を切るつもりのようなので、これ以上の会話は無用だ)
「では、お前を殺すことにしよう。田代……」
「えっ?」マコちゃんは斜め上の言動に危険信号を感じ、とっさに全防御態勢を敷く。5メートルの距離を一瞬で消されたが、かろうじて攻撃をかわし、あとは一目散に走って逃げた。初速はすごいが、それ以外のスピードはマコちゃんの方が上のようだ。
「マジかよこいつ、とんでもねえな!」
マコちゃんに逃げられたので、ネコロボは健太郎のところに走って向かう。そこで迎撃すればいいだけのことだ。ネコロボからすれば健太郎など戦力のうちに入らない。攻撃など当たるはずもないし、1秒で殺せる。
マコちゃんからすれば健太郎を守りながら戦う状況になる。守るべき人がいるということは、1対2で逆に不利な戦いとなるのだ。健太郎に己の姿をさらすことにもなるが、そんなことを躊躇っている場合でもない。人質に取られた方が交渉の余地も生まれるかもしれないが、あのとち狂ったタヌキは即刻で殺してしまうかもしれない。
先手必勝、真っ先に大将首を狙うのが真のプロである。このような思考や行動は彼らにとって奇襲や奇策ではない。勝利条件さえ得れば、戦いに原則も理屈も無意味。あとで何をグダグダ言われようが遠吠えだ。
インカムで叫ぶ。
「健太郎! 北に逃げろ! 全力でだ! 手ブラで構わん、すぐ逃げろ!」
健太郎は即座に反応し、二階の窓から飛び降りた。「了解」それ以上のセリフや思考はない。マコちゃんからの指令は、そのような余地すらないことを意味する。
やはりネコロボは1対2の状況を作ろうという様子だ。
一転、マコちゃんがネコロボを追う形になる。自分とネコロボと健太郎、3者の距離や位置関係を予測しながら、20メートルの距離を保ち、追尾する。
走りながら先ほどの短い会話も反復するが、やはり意味が分からない。
(ネコロボはクロウズアイを知っている。しかも我々以上に何かヤバい事を知っている。我々を殺してでも隠したい秘密……。そしてなにより、俺の本名も知っていた……)
マコちゃんは田代という。吉長家、プロレス師範で桔梗の師匠でもある藤波の本名が田代誠だ。アトキントン猪木の一番弟子で、かつて日本でプロレスラーをしていた。そう、彼は「3秒以内なら反則OK」という世界に生きる者なのだ。
田代にとって、3秒あればどんな事でも片づけられる。しかし、今回のメカロボは例外だ。互角かそれ以上……。




