32. マコちゃん
2か月後、ちょっと髪が伸びた桔梗はスポーツ刈りにしていた。
基礎トレーニングも他選手と同数こなせるようになり、一時期激減した体重も元に戻った。やはりメンタル、フィジカルともにエリートと呼ばれるDNAを持っているのだ。
健太郎は桔梗が寝てから寝て、起きる前に起きるという生活をしている。アステカ道場から500メートルほど離れたアパートを借り、盗聴器やカメラなどを300か所にわたり設置済だ。就寝中に桔梗およびその周辺に異変があれば警報が鳴る。もちろんマコちゃんにも手伝ってもらい、3日でその作業は完了した。
その際、ネコロボが月に1回出入りする、謎の地下室があることを発見する。隣家から塀を乗り越えなければ入れない出入口。そこから地下に降ると地下室がある。5分ほどで出てくるが、何をしているかは謎だ。何かを出し入れしている様子もない。
マコちゃんはネコロボの素性を洗おうとていた。しかし、うかつには動けない。
ペネロペがアメリカから亡命した際に連れてきた謎の着ぐるみ野郎だが、過去2回ほど、目が合った気がする。これはマコちゃんにとっては驚くべきことであった。自分が気配を悟られることなどあり得ないからだ。
私と同等、同質、すなわち影……。ペネロペの「影」なのかもしれない。
そうなればネコロボも監視体制を敷いているはずで、それらしきトラップもいくつか発見した。こちらの動きも把握されている可能性が高い。マコちゃんはそれを健太郎にも伝え、ただならぬ緊張の中、過ごしている。
とにかく、2人は面が割れている可能性がある。そこで健太郎は、内閣調査室の服部を急遽メキシコシティに呼び寄せた。北米、南米の大使、駐在武官などの情報網を駆使し、ペネロペとネコロボの調査をするよう命じた。資金はいくらかかってもいいので、くれぐれも内密に、と命じた。マコちゃんが服部はダメ、絶対ダメ、と止めたが聞き入れなかった。
服部は家格も良く優秀といえば優秀なのだが、全てのハニートラップに引っ掛かるという致命的な欠点があった。また、プロパガンダや陰謀論だろうが、とりあえず一旦ぜんぶに乗っかるというストロングスタイル。(それは興味深いですね……)が口癖の男である。IQ200のメンサ会員というが、マコちゃんからすれば単なる馬鹿駄大学卒のサブカル野郎である。
案の定、服部はバカなので、その足ですぐにメキシコ警察に聞きに行った。
「ああ、ネコ型のロボットですか。ギャング団のトップですね。表向きはプロレスラーの肩書ですが、完全に裏ボスです。警察でも内偵を進めていますがなかなかしっぽを出さなくて。しかもあの着ぐるみでしょ。どうやって入ってるんだか」
聞くと、とんでもなく治安が悪かった地域を数か月でまとめ上げたのだという。圧倒的な武力でこれからメキシコ統一を目指すかもしれない。
服部の趣味はゴルゴ13のシナリオを書いて応募することで、誇大妄想と構成力にも優れる。ちなみにこの時代、ゴルゴは2,800巻までいっている。
その服部、さすがは日本のインテリジェンスのトップである。メキシコの警察とマフィアなんてズブズブに決まっているのに、もう台無しだ。マコちゃんはため息をつく。
(後手に回ってはまずい。もはや俺が直接対決であの着ぐるみを剥ぐしかないか……)




