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カケルが成す THE BIRD  作者: 荒巻鮭雄
22/38

22. 50年前の革命

賢人や長老と呼ばれるジジイは語る。


約50年前、欧米では環境問題が政治闘争の具にされ、それを強く主張する政党が、公正な選挙により政権を取っていった。

この政策を推し進めたのは、カマーラ・ハリッツという50年前にアメリカ初の女性大統領になった人物である。結果論だが、今となれば、父はインドと中国のハーフ、祖父はコロンビアと、ルーツからしてもアメリカに愛国心があるとは思えない人だった。



彼女は化石燃料禁止、内燃機関、ガソリンやディーゼル全廃を推し進め、原発や石油発電所も閉鎖していった。飛行機も廃止、電車と船はエコだからOKという謎基準で残されたが、人間も物も、移動や輸送が困難になった。


電気は水力、風力やソーラー、地熱だけではとうぜん賄いきれない。

自動車、トラクター 移動時間やコスト、物流システムも製造業も完全に破綻した。


トラクターも使えず、すぐに食糧危機に陥った。

牛馬を使った農耕に、手動の機織りか手工業くらいの産業しかない。現金も紙くずとなり、公務員はみんな無職になった。通貨も信用を失い、金持ちは全て没落。電気、ガス、水道などのインフラも停止。電車だけはかろうじて走っていたが、地面をアスファルトに覆われた都市部などに、もはやあまり意味が無い。


ちなみに移民政策で、アメリカの人口は最大20億人にまでなった。中南米はもちろん、中国とインドからの移民を無条件で受け入れるようにしたからだ。


他はぜんぶ過疎化し、スローシティ構想もはかどる。人間のサイズや人口に合った街づくりが推進された。人口に見合った街造り ≒ エコ ≒ 幸福度アップ、そういう理屈らしい。


アメリカの歴代大統領の中で、自らが神になろうとした人物が2人いる。ウッドロー・ウィルソンと、カマーラ・ハリッツである。皮肉にも、前者は内燃機関が誕生したころの大統領であり、後者はそれを廃止した大統領である。



アメリカ以外の、大きくなりすぎた街も破壊されていった。大都市に大量の武器や兵器を投下すれば、すぐに勝手に殺し合いが始まる。3万人という規定値にまで人口が減ったら、その武器を取り上げる。

騒乱の終息や秩序の回復も、計画的に行われていた。

カマーラの唯一の偉業は、全世界で同時に、核兵器をも全廃させたことだろう。

アメリカでは、主に中国派とインド派に分かれ、内戦が始まる。物資は1年分、武器弾薬も目いっぱい供給してあり、1年後には5,000万人になった。最終的には、メキシコが勝った。


そんなこんなで、やっと10年かかって世界の総人口を2億人まで減らすことができた。その報告を聞いたときカマーラは、涙を流したという。


「覇権国家になったって、結局はカモられるだけだしね。国土をクソ化して無価値にする政策を、すべての国が取ったのさ。国家って枠組みは統治能力を失い、小国や藩による、中世の封建主義に戻ったんだよ」


「最初の10年は餓死者が続出するわ難民がアメリカになだれ込んで内戦状態だったけど。のど元過ぎれば熱さ忘れるってものので、結果的に転生テンプレの中世みたいな世界観になったわけさ」


「なろう」とか「転生」とか、のんびりほんわかの中世の世界観~とか、現実を甘く見るんじゃないよ。とんでもない犠牲だったんだから。現実とファンタジーの区別もつかないようじゃどうしようもないな。


現在、カマーラはとうぜん、アメリカなんかには住んでいない。田舎でスローライフ。軽トラに長くつで田んぼをやっている。息子に会っても、元気でいるか、お金はあるか、友達できたか、の3つしか言わない。完全にMOBだ。NPCだ。


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