20. 結勝珍が語るプリズンの歴史
浦上は不良少年を熱血指導により更生させチャンピオンにするという、丹下段平とかガチンコ、スクールウォーズ的なものかと思い、ホイホイ来てしまった。
それは半分あっているし、半分まちがっている。余談ではあるが、浦上も知らない、ここプリズンの歴史を説明をせねばならない。
結勝珍は語る
これを語るには、日本の反政府、地下組織「ギャルゲ」の古参のひとりである、結勝珍が最適であろう。プリズンは、彼らがチラシの裏に遊びで書いたものがプロットになっているのだから。
最初は、ロードバイク選手の養成所や学校と呼んでも差し支えない形式だった。あくまで体裁としては、教育機関、更生施設だったんだ。
そこに、バージン諸島でタックスヘイブンを運営するイギリス人・チャッピーが金の匂いを嗅ぎつけ、俺にも1枚かませろとやってきた。ここからが不幸の始まりだ。
彼の持つ富裕層の顧客リストと、顧客の持つブラックマネーを使うにはもってこいだ。
俺らとチャッピーの予想どおり商業化は成功し、ビッグビジネスへと変貌していく。
ただしその過程は、思いもよらない波乱の連続でもあった。
俺たちはチャッピーに運営を任せた。
ロードレースを主催し、オッズを付け、世界の大富豪に向け販売した。
選手は素人だが、走行中に相手を蹴ったり、崖から落としたりと、スリリングでアンダーグラウンド感が満載の狂気のレース。そそるだろ?
脱税野郎たちもすぐに食いついてきたぜ。
しかし、運営はすぐに破綻した。根本的な間違いとして、ここには自転車泥棒しかいない。機材(自転車)の盗難が相次ぎ、ロードバイクのトレーニングもレースもろくにできくなったんだ。
詰んだな……。自転車泥棒のクズっぷりを舐めてたわ。俺とチャッピーは落胆した。
次のレース、自転車を盗まれたやつは仕方なく、足で走ってレースに参加した。そいつは他人の自転車を蹴り倒し、引きずりおろし、強奪し、そして優勝した。
予想外の展開に、イカれた脱税野郎たちは歓喜した。万馬券になったことも話題を呼び、知名度や馬券購入者も激増した。
客から馬主になりたいという要望もあり、オークション形式で販売したところ、意外な高値がついた。レースに冠スポンサーも付き、施設やサービスも充実させることができた。
しかし、半年もすると完全に強奪する競技、ほぼ格闘技戦になった。
その次は飛び道具の使用だ。投石から始まって、パチンコ、弓、ボウガンと武器が進化していってな、最後は鉄条網に塹壕戦だよ。塹壕から顔出したら撃たれて死ぬ。3日くらい膠着するんだよ。クソつまんねえ。
一部のマニアには好評だったが、コレじゃない…とスポンサーも客も離れてしまった。レギュレーションも無く、あまりにもカオスすぎたんだ。
で、格闘も武器の使用も禁止にした。な、それでうまく軌道修正できたと思うだろ?そうじゃなかったんだよ。
スクーター(原付)も、原動機付き「自転車」だという、日本のマイナールールも大きな混乱をもたらした。原付は速攻で盗まれ、パーツにばらされて泥棒市場に並んだ。
特に2ストのホンダDio、ヤマハJOGなどはプレミア化し、アルパカ100頭ぶんの価値があると言われた。スズキセピアZZが5頭ぶんというから、その高騰ぶりが分かるだろ?
NS-1やTZR50Rなどのレーサータイプは伝説のマシンと呼ばれ、1国にも値する。過去に3台しか入ってこなかったらしい。コケたらダイナマイトで自爆するよう細工して、ライダーも一緒に死んだ。そこまでしてでも、マシンを他のやつに渡したくなかったんだ。なんで別名、「ボンバー」ともいう。一緒に死んだ選手は「ボンバーマン」だ。
スクーターよりロードバイクの方が速いなんて言ってるやつは漫画の読みすぎだ。
登りで圧倒的な差をつけてしまう。馬力とパワー(笑)500ワット(笑)とか、比べるべくもない。
実際、モーターサイクルレースになって、レースの死傷者は8倍になった。あまりにも死にすぎて、選手も客も、それが当たりまえだと麻痺していった。
内燃機関の登場により、神は死んだんだ。テクノロジーは人知を超えた。モラルも教育も、死生観すら根底からひっくり返ってしまった。




