月夜に美酒をひとしずく
こんな捻れた夜に歌うのは
いったいどんな悪霊だろう
月硝子の徳利を片手にぶら提げて
爪先の反り返った黒繻子の靴で
降り積もる薄紅の雪を分ける
美酒の一滴
蛙の涙
それからあのこの爪のあと
こんな捻れた夜に歌うのは
いったいどんな悪霊だろう
星の骨を噛りながら
月硝子の徳利を傾けて
グビリグビリとやりながら
降り積もる薄紅の雪を分ける
美酒の一滴
蛙の涙
それからあのこの爪のあと
こんな捻れた夜に歌うのは
いったいどんな悪霊だろう
銀椿の蜜酒を少し
呑み過ぎただけなのさ
千鳥足にはまだ早い
降り積もる薄紅の雪を分ける
美酒の一滴
蛙の涙
それからあのこの爪のあと
こんな捻れた夜に歌うのは
いったいどんな悪霊だろう
解れた鬢は風に流れて
えい構うものか
薄紅の雪
今宵はぐるりと酔おうじゃないか
美酒の一滴
蛙の涙
それからあのこの爪のあと
捻れた空の裏側に
表が繋がる事はなく
薄紅色の雪の上
あのこの裂けた唇が
私を捉える事もない
美酒の一滴
蛙の涙
それからあのこの爪のあと
今宵ひと夜の渦巻きの中
月は砕けて微塵の歌を拡げ
こんな捻れた夜に歌うのは
いったいどんな悪霊だろう
美酒の一滴
蛙の涙
それから私の舌の先
捻れた夜に渦を巻く
薄紅色の雪の上
さても美味なる夜の酒
現在の心境というわけでもなきにしもあらず
お読み下さりありがとうございました