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成り代わり令嬢は全力で婚約破棄したい  作者: 水藤紗弥
一章: 半年ぶんのしわ寄せが来た
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いよいよゲーム本編部分突入ってことかしら

 今日は入学式。

 

 マクシミリアンへの働きかけもあって、わたくしは――希望通り支援学科に通うことになった。


 魔族に関することや国内外情勢の勉強などはクラスで『共通座学』として受け、白兵・魔法・薬剤調合などの各実技専攻科目のときに、それぞれの学科に移動して勉強するというやり方。


 だから専攻授業の時間は、どのクラスも同じ。


 言い換えれば、専攻学科の時間は他のクラスの生徒とも一緒に勉強する。


 制服は赤いブレザーと黒いハイウェストのスカートで(男性は黒のズボンだ)学部によってペリース(という片側にだけかけるマント)と胸元のリボン・ネクタイの色が違う。


 アリアンヌは白兵学科なのでブレザーと同色の赤だが、わたくしは支援学科なので黒になっている。



「不当なことがあればすぐに言いなさい」

「いってらっしゃい、アリアンヌ。お勉強頑張りなさいね」


「はい! 行ってまいります、お父様、お母様!」


 見送りに馬車の前までやってくると、両親はアリアンヌの手を握ったり軽い抱擁をして別れを惜しんでいる。



 そして、ひとしきり義理の娘との挨拶を終えると……ぎこちなく、わたくしへと目を向けた。



 言葉はない。



「――今まで大変お世話になりました。行って参ります」


 もう戻ることはないんだけどな、と思いながら優雅に礼をしても、やはり二人からは返事が無かった。



 屋敷にいる間だって、初日から特に進展は無かったのだ。


 期待もしていなかったし、彼らも実の娘に何か愛しいものが生まれるとは思っていないだろうから、何も言われないほうがかえって良かったかもしれない。


 そうしてさっさと馬車に乗り込むと、待ってくださいお姉様ァ~と甘い声を出しながらアリアンヌもわたくしを追いかけるようにして乗り込み、扉を閉めて両親に手を振る。



 既にジャンは乗り込んでいて、興味なさげに反対側の窓の向こうに広がる街並みを見つめていた。


 ゆっくりと馬車が出発したので、念のために馬車の中を感知スキルで探ってみたが、別段変わったところはない。


 もしかするとジャンが先に取り払ったかもしれないが、目視でも、うさんくさいものも何も見つからなかった。


 よしよし。もう盗聴にも警戒しなくて良いし、マクシミリアンも今はいない。

 ようやく自由になったという心地さえした。



「……15分も歩けば学院に行ける距離なのに、馬車で移動などとは豪勢なことですわね」

「ゴテゴテの服着た貴族が15分も歩くわけねぇだろうが。だいたい、そんなに歩くならどう考えても馬車の方が早いしな」



 呆れたようにジャンが言ったが、確かに馬車の方が早いな。



 ふと、ジャンの腕に学院関係者であることを証明する、学院の印のついた赤い腕章が付けられているのに気づいた。


 それは何かと指摘すると、護衛だから付けることになっているという当たり前の返事があった。


 部外者の侵入を防ぐため――らしいが、そんないくらでも量産できそうなもので防げるんだろうか。そう聞くと、ジャンは指で腕章を引っ張り、そこに書かれている【0031】という番号を見せた。



「通し番号が入ってるだろ。これで管理してるそうだ」

 ふーん、と気のない返事を送ってから……そういえば、とアリアンヌを見た。


「あなた、護衛も侍女もつけておりませんわね」

「はいっ。私は両方必要ありません。着替えなんて制服と部屋着と外出着があれば当面平気ですし、何かあったらクリフォードさまを頼りますもん」


 着替えのことについてはわたくしも『めっちゃ分かる~』と賛同したいところだが、クリフ王子を頼るのか……頑張って欲しい。


「そういや、あの王子あんたが帰ってきても一度だって顔見せてねえな。毎日のように来るのは水色メガネばっかりだぜ」


 本当に、ついでに思い出したなーって感じでジャンがこの国の王子様のことを話題にした。


 水色メガネというのはマクシミリアンの事で、多分髪と目の色が水色っぽいから、そういうトンボの歌みたいな事になっている。


 リアルでも二次元でも、メガネキャラはだいたいメガネと呼ばれる宿命だ。



「そういえばそうですねぇ……。クリフォードさま、お姉様が帰ってくる前までは半月に一回くらいは来てくださったのになぁ……」


「そんなに? 半月に一回ってすごい頻度では。そちらのほうが驚きなのですけど……しかしそこから急に半年の間、一度も面会がなかったとは。わたくし見事なくらいあからさまに避けられていますのね! 全く好意が見られないのは嬉しい限りです」


 盗聴のあれこれもないので、我々は言いたい放題である。


「お姉様、くれぐれも人前でクリフォードさまと口論だけはなさらないでくださいね。キーキーうるさくても、ハイハイって言ってその場は済ませてくださいね?」



 心配そうなアリアンヌが、アドバイスしながらわたくしの手をそっと握る。


 仲良くなったわけじゃないんだから勝手に握ってくんなよ……とは思ったが、まあ協力者だし、わたくしによからぬ思いを抱いているわけじゃないなら、危険視する必要はありませんわね。


「わかっておりますわ。ちょっと人前では理不尽なことを言われても、かわいそうなわたくしと思って励みます。後で悪態くらいはつきますけれど」


「それでこそお姉様です! 以前、ラズールでクリフォードさまをバッサリ斬り捨てて、ジャンさんが寝取った男みたいな顔をしていたのが最高に面白かったです!」


 事実ではあるが、アリアンヌは目をキラキラと輝かせて妙に詳しい感想を興奮気味に述べた。こいつ絶対泥沼ドラマとかあったら好きなタイプだな。


 話の引き合いに出されたジャンは、そんなことあったなと言いながらも……口をへの字にして渋い顔をしていた。


 多分、内心アリアンヌうぜえと思っているか、当時を恥じているかだろう。



「なに急にあんたら仲良くしてんだ?」

「共同戦線ってところかしら。クリフ王子とわたくしの婚約破棄をアシストしてくださるそうです」

「…………そうかい」


 いろいろ言いたそうな顔をして、わたくしたち義理の姉妹を見つめていたが……女の考えることはわかんねえな、という男あるあるっぽいセリフを呟いて、それきり馬車の中は静まる。



 それから数分後に、馬車はピュアラバの舞台である――【セントサミュエル学院】へと到着した。

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