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ファンタジー世界に転生して、変わった職業に就くことになりました。~Side3~  作者: 渡来人
第四章 状態確認-ステータスチェック-Ⅲ
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状態確認-ステータスチェック-Ⅲ

「サトルさん!」

「……ん? シャロ──グフッ!」

 ……腹に強烈な痛みが……押し寄せて……。

「サト──」

 ああ、意識が……薄れ……。


『良いか? 余計な気持ち、雑念を抱えていると、集中力に影響を与えてしまうんじゃ』

『そんなこと言われても、仕方ないじゃんか! 好きな子に応援されたら、気が緩んじゃ──』

『バカモノ! それでも集中せねば、ならんのじゃ。雑念を抱えた結果が、この有様じゃ』

 これは、俺が中学生の頃の記憶だ。あの日、剣道大会があって、決勝戦まで勝ち進んでいた。決勝戦には、当時好きだった女の子が応援に来ていて、その子に良い格好を見せるぞ! と意気込んでいた。

 それがこのざまだ。開始早々の面に一本。それで試合は終わった。あの子のがっかりした顔は今でも忘れられない。

 家に帰って、じいちゃんにこっぴどく叱られたのも、未だに覚えている。

 じいちゃんは、ことある事に″雑念を捨てろ。雑念を抱えたままでは、隙が生まれる″と言っていた。

 確かに剣道大会の決勝戦でも、今回の事でも、そうだと考えさせられる。

 怒りに集中力を欠き、ヴォーデくんとエルフの少女による援護が無ければ、やられていたかもしれない。シャロンがいなければ、鬼族の男に殺されていたかもしれない。

 ──っ!? そうだ、俺は!


「──っ!」

 ここは、何処だ? 俺は確か、洞窟内で鬼族の男を倒して……そうだ。それから、シャロンの頭突きで意識を失ったんだ。辺りを見渡しても、木で出来た天井と壁。

 ここが洞窟内では無いことは容易に判断出来た。家か? しかし、誰の家だろう?

「うぅん……」

「ん?」

 ──っ!? 俺の横には、洞窟内で助けたエルフの少女が、下着姿で俺の横に……!?

 ああ、下着といっても、ブラとパンツとかじゃ無くてワンピースみたいな肌着を着ているけど……って、そうじゃなくて!?

「……あっ、おはよう。起きたんだね」

「あ、ああ……」

 なんだ? どういう事だ? いきなりの事に頭の中で整理できない。

「サトル、寂しいと思ったから、エミィが添い寝してあげたんだよ」

 俺は子供か! とツッコみたい所だけど、まず訊いておかないといけないことがあるな。

「すまない。えっと、君は何故俺の名を知っている? それと、君は……えっと」

 しまった、彼女の名前を知らない。

「エミィ? エミィは、エミーリアって名前よ。サトルの名前を知ってるのは、あの治癒師の子が呼んでたでしょ?」

 治癒師の子? ああ、そういえば、シャロンが俺の名を呼んでたな。それと少女の名前はエミーリアか。しかし、自分のことを愛称? で呼んでるのか。

「それで、エミーリア。君は何故、下着姿なんだ?」

「エミィって呼んで。それにサトルは、寝るときに服着て寝るの?」

「それは、脱ぐけど……」

「でしょ? そういうこと」

 そりゃ脱ぐけど。何故、寂しいと思ったのか。よく分からないな。

「嫌だった?」

 ちょっ! 下着姿で胸を腕に押し付けないで!? この子、意外と胸があ──

「そ、そうじゃなくて! ちょっと離れてくれないか」

「むぅ……」

 ふぅ、とりあえず離れてくれた。しかし、目のやり場が困るとはこの事だな。

 ん? ノックの音が。誰か来たのか? ──ヤバい!? この光景はどう見てもヤバい!

「ちょっとま──」

「どうぞー」

 ちょっと、エミーリアさん?! 何招き入れてるの?

「起きてるなら、丁度良い。ギルド員の婆さんを──」

「どうしたんだよ、急に立ち止まって──」

 ……お願いだから、二人とも固まらないでくれ。

「ヴォーデ、立ち止まらないで。サトルさんが起きてるなら──」

「お、おはよう。皆」

 なんだろう。皆、表情が強張ってるけど……これは、違うんだよ?

「……悪いな。お楽しみだったか」

「…………」

 いや、お楽しみじゃないから。ヴォーデくんもそんな蔑んだ目で俺を見ないで!?

「……サトルさん?」

「な、何でしょう?」

 シャロン……誤解です。分かって……。

「大丈夫ですか? そこの変な魔女に誘惑されてたんですね。浄化しないといけないので、どうしましょう」

 アレ? シャロンさん?

「エミィは、変な魔女じゃない! 訂正して!」

「では、魔女でどうですか?」

 なんか、女のバトルみたいで怖い……。

「あっ、そうか。アンタ、エミィとサトルの仲に嫉妬してるね。そう、ご愁傷さま」

「──っ!」

 ひっ! シャロンさん、怖いんですけど!?

 それにエミーリア、何を言い出すんだ。俺と君はこの前会ったばかりだよ!

「修羅場だな。こりゃ、部外者は退散した方が良いな。終わったら、隣の家に来てくれ」

「……悪ぃ、今回ばかりは同情するぜ」

 あっ、二人とも! 逃げたな。この薄情者!

「サトルさん? 迷惑なら、迷惑と言った方がいいですよ」

「迷惑掛けてるのは、アンタ。エミィ達の邪魔しないで」

 あの……これどう止めれば良いの? お願いだから、誰か教えて……。

「……騒がしいのですが、少し静かにして貰えますか?」

 あれ? イア、いつの間に。

「隣の部屋で村長と話し合いをしていましたが?」

「……元気なのは良いが、騒がしいのは、こちらも迷惑だ。話し合いが纏まらん」

 ……あっ、隣でそんな重要な話し合いをしてたのね。それは申し訳無いことをした。

「申し訳ない。二人も謝って」

「あっ、すみませんでした」

「なんで、エミィは──」

 シャロンは謝ったのに、エミーリアは何か言い訳しようとしているな。良くないよ、社会人ならダメな奴ね、それ。

「……ごめんなさい」

「気を付けてくれ」

 村長さんは納得してくれたけど、二人には困らされるな。

「そういえば、身体はもう良いのですか?」

「ん? ああ、不思議なくらいに痛みがない」

 意識を失う前は全身に痛みが走っていたのに。不思議だな。

「それは良かった。では、私も戻ります」

「ああ、ありがとう」

 争いを止めてくれた。という意味で。

「では、サトルさん。着替えたら、隣の家に来て下さいね」

「ちょっと何すんの、エミィはサトルと着替え──」

 なんか、シャロンがエミーリアを連れて部屋を出て行った。

 まあ、部屋の中が静かになったから、いいか。

 さて、待たせるわけにもいかないし。さっさと着替えるか。

 着替えを済ませ、言われた通りに隣の家に行くと、シャロン達が待っていた。

「王都まで行って、臨時でギルド員を連れてきたんだ。早く状態確認してくれよな。借受料高いんだからよ。まあ、払ってくれるなら別に構わないけどな」

 なんだって!? それは早く終わらせないとな。

「ところで、皆は確認したのか?」

「はぁ? お前が倒れて何日経ったと思ってんだ。皆、とっくに終わらせてるっつうの」

 えっ? そんなに長く寝てたの?

「サトルさんが倒れて1週間も目覚めなかったんですよ。心配しました」

「エミィの熱い口吻で起こそうと思ったのに、この女が止めるから……」

 1週間も寝てたのか……それは悪い事した。それとエミーリア、それは嬉し──勘弁願いたい。

「状態確認をお願いします」

「承知しました。では……」

 老婆のギルド員が、俺の手首に巻いているリストバンドに触ると、何やら呟いてる。いつも思うけど、なんて言ってるんだろ?

「終わりました。状態を確認してください」

 もう終わったのか。では、御言葉に甘えて確認させて貰おうかな。


────────◆──────────

名前:サトル・サガミハラ

職業:万能師

種族:人間族

LV:28

HP:1600 MP:280

STR:55 DEX:45 VIT:39

AGI:21 INT:28 MND:20

LUC:9


────────◆──────────


────────◆──────────


ページ2

剣:LV24  槍:LV2 斧:LV1 杖:LV1

短剣:LV3  弓:LV1 拳:LV1


火:LV11 水:LV2 風:LV2 地:LV2

氷:LV1 雷:LV1 光:LV1 闇:LV1

聖:LV3

────────◆──────────



 おお、大幅にレベルアップしている。

「新たなスキルはございません」

 取得したスキルはゼロか。レベル上がる度に新たなスキルが身に付く訳でも無いか。

「レベル28って、ほぼ30じゃねぇか!?」

「エミィが30だから、もう少しだね、サトル」

 エミーリアはレベル30か。強いはずだ。

「サトルさん、レベル上がるのが早いですね。私やヴォーデは、まだレベル24ですのに」

 二人はレベル24か。まあ、それでも高いと思うけど。

「くそっ! 負けねぇからな!」

「ヴォーデ、やめて! 恥ずかしい……」

 シャロン、良いと思うよ。向上心があって。

「状態確認も終わりましたので、帰ります」

「ああ、ありがとう」

 ギルド員の老婆は、お辞儀して帰って行った。冒険者の男が連れてだけれども。

 さて、これからどうしよう。魔術師メイジも仲間になったし。やる事無くなったな。

「これで仲間も揃った。あとは魔王を倒しに行くだけだ!」

 そういえば、そんなこと言ってたな。まあ、俺は関係無いけど。

「俺はここでお別れだな」

「サトルさん、何言ってるんですか? これからも一緒なんですから」

 えっ? シャロンさん?

「エミィ、サトルと一緒に旅するから。サトルがこの二人と別れるなら、エミィはサトルに付いてくよ?」

 えっ? エミーリア?

「ヴォーデくん、なんか言ってくれ。魔術師仲間になったら、お別れって約束じゃないか」

「知らねぇよ。人を小馬鹿にする呼び方する奴の事なんて。それに俺が二人を止められる訳ねぇだろ」

 いや、呼び捨ては失礼だし。

 まあ、女は強しとは言うけども。薄情すぎない?

「サトルさんは、私達と一緒に行くのが嫌なんですか?」

「サトルはエミィと二人が良いんだよね」

 いや、嫌じゃ無いけど。……って、エミーリア? 何を言い出すんだ。そんなこと言ったら……。

「サトルさん、やはり別の魔術師を探しましょう。これはダメです」

 シャロンさん、仲間にこれ呼ばわりはダメだって。

「エミィはこれじゃないもん!」

 エミーリアの気持ちも分かるけど。今のシャロンには逆効果な気がする。

「シャロン、大人げねぇぞ。仲間なんだから、許してやれよ。それにコイツが、そんなことで揺らぐたまかよ」

 ヴォーデくんが珍しくフォローしてくれた。最後にバカにされた気もするけど。

「ヴォーデは黙ってて。そういう問題じゃないの」

「そんなわがまま言ってと、コイツに嫌われるぜ?」

「──っ!」

 そんなことは無いが。まあ、度が過ぎると嫌な気分にはなるかもしれないけれど。

 シャロンはヴォーデくんの言葉にショックを受けたのか、大人しくなった。これで良かったのかは分からないが、とりあえず落ち着いたから良いか。

「嫉妬は怖いよね~」

「テメェもくっつきすぎだ。もう少し節度を弁えろよ。やり過ぎると嫌われるぜ?」

「──っ!」

 ヴォーデくんの言ってることは分かる。……けど、ヴォーデくんの口から弁えるって言葉が出るとは。エミーリアも黙ったということは、嫌なことだったのだろう。嫌いはしないけど。

 皆に申し訳ないとは思う。

「ったく、世話が焼けるぜ」

「ヴォーデくん、ありがとう。助かった」

 まさか、ヴォーデくんに助けられるとは。今度、何かお礼しておこう。

「くん付けはやめろ。呼び捨てで良い」

「良いのか? 分かった。ありがとう、ヴォーデ」

 なんか、ヴォーデとの距離が縮まった気がする。

「話も纏まったし、魔王を倒しに行くぜ!」

「……ちょっと、サトルを貸して欲しいんだけど」

 貸して欲しいって、俺は物じゃないんだが。

「理由教えろよ。それによってはどうするか変わるぜ」

「……理由は言えないけど、この問題を解決しないと仲間にはなれないかも」

 エミーリアが正式な仲間になるために、俺が必要? それなら、一肌脱がないといけないのかもしれないな。

「それなら、別の魔術師を──」

「シャロン、お前は黙ってろ。ややこしくなる」

「俺は構わない。一肌くらい脱ぐよ」

 ヴォーデの成長ぶりに感動してきたな。仕切れるようになるとは。

「つうわけだ。付き合ってやる。ただ下らねぇことなら、覚悟は出来てるんだろうな?」

「うん、問題ない」

 エミーリアも真剣な表情。これは深刻な問題なのだろう。

「で、俺達は何処へ行けばいいんだ?」

「……エミィの故郷。耳長(エルフ)族の集落」

 エルフ族の集落? やはりエルフは仲間同士で暮らしてるのか。

「場所は?」

「ここから西にある孤島」

 地理に詳しくないから、正確には分からないが、この村から西に行けば、孤島があることは分かった。孤島ってことは、船に乗って行かなければならない。港を探さないとな。

「じゃあ、次の目的地は耳長族の集落だな」

「そうだな。ってことは、一旦ルミエールに戻らねぇといけねぇな」

 ルミエールに戻る? もしかして、港があるのか? まあ、王都だし無いとは言えないか。

「もうお帰りですか?」

 うわっ! イアか。驚かせないでくれ。

「そういえば、話し合いはどうなりました?」

「村に住まわせて貰うことになりました。元々、この村の人とは仲良くさせて頂いてましたし」

 そうか、それなら安心かもな。とりあえず良かった。この地を去る可能性もあったし。

「良かったです。これで平和に暮らせますね」

「はい。皆さん、ありがとうございました」

 俺達はイア達とグラナート村の人々に別れを告げると、一路ルミエールへと向かった。

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