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鬼退治

 小鬼族(ゴブリン)の娘イアと出会い、彼女の案内のもと、奥へと進む。

 奥へと進むが、まだ最奥地までは着かない。この洞窟、意外と大きいのかもしれないな。

 もしくは、騙されていて、こちらが疲れたところを襲うつもりか?

 とりあえず身構えておいた方が良いかもしれない。

「……っ! おい、何か聞こえなかったか?」

 えっ? 何も聞こえなかったけど、何それ怖い。やめて、ヴォーデくん。聞こえない声が聞こえるなんて。

「オイ、てめえ。怒るぞ」

「そこの馬鹿面2号、人間族(ヒューマン)にしては珍しい。お前も聞こえたようだな」

 馬鹿面2号。恐らくはヴォーデくんだろう。何故、俺が1号でヴォーデくんが2号なのか。ヴォーデくんだけで、良いだろうに。

「話は後にして下さい。この奥で争う声が聞こえます」

 ヴォーデくんの言葉は間違いでは無かったのか。ゴメンよ、ヴォーデくん。

「おい、置いてくぞ!」

 おっと、付いていかないと本当に置いて行かれるな。

 皆に付いていくと、確かに争い合う声……というか何かを叫んでいる声が聞こえてきた。

 泣く声、敵意を含んでいる声、息を切らしながら何かを叫ぶ声。三種類の声が聞こえる。

 これらを聞く感じだと、何か切迫感がある気がする。

 声がする場所へ着くと、人間の子供達とエルフの少女に複数のゴブリン達が襲い掛かろうとしていた。

「お前達、止まれ!」

 イアが制止の声を上げるが、ゴブリン達は止まらない。

 おいおい、族長の娘なんだよな? 一向に止まらないんだが? 興奮して声が聞こえていないのか?

「馬鹿面、イア様の制止に止まらん馬鹿な小鬼族は、我らの中には居らん。例え、興奮しててもな」

 その馬鹿面って名前、止めてほしい。俺にはサトルっていう名前があるんだけど。

鬼族(オーガ)の仕業か! 皆、狂躁状態(バーサーカー)になっておる!」

 バーサーカーって、手に負えない位、暴走する奴のことを指す言葉だよな? 止まらないなら、どうするんだ? 気絶させれば、良いのか? 難しいな。

「あの状態で意識を失うことはない。最早、命を奪うしかない」

 えっ? それって大丈夫か? 俺、あんた達ゴブリンに恨まれたくないけど?

「こんな状況だ。致し方あるまいて!」

「彼らは苦しんでいます。貴方達の手で楽にしてあげて下さい。我らは同胞を救ってくれた礼はすれど、誰も恨みはしません」

「そんじゃあ、思う存分やってやるぜ!」

 ヴォーデくん、何か鬱憤(うっぷん)でも溜まってたのかな? 意気揚々とゴブリン達の群れに斬り掛かっていった。

 俺も行くか。

「おりゃあ!」

「グァァ!」

 ヴォーデくん、躊躇い無いな……。次々と暴走したゴブリン達を屠っていく。

 ここまで案内してくれた冒険者(トラベラー)も恨みを晴らすかの如く、たがが外れたように倒していってる。さっきまでの手加減しろって言ってた男とは、思えない。

 俺はというと、俺の知ってるゴブリン達が目の前に居るというのに、俺の知らないゴブリン達の躊躇い無く、やれ。という言葉に元々は穏やかな者達だったと想像してしまい、思わず躊躇ってしまっていた。

 洞窟に入った辺りまではゴブリン達に容赦しない。と思っていたというのに、隣に立つゴブリンの娘は、まるで人間みたいな存在に見えた。

 それは怖い。というものではなく、驚きのあまり体が動かない。という感じである。

「とりあえず、片付いたぜ」

 ヴォーデくんが、スッキリした顔をして、イアに報告した。

 この物怖じしない彼は、素直に凄いと思う。殺すのを躊躇う俺とは違う。

「サトルさん、子供達の許へ向かいましょう!」

「あ、ああ……」

 シャロンは強いな。茫然と立ち尽くす俺とは違い、次に何をするのか分かっている。それにあの光景を見ても動じない。

 別にヴォーデくんとシャロンはゴブリン達に恨みがあるわけじゃない。彼らが人間に似ている。ということも分かっていて、何をしなければならないかを分かっている。

 俺は、軽い気持ちで冒険をしていないだろうか?

「皆さん、大丈夫ですか?」

「……助かっ……た……」

 シャロンが掛けた言葉に、エルフの少女は地面に倒れた。限界だったのだろう。

「──っ! 酷い怪我!? 今治します!」

「お待ち下さい。これをお使い下さい」

 シャロンがヒールを掛けようとするのを止め、何が葉のような物を渡すイア。なんだ? あの葉っぱ。

「回復魔法を使うのは、後に取って置いて下さい。鬼族と戦う際に必要となるでしょう。彼女には、この薬草で回復させます」

 イアはそう言って、服のポケットから緑色の液体が入ったビンを出すと、少女に飲ませる。

 なんか苦そうだな。

「……うぅ……んっ。貴方達は?」

 緑色の液体を飲んだ少女は傷が無くなっていた。なんだ、あの液体は。

「これは、薬液といって薬草をすり潰して液体にしたものです。これを飲めば、身体の傷やHPの回復が望めます」

 薬草を飲み薬にしたのか。初めて見たな。だが、少女に付いていた身体の傷がみるみるうちに塞がっていく。効果はあるようだ。

「私達は、貴女と同じくグラナート村の娘さん達を救いに来た冒険者です」

「貴方達も? でも、小鬼族と一緒にいるけど……」

 驚くのも無理は無いか。襲われた相手達と一緒にいるなんて、普通なら警戒するよね。

「安心して下さい。この人達は、鬼族に無理矢理付き従わされているだけなんです」

 いや、シャロンさん? そんなこと言っても信じてくれないと思うよ?

「別に小鬼族が鬼族に無理矢理付き従わされている事くらい、戦ってて気付いたし」

 では、何に警戒しているのだろうか?

「何故、小鬼族と冒険者が共闘しているの?」

 ああ、そういうことか。村の娘を助けようとしている冒険者達と娘達を(さら)ったと思われるゴブリン達は、共に敵同士。だからな。

「私がお願いしました。ですから、彼らは私達の味方なのです」

「そういうことなら……」

 イアの説明で納得してくれたようだ。

「自己紹介がまだでしたね。私はシャロン・ハーミンバードと申しまして──」

 別に、自己紹介なんて名前と顔が一致すれば良いと思う。ああ、冒険者なら職業もか。

「──です」

 あっ、紹介が終わったらしい。長かったな。ヴォーデくんが欠伸をしている。まあ、学校の校長先生のスピーチ並みに長かったからな。

「……そう」

「貴女の名前はなんていうんですか? 良ければ、教えて貰えますか?」

「──っ」

 少女が何か言ったが、小さくて聞こえなかった。

「すみません。良く聞こえなかったので、もう一度お願い出来ますか?」

「……嫌だ! 勝手に呼べば、良いでしょ」

 少女は何かイラついているのか、奥へと進んでいったぞ? まあ、俺達と同じ道だから良いのだけれども。

「この奥に進むと、鬼族が居ます。私達が一緒にいると、仲間が危険な目に遭うので、行けません。申し訳ありせんが、後はお願い出来ますか?」

 後はお願いって。まあ、やるしか無いんだろうけど。

「俺も村の子供達を村まで送り届けてくる。悪いが、後は頼んだ」

「ああ、頼んだ」

 子供だけで、ここを抜けるのは危険だしな。仕方ない。

「さて、ここからは危険だけど、覚悟は出来てるかい?」

「当たり前だろ。誰に訊いてるんだよ」

「大丈夫です。私も覚悟は出来ていますから」

 二人とも凄いな。俺まだ覚悟は出来てない。とはいえ、出来てないから待ってなんて言える訳も無いしな。

 覚悟を決めるか。はぁ、荷が重いって。

 俺達3人は、エルフの少女を追って、奥へと進む。

 奥へ進むと、何やら話し声が聞こえた。それも多くの声が。

 前へ進み、開けた場所に出ると奥に大男が立っていた。顔は赤く、額に角が二本生えている。ああ、鬼というヤツか。

 ゴブリン達はあまり居ない。

 いや、いるにはいるが大半が牢の中に閉じ込められていた。

 その中に、村の娘達も一緒に閉じ込められていた。

「アレが、イアの言っていた鬼族か」

「はい。鬼族は、身体が大きく力が強い亜人種(デミヒューマン)と本で読んだことがあります。気を付け下さい。敵の一撃を受けると、最悪死ぬかもしれません」

 えっ? マジで? それ、ヤバくない?

「要は、あのデカブツの攻撃を喰らわなきゃ良いんだろ!」

 ヴォーデくん、簡単に言うけど。それ難しいよ!?

「二人には、ダメージを軽減させる魔法を掛けておきます。ですが、なるべく直撃は避けて下さい」

「あ、ああ。分かった」

 直撃は避けろか。無茶を言うなぁ。だが、やらねばならないな。

「《神よ、かの者を守護する盾を与えよ……プロテクション!!》」

 自身の身体が何かに守られてる感じがする。何度か掛けられているが、シャロンの防御魔法は優秀だな。

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」

「はい、お願いします!」

 鬼族……。恐らくは最初の方に戦ったミノタウロスやアブゥみたいな感じなパワータイプだろう。

 よく見ると、ヴォーデくんが斧で互角の勝負をしている。こいつは、そこまで強くないのでは? いける!

 そう思った瞬間、何かが飛んでき──っ!

「「っは!」」

 何が起きた? 目の前でヴォーデくんが倒れている。さっきまで鬼族と戦っていたはずだ。

 なのに、気が付いたら、目の前に倒れている。

 俺も何かにぶつかり、一瞬意識を失いかけた。

「ヴォーデくん、しっかりしろ!」

 俺はシャロンが掛けてくれた防御魔法のお陰でほとんどダメージはない。といってもヴォーデくんも同じく防御魔法を掛けているのだが、強い衝撃を受けたのか意識が無い。ヤバい、これは完全にのびている。

「人間族、非力な者達よ。己の愚かさに後悔して死ぬが良い」

 くそっ! このままじゃヤバい!

「《地よ……敵を穿つ槍を放て……アースグレイブ!》」

「おっと! 魔術師か!」

 助けられたのか?

「《爆炎よ、彼の者を撃ち貫く弾丸と化せ。ファイアーショット!》」

「おのれ! 耳長族(エルフ)の小娘が!」

 詠唱速度の速さもそうだが、威力もヴァイゼの魔法に近い感じだ。

 これがエルフの力なのか?

「そこ、ぼけっとしてない! 人間族はさっさと逃げ帰ればいいのよ!」

 はい!? ボケッとしていたのは、こっちが悪いとしても最後のは酷くないか? 差別だと思います!

「人間族なんて、威張ってばかりか腰巾着ばかりのくせに。良いから、黙って逃げれば良いの!」

 威張ってばかりと腰巾着? 腰巾着の方は、何故か知っている気がする。

「悪いが、誰かと俺達を重ねていないか?」

「どうせ、貴方達もラヴィなんだかとイデなんちゃらと同じなんでしょ!」

 ああ、納得。あの二人か。

「あの二人に何をされたかは分からないが、俺達は誰も傷付かないよう務めていくつもりだ」

「信用して貰いたいなら、信用に足りる行動してよ!」

 全く以て、その通りだ。

「援護を頼む!」

「援護するから、やられないでよね!」

 俺だって、こんな所で死にたくない。

「《風よ、刃となりて斬り裂かん……ウインドエッジ!》」

「ぐぁっ! こんなものっ!」

「足下がお留守だぞ!」

 少女の攻撃で身体中を風の刃で斬り裂かれる中、鬼族の足が俺の一撃で斬り裂かれた。

 が、全ての攻撃により受けた傷は浅いようだ。頑丈だな、鬼族って。

「人間族と耳長族が共闘とは、珍しい。耳長族は、人間族の事をあまり好んでいなかったか?」

「い、色々とあるのよ! 色々とね!」

 まあ、エルフと人間って仲悪いって話、ゲームとか漫画ではよくあるしね。

「人間族が三匹、耳長族が一匹。ふん、脆弱だな」

「……」

 酷い言い様だが、少女も黙った事から正論を言われたのだろう。

「何やってんだよ!」

 痛ったぁ! いきなり背中を平手打ちとかどういう事?

「なんで、短剣で戦ってんだよ。こんな開けた場所で」

 えっ? 開けた場所で? ……あっ、ホントだ。そういえば、ヴォーデくんも斧持って戦ってたな。とりあえず持ち替えておこう。

 よし、本番はこれからだ。

「ふん、武器を持ち替えようと結果は同じだ!」

「おりゃぁぁぁぁ!」

 強気なのが、ムカつく。ダメージを受けて欲しい!

「──なっ!」

 おっ! 思ったよりダメージを与えられた。これはイケるんじゃ無いか?

「くっ……人間族が!」

「後悔するなら、もう遅い!」

 よしっ! 攻撃が通る通る。

 敵の攻撃も躱せてるし、これもこの剣のお陰なんだろう。

 買っておいて良かった。ヴォーデくんの攻撃も通ってる様子だし。案外、楽勝かもしれないな。

「くっ!」

 膝をついた! チャンスだ!

「これでとどめだ!」

「させるか!」

 ──なっ! 捕まえた村の娘を盾に!?

「はんっ! 動きが止まった……ぞ!」

「くっ!」

 くそっ! 人質を取られたら、攻撃出来ない。どうすればいいんだ。

「ああ、もう! 《風よ、我が呼び声に応えよ──》」

「魔術師、貴様は邪魔だ! 消えろ」

 あっ、ヤバい!? あのままじゃ、直撃を喰ら──っ!

「──なっ!」

「フンッ! 人間族風情が、耳長族を庇うとは。どういう風の吹き回しだ?」

 クソ……シャロンに防御魔法を掛けて貰っても、身体中が痛みで悲鳴を上げてる。

「サトルさ──キャッ!」

「回復なぞ、させん!」

 あの野郎……シャロンに向かって岩を投げやがった。

 身体さえ動けば、あんな奴。クソッ!

「耳長族の魔術師(メイジ)に人間族の治癒師(ヒーラー)か。貴様らもオレ様が可愛がってやる。光栄に思うんだな」

「結構よ!」

「お、お断りします!」

「てめぇ! シャロンに手出しやがったら、承知しねぇぞ!」

 あの鬼族。女をなんだと思ってるんだ。

「強気な女もいいもんだな。まあ、すぐに大人しくしてやるからよ」

 なんだ……この感情は。怒り? あのクソ野郎に怒りを感じている?

 そうだ。あの野郎が発した言葉が許せないんだ。爺ちゃんが一番嫌う輩。それが、アイツだ。俺も小さな頃、よく言われた。

『──良いか、悟よ。女子(おなご)を泣かせる男、悲しませる男。そして見下す男を決して許してはいかんぞ』

 ……ああ、そうだったな。爺ちゃん。ああいう奴は許しちゃいけないんだよな。

 くそっ! 動け、俺の身体。

「……ありがとう。あとは……任せて」

 くそっ! 俺は女の子に任せて倒れている場合か? 動け、俺の身体! 今、動かないで、動くんだよ!

「ねぇ、アンタ。ちょっといい?」

「あぁん? なんだ。改まって」

 エルフの少女がヴォーデくんに何か話している。一体なんの話をしているんだ……?

「……分かったよ。だが、期待すんなよ。あの野郎は、人質を取ってやがるんだからな」

「分かってる。じゃあ、頼んだわよ」

 少女がヴォーデくんに何か頼んだようだ……。一体何をするんだ……。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ!」

「人間族風情が!」

 ……鬼族の男が、ヴォーデくんを追った……。

 一体、何を──っ!?

 なんだ、身体が温かい?

「動かないで下さい。一時凌ぎですが、治癒魔法(ヒール)を掛けています」

 シャロンか……。ありがたい。これでまた戦える。

 あのクソ野郎に一撃を見舞ってやれる。

「クソッ!」

「ふん、人間族が調子に──っ!」

 なんだ? ヴォーデくんへの攻撃を止めた? 何故だ。

「《風の精よ、我が呼び掛けに応えよ……》」

 あの子、詠唱を始めていたのか。いや、魔法は奴には大してダメージはない。

「はんっ! ひょろガキの耳長族如きの魔法がオレ様に効くと思ってんのか?」

 あっ!? あの野郎、標的を変えやがった!

「てめっ! 余所見すんなっ!」

 ヴォーデくんが追ってるが、間に合いそうにない……。俺もまだ回復中で動けそうにない。

 クソッ! 早く動け!

「《我に仇なす者に裁きの刃を喰らわさん……》」

「裁きを下すのはオレ様だっ!」

 やられる!?

「《エアリアルエッジ!》」

「──っ!」

 魔法が効いた? 奴がふらついたのは確かだ。先程の魔法とは、何か違うのか?

 あの子も隙を狙って、距離を再び置いた。これは、上手い!

「サトルさん、終わりました。ですが、一時凌ぎにすぎません。何度か掛ければ、もしくは……」

「ありがとう。だけど、時間が無い」

「サトルさん、あまり無理はしないで下さい……」

「分かってる。けど、無理はしないと奴を倒せないからね」

 敵が、あのクソ野郎じゃなきゃ任せてたけど。こんな所で、寝てるわけにもいかない。

「……気を付けて……下さい」

 可愛い女の子から掛けられる言葉が何よりの力になる。

 立ち上がれ、俺!

「おおおおおおおおおおっ!」

「ちっ! 人間族め、しぶとい!」

「《風の精よ……》」

「まずはアイツからか……おりゃあ!」

 あの野郎! 人質を女の子目掛けて投げやがった!

「あひぃ!?」

 人質と少女が衝突して意識を失ったか……。

「この野郎!」

「人間族風情が、また来たか。だがな、オレ様には──」

 しまった! また人質を取るつもりだ!

「そう何度もやらせっかよ! このゲス野郎が!」

「──なっ!」

 ナイス! ヴォーデくん。人質全員を救出するなんて、漢らしい!

「助かった!」

「人間族がぁぁぁ!」

 ぐっ! 武器同士がぶつかる衝撃が身体に伝わって痛みがぶり返してくる。

 やはりシャロンの治癒魔法でも、完治とはいかないか。シャロンがさっき言った通り、何回か掛ければ完治するのかもしれない。だが、彼女には相当な負担を掛けさせている。これ以上は負担を掛けさせる訳にはいかない。

「人間族が調子に──ぐっ!」

 なんだ? いきなり、苦しみだしたぞ?

 よく見てみると、右足と脇腹に切り傷が。

「あとは頼んだぜ!」

「あとは……お願い!」

 あの二人……援護してくれたのか。ありがとう。ここで決めなきゃ、男じゃ無い!

「とどめだぁ!」

「やらせるかぁぁぁ!」

 一閃。地面に着地した時、意識を失いかけた。痛みで。

 だが、これはさっき受けたダメージがぶり返しただけ。

「……き、さ、ま……ぐふっ!」

 鬼族の男は口から血を吐き、倒れ、そのまま動かなくなった。それはつまり、俺達の勝ちが決まった瞬間だった。

 俺達は、鬼族討伐を果たしたのであった。

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