第33話
海上自衛隊 第1護衛隊群
第1護衛隊群はご存じの通り、第1護衛隊と第5護衛隊から編成されていた。
今回、防衛出動に伴って、特域周辺海域及び、オルスター王国領海の警備が命ぜられた。
そのため、特域東側を第1護衛隊が、西側を第5護衛隊が哨戒することとなった。
第1護衛隊
「司令部より入電。我々の進行方向およそ100Km地点に大規模船団を確認。注意されたし」
「了解。艦種は?」
「おそらく軍船とのこと。詳細は不明」
「了解した。このままオルスター王国とバナスタシア帝国の国境手前30Km付近まで前進。その後ヘリにて偵察を実施する」
艦長の指示により、オルスター王国の中心部あたりの領海で待機していた護衛艦隊は国境に向けて前進する。
また、艦載機であるSH-60Kが甲板上で発艦のための準備をする。
「レーダーにて不明船団を探知」
「了解。哨戒ヘリを目標まで飛ばしてくれ」
『こちらシーホーク01、目標海域に急行する』
護衛艦いずもより、2機のSH-60Kが発艦した。
大きなプロペラ音を鳴り響かせながら、大空に消えていく。
『こちらシーホーク01、国境付近にて目標を確認した。所属はバナスタシア帝国海軍、艦種は...戦列艦と推測。15ノット程度で航行中。16隻にて艦隊を編成』
『了解。武装の有無は?』
『旗艦と思われる船に関してはカノン砲と思われるものを60門程度装備している。ほかの艦艇には同じくカノン砲と思わしきものを40門程度装備』
『了解した。敵の動向に注意しながら偵察を続けろ。なお、危険と感じた場合は即時帰投せよ』
「艦長。一応警告を行いますか?」
「そうだな。地球のように常時無線をつなげているのか知らんけど」
しかし、一連の警告に対しての反応はなかった。そのため、防衛出動に基づいての領海侵犯に対する退去命令を行う。
「目標に対して退去命令を実施する。目標に向けて前進」
第1護衛隊はバナスタシア帝国海軍に対して退去命令に向かう。また、周辺にいたオルスター王国海軍に退去命令を行うことを通達した。
『我々は日本国の海上自衛隊である。貴船らはオルスター王国領海を侵犯している。即座に退去せよ。繰り返す...』
戦闘配置についた護衛艦隊は退去命令を行うため、護衛艦いかづちが先行して向かうこととなった。
護衛艦いかづちは、あらかじめ装備していた拡声器によって、警告を行っていた。
突如、周辺に水柱が上がる。
「敵艦より発砲を確認。敵艦より発砲」
「両舷最大戦速、ここより離脱」
艦長が冷静に対応する。
しかし、艦内は混乱を極めていた。
「正当防衛射撃の可否を問う!」
通信員が本部に対して正当防衛射撃の承認を得る。
陸上自衛隊のオルスター王国派遣隊が即時発砲許可をあらかじめもらっていたのに対して、海上自衛隊の艦艇にはその類が一切なかった。
それは、防衛省の認識として、陸勢力にて戦争を仕掛けると考えていたからである。オルスター王国の情報から、バナスタシア帝国が陸軍兵力に特化しているとの情報を得ていたからである。
アメリカとかからすれば、"馬鹿じゃねぇの?"とか思われそうだが、これが日本のお国事情である。
何はともあれ、いかづちは全力で現場から離脱していた。最大30ノット(公称値)を誇る船体の加速は伊達ではなく、数分足らずでいかづちは現場から姿を消した。
約5分後。
日本の上層部まで敵がいかづちに対して発砲したことが伝わった。上層部が出した答えは、"対艦ミサイルは使用せず、艦砲にて対処せよ"とのことだった。
これは、敵対勢力の使用する魔法について不明な点が多いため、誘導が完遂できないことや、技術の漏洩を恐れたためだ。その点、艦砲は撃ったらしまいであるため、適していると判断されたのだ。
いかづちに代わって、護衛艦むらさめが敵に対しての射撃を担当することとなった。なので、いかづちと入れ替わるようにして、むらさめが現場海域に向かった。
護衛艦むらさめ
「これより敵船に対して、艦砲射撃を行う。水上戦闘用意」
艦内に、ベルが鳴り響く。
「水上戦闘、艦砲射撃。目標前方敵艦隊、発射弾数1隻あたり1発」
砲雷長の号令に砲術員が復唱する。
「艦砲射撃はじめ」
この指示により、むらさめの主砲である62口径76mm単装速射砲が砲撃を開始する。
鼓膜に響く射撃音と共に、甲板に空薬莢が排莢されて転がる。
十数秒の沈黙を経て、無線より射撃評価が行われる。
『命中14、不命中2。効果は命中したうち8隻が戦闘不能、残り6隻はまだ動いています』
「了解、再度射撃」
「目標同じく、前方敵艦隊」
「艦砲射撃はじめ」
再び、むらさめの主砲が火を噴く。
そして、数分足らずでバナスタシア帝国海軍は、むらさめのたった1門の砲の前に沈んだのであった。
海上自衛隊の消耗は全くなかったことに対し、バナスタシア帝国海軍は主力艦隊のうちの1つを失ったのであった。
参考は亡国のイ〇ジスです。空母いぶきよりよっぽどこっちのほうがいいよなぁ。




