発見
(寒い、寒くて、凍え死にそう)
夏なのに、寒くて。冬なのに、暖房をつけても寒くて。
寒くて、寒くて。凍え死にそう。
いつからだったか。嫌なことがあると布団を被り、目を閉じて耳を手で覆い自分の世界に入る。すると、白い火柱のようなものが見えることに気づいた。意識を火柱に向ける。白い火柱から『女』の存在がいることが分かった。なぜか火柱が怖くて、恐ろしくて、泣きそうになる。本能が白い火柱を触るなと警鐘を鳴らすが、好奇心に負ける。恐る恐る白い火柱に触る。
(ああ)
それは暖かった。
(暖かい)
今まで寒かったのが嘘のように消え、体がぽかぽかと暖かくなる。それから私は白い火柱を探すようになる。相性があるのか同じ火柱を触ろうとしてもうまくいかないことがあった。火柱の大きさには種類がある。小さい火柱はそこまで暖かくならない。私が最初に見つけた火柱は中位で体全体が暖かくなる。では、もっと大きな火柱を見つけたら……。私の目的が決まった。意識をいつもより遠く、外に、外へと向ける。
火柱を求めて何年も過ぎた。私が火柱の存在を見つけられるのは日本までだった。私の限界はここまで。海を越えて大陸を見ようとしてもどうしてもだめだった。どちらにしても、海外まで『能力』を伸ばして火柱を探す必要はない。
今日も日課の火柱を探す旅に出る。意識を集中させる。
(今日はあの山を越えた町で探そう)
日本に現存する2本の白く輝く超巨大な火柱がここからでも見えた。
(怖い、怖いよ)
その火柱は誇張ではなく、本当に天にまで届くかのような大きさだった。
(アレに触れたら私みたいなちっぽけな存在は消し炭になってしまう。以前見た位置から東に100キロは離れている?西から東に移動している?なんの為に?)
超巨大な火柱に気づいたのは私が『能力』に目覚めてすぐのことだった。あまりのでかさに見逃すことなどありえない。近づきたくないので、できるだけ遠くに離れ、一息つく。能力に目覚めてからのことを思い出してみる。
火柱を探すこと以外に、私の『能力』のことを調べていた。新聞、ネット、書籍ありとあらゆることを調べて分かったことがある。幼少期の間に極度のストレスや、死を意識する体験があると一定確率『能力』に目覚めるらしい。能力は十人十色で、10人いたら10人に別々の力があるということだ。つまり私の見ていた火柱は、幼少期にストレスを抱え、なんらかの『能力』に目覚めたものを発見できるという力だった。
他人から見たら大したことのない力だと思う。だけど、私は違う。私がこの力がいい。
最初に『彼』の存在を『発見』したのはほんの偶然だった。
(あれは?)
一瞬だが火柱を目の端に捉えた気がした。そろそろ集中が途切れそうになりながらも探す。
(!!)
今にも消えそうにな小さな煙が見えた。そこにはいつもと違う黒い煙だった。
いつもと違うことはもう一つあった。男女比が偏りがあるこの世界では男は大切に扱われている。そのため『能力』は女しか保持していないと思っていた。だけど違う!!
黒い煙の先にいるのは男の能力者だ!