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顔じゃありません  作者: ニビル
第二章 外
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幸せ

 暇なのでゲーセンに寄り、クレーンゲームをする。1000円が5分も掛からずに一瞬で溶ける。どうしても欲しいと思えるフィギュアではないのに、取れそうな位置にフィギュアがあり、つい熱くなる。両替機で札を硬貨に変える。俺にクレーンゲームのテクニックがないことは今までのゲームプレーで自覚しているので作戦を変更する。テクニックがない下手な俺でもお金の力で必ず取るという作戦に移るも、10分挌闘して諦めた。当たり前だが適当に狙っているだけだと商品は取れない。手持ちの残高が不明で、財布の中を確認する。所持金が30円しかなかった。手持ちの現金が無くなった為、続行不可能につき諦めることにした。楽しかったけど、景品を取れたら俺はもっと幸せになれたはずだ。俺は誰よりも楽しみたいし、幸せになりたい。


 ……これでいいのか?これで満足なのかと自分に問いかける。俺はこの男性が少なく貴重な世界で。やりたい放題に、我慢せず、自分勝手に自堕落な生き方をすると自分の意志で決めたはずだ。性別が男というだけで全てのことが許させる世界で我慢する必要があるのか。いや、ないね。手持ちの金がなくて諦めるのはまだ早い。


 前世と比較して、こちらの世界の女性は男に過剰にお金を出そうとする傾向が高い。異性の同級生と接した少ない経験から比べてみても、女が男にお金を貢ぐことに抵抗ないことは立証されている。女の子の表情からも嫌そうには見えず、寧ろとても嬉しそうだったと思う。女はお金を男に渡して幸せになり、男はお金を女から貰って両方幸せになる。


 最高の一日を過ごすことを決めた。



 

  俺の下手くそなプレーを無料で見ていた女に声をかける。本来なら美少年のプレー鑑賞は有料であるべきだし、今日からは俺が有料にする。例えば俺が白といったら黒でも白にするつもりの気概だ。


 「無料タダで見るなら金くれや」 


 予想通り、女はお財布からお金を取りだそうとするのではなく、財布を丸ごと俺に渡してこようとする。

 

  「はい」


 やりたい放題やるといったが財布の中身全部貰える度胸はない。基本、小心者なので本当に言葉通り貰ってもいいのか一瞬考える。女は若く、服装もラフな格好でお金はそこまで持っていないだろう。どこかで見たことがあるような気がしたが、気のせいか。気づくのが遅れたがこの人は店員だ。だから見たことがあったのか。店員だろうと俺のプレーを無料で見ようとした不届き者に容赦はしない。


 「千円くれ」


 大丈夫だと思いながらも、上目遣いで女の顔色を伺う。予想通りに嫌そうな『顔』ではなく、嬉しそうな『顔』をしていた。


 

 「いいよ」

 「ありがとう」


 前世は社会人の端くれとして、それなりに生活していたのでお金を稼ぐことの大変さは理解しているつもりだ。求人の張り紙からアルバイトの時給は千円。つまり俺は店員の1時間分の労働を譲り受けることになる。やりたい放題やってやると決めたのにも関わらず、若干葛藤するがこれが俺の新たな生き方だ。もう引き返さないぞ。


 千円だけとお金を貰い、財布は女に返す。貰ったお札を速攻で換金してプレーする。自信があるように振舞っているためか俺に期待しているようだ。貰った値段以上はスーパープレーで楽しませて還元してあげると意気込むも惨敗。


 「機械が悪い」「まだ本気を出してないから」「実は……朝から体調悪くて」「見られると……ね」「いつもなら2個は取れたはずだ」と言い訳をする。俺の悲しそうな表情でいると女はすっと万札を俺の手に握らせる。


 「一万円もくれるの…?」

 「うん。今日給料日。だ。後輩に一度奢ってみたかったから1万円くらい平気。でも足りる?5万円までならすぐにでも出せるけど?」

 「これで十分。後輩?」

 「う、わたし、3年。その制服、月桂樹の1年生でしょう?」


 女は同じ学校の先輩だった。


 「今はね。(この先、待ち受けてある実習の授業が受けたくないため転校するかもしれない)先輩は『実習』の授業としてここでバイトをしている?」

 「うん、働いて稼がないといけないからね」

 

 

 お金を稼ぐ喜びを知るという。俺からすれば拷問のような理由で働かせる『実習』という授業。

 この機会だからこそ『実習』の実情を知り尽くし、2歳年上の先輩に「実習」について詳しく聞いてみるのもいいかもしれないと思った。

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