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顔じゃありません  作者: ニビル
第二章 外
19/26

働く?

 平日で一番楽しい金曜日なのにも関わらず、目が覚めてからどうも気分は晴れず、嫌な予感がする。何度も溜息が漏れていることを保護者である楓さんに心配された。生まれ変わってから俺の悪い予感は体感的であるが当たることが多くなったと思う。壁に貼ってある時間割りの紙。金曜日の午後の授業が全て「実習」。前世で存在しないはずの授業。男女比の著しい偏りがあるこの世界特有の授業なのではないかと。この時はまだそれほど「実習」を気にしてはいなかった。冷静に考えてみて、金曜日の午後の時間を丸々使うこと。専用の教科書が存在しなかったこと。生徒、先生も含めてみんながそわそわしだしたりとおかしい要素はいくつもあったはずなんだ。

 

 昼休み明けの午後の授業が始まり、担任の緒方先生が授業を開始の挨拶をする。緒方先生は数学の担当なのに、実習の先生が休みで変わりに出るのか?ちなみに俺の昼休みの過ごし方は自販機で飲み物を買い、孤独に独り車で休憩をしている。クラスに男が俺しかいなくて教室で過ごすには肩身が狭いのだ。他のクラスには複数男がいるのは実際見てきたので知っている。俺のクラスだけなぜだ。

 

 「浮かれているのもわかるけど、静かに。さて、みんなが高校に上がって一番 楽しみにしていた「実習」の時間。かくゆう先生もこの時が始まるのを今かと今かと待ち望んでいました」


 緒方先生が俺の方を見た。ちゃんとよそ見しないで聞いてるぞと綺麗なお目目で訴える。


 「知ってると思いますので、細かい説明はしません。1学期から3学期までの期間、各自どんな手段を用いてもいいので、「実習」の時間を最大限有効に使い、自分で働いて(・・・・・・)お金を稼いでください」


  みんな知ってるだと?俺は知らないぞ。聞いてないどころか。……は、ハタラク?はたらく?男は働かなくても勝手にお金が支給される世界で、なんで俺がまた働くことになるんだ。聞き間違えか。そうだ。そうに違いない。それかこれは夢だ。頼む夢なら覚めてくれ。


 「働く?」


 どうやら俺は思ったことをそのまま声を出して言ったようだ。更に間が悪いことに、シーンとしてる教室に俺の声は思ったより響き、周りから注目を浴びてしまったようだ。

 

 「皐月君。先生は嬉しいです」

 「えっ……?」

 

 嬉しいってどういうことだ。俺は働きたくないから嬉しくない。俺の顔を先生よく見てくれ。絶望で悲しむイケメンの顔を生で見る機会なんて一生に一度あるかどうかだ。イケメンで超希少価値のある男だから何をしても許される俺に構わず先生は話を続ける。


 「皐月君、先生の間で噂になっていましたね。入学1週間で『実習』の評価に全く関係ないのにも関わらず、1年生で1億を稼いだことに先生は誇りに思います。5組に男の子が入ること自体、異常だったので先生は心配していましたが……そういう事だったんですね?」

 

 そういう事ってどういう事だといい返しそうになったが言葉を飲み込む。何の話だと思えば、貴重な若いイケメンである俺の髪の毛をネットオークションで売った件か。あれからゴスロリと連絡も接触もしてないからどうなってるか分からなかった。俺は強気で1本(1千万)超えればいいな位のつもりで出品してもらったのが億まで競り上がったのか。それとも1本(1億)ってことでゴスロリは処理したのだろうか。どちらにしてもとんでもない金額が動いたな。俺も億万長者かといつまでも現実逃避している時間はないようだ。

 先生の話からたまたまオークションで髪を高値で売れた事が働くことに繋がるのか。これでも働いたことにカウントされるのか。



「――という訳で、今から実地試験になります。尚、最低目標額に届かないと進級できないのでそのつもりでいてください。月桂樹学園に入学できたみんななら必ず達成できると思います。特に皐月君には学年で、全学年で一番になることを期待しています。働いてお金を稼ぐ喜びを知りましょう。以上。解散」


 「「起立。礼」」


 進級できなくても、先生に期待されようが俺には関係ない。一切働くつもりはない。入る学校間違えたか?この学校がおかしいんだよな。くだらない授業やるくらいなら別の学校に転入も考えるか。働くくらいなら退学する覚悟はある。午後は暇になったからゲーセンにでも行くか。

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