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顔じゃありません  作者: ニビル
第二章 外
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ダーリン

 あとの作業的な事は頼むと他人任せにする。煩わしい作業は一切やらないし、手伝うつもりもない。髪を切るという一番重要だった要件も済んだ。帰ってゲームの続きがしたい。周回して素材を集めを再開したい。



 「お腹減りました?すぐに用意するからご飯、食べよ?」

 

 帰るそぶりを見せたからか、帰りたいことに気づいたか俺を食事に誘い引き留めようとする。俺に食事は必要ない。今度は俺の表情をじっと観察して食事を断ると察したようだ。


 「家族のご飯はうちが作ってるから味には自身がある――」

 「家に用意してあるんで」

 

 この時はまだこの世界の女性はこれで納得するだろうと思っていた。今まで出会った女性の経験から男性に対する執着心を甘くみていた。


 「家でも食べれるように軽くつまめるの作るから、食べて?」


 俺の手をぐいぐいと必死な表情で引っ張る。食べてあげたいけど体質的に食事を取ると気持ちが悪くなって吐いてしまうのでゴスロリ少女の手料理を断るしかない。美少女の手料理を食べ逃すことになるが仕方ない。食べれないけど何を作ってくれるか聞いてみることにした。

 

 「メニューは何?」

 「特製ナポリタン」


 俺は無類の麺好きで前世はうどん、ラーメンばかり食っていた。うどんとラーメン食べたいけど【不食】の力で体が食べ物を受け付けない。今まで試してなかったけど飲料は行けるからスープだけなら飲めそうな気がする。早く帰って試さないと。

 

 「いいね。食べたいけど、昼に食べすぎてお腹がすいてないから飯はいらない」

 「そうなんだ。うちの手料理が食べたくないわけでないんだ。男の人は女の料理は生理的に無理な人がいると聞いているから安心」

 「そ、そうか。俺は気にしないぞ」


 俺の反応によくしたのかゴスロリの手が緩んだ。そのすきにそっと離れて玄関に向かう。


 「どこへ行くのだ。ダーリン?」

 「ダーリン?」

 

 聞きなれない単語に思わず繰り返す。ダーリンってなんだ。俺のことか?俺は別にゴスロリの恋人ではない。互いに名乗ってなかったがそれでもダーリン呼びはおかしいと思う。


 「会ったばかりのうちとダーリンの愛車で『ドライブデート』をして、『家』まで来て、うちの『部屋』に入るなんて強引な人。両想い?プロポーズ?これはもう、うちと『結婚』するしかないよ。ね?ダーリン」

 「はい?ごめん何を言ってるのかよくわからないよ……」

 

 何言ってるんだよ。ゴスロリのお花畑の頭の中ではそういう設定になっているのか。冗談にしては困ったぞ。俺も男だ。可愛い子に言われれば嬉しい。だけど、車に乗って家まで来たのはゴスロリに美容師として俺の髪を切らせてくれと誘われたからだろ。男の人口が3%しかない中で俺の軽率な行動によってゴスロリが勘違いしたのかもしれない。楓さんに新車購入してもらう前に、男性の車に女性を乗せることがいかに女性にとって神聖なことなのか力説されたような気がした。今更思い出してももう遅い。なんとかこの場を収めて帰ってゲームしなければ。有耶無耶にして脱出成功したと思いきや、後ろに回り込まれて手首をつかまれた。体格差もあり自力で抜け出すことはできそうにない。

 

 「うちのことが嫌いになった?」 


 嫌いも好きもまだよく分からない。ゴスロリは年下なのに働く気持ちがあるだけ俺よりいい子だとは思う。


 「今のままだと好きになれない。ごめん、俺好きな子がいるので……」


 とでも言えばさすがに引いてくれるだろ。引いてくれるよな?ゴスロリの小さな唇が動く。


 「嘘。今、目が泳いでた。本当なら好きな子の名前言ってダーリン」


 ゴスロリに俺の嘘は通用しそうない。

 

 「……あのな。一緒に車に乗って『美容室』()に来た理由は俺の髪を切る為だよな。君が切らせてくれと言わなければそこで終わった話だと思うんだが。俺がおかしいのか?」 

 「だって、だって」


 俺が一歩も引かないことを悟ったようでゴスロリが大人しくなった。もう会うことはないけどカットの腕は良かったよ。カリスマ美容師になる夢を陰ながらに応援するよ。


 「散髪ありがとう。帰る」

 「……ありがとうございました」

 

 後味悪くなったが終わり良ければ総て良し。携帯の電源を入れると不在着信が楓さんから13件もあった。

 なんて言い訳しよう?

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