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顔じゃありません  作者: ニビル
第二章 外
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四日なずな(3)

 一般的に男性の視線が女性を見たとき一番最初にどこに注がれるか。着飾った服装?すらりとした体系?人気の髪型?魅惑的な胸?顔でもありません。正解は――胸元にある『認識票』(ドックタグ)このタグの色により本人の年収が一目でわかるようになっている。

 一番大切なものは何かと問われたら、10人に同じ質問をして10人が『お金』だと答えると四日なずなは断言する。この世にお金さえあれば手に入らないものはない。男女比が1:33の比率で出生する貴重な男でも、『お金』があれば付き合える可能性があるといえばお金の価値が分かるだろう。それ故、皆働き、お金を稼ぐことを是とする。幸いにも四日家は国内で5本の指に入るくらいの資産をもつ名家である。なずなが将来お金と男に困ることはない。男女比が狂った世界において金持ちの女が異性にもてる条件の一つ。家が資産家であるのは有名なため、貴重な男たちから好意を持たれていた。プライドの高い男から何回も告白を受けたこともある。大人になればいずれ男と結婚していよう。しかし、なずなは自身を見て、愛してもらいたかった。中身ではなく金しかみてくれないことに嫌気がさして『認識票』(ドックタグ)を最上級から最低の白色にしたのが3年前になる。


 なずなはクラス分けで5組だった。『年収』によりクラス選抜が始まっていることは分かり切っていたことだ。お金を稼げるほど優秀であるとされ、クラスの男の数も増えて男と出会える確率が上がるので女たちも必死になる。1組の男は10人。2組と3組が5人。4組が0人。5組は……。基本的に女と同様に男にも『認識票』(ドックタグ)を付けている。男の時給は女と比べて高いため年収が高くなるのは必然だった。年収に興味がないなずなは灰色の高校3年間を過ごすつもりだった。早くお家に帰りたいなとスマホをいじっていると何やら周りが騒がしい。「小さい?」なんだろうと思い原因を探るとなずなより一回り、いや二回りも小さい可愛らしい子と目が合う。雪のような白い肌に、ぱっちりとした大きな瞳。この子みたいな愛くるしい顔に生まれていれば自分は……。一度見たときから決して忘れることができなかった、何度も叔母である楓さんに頼んでも会わせてもらえなかった山塚皐月君がいた。『認識票』(ドックタグ)ではなく――彼だけがなずなを見てくれる。皐月君は初めて会ったときのようになずなの事を見てくれていた。皐月君の視線はお金(タグ)ではなくなずなの醜い顔を見ていた。醜い顔を見られたくないために前髪を伸ばしたのに、のぞき込むように見てくる。逆に皐月君の胸元にはドックタグはしていなかった。男女とも齢十もしたら最低の白色のタグをつけても不思議ではないが……。『認識票なし』(タグなし)は珍しい。プライドが異常に高い男が『認識票』(ドックタグ)をつけないなんてことはほぼないのに。


「見るなら金を払え」


 初めて会った時も「笑ったからお金頂戴」とお金をねだられた。腐っても男の子だ。『お金』に執着心があるらしい。ならどうして『認識票』をつけてないのと思うが問題を頭の片隅に置く。どれくらい欲しいのか検討もつかないので「いくら欲しいか?」と尋ねると「有り金全て」か。たったそれだけでいいのか。財布を皐月君に渡しても反応がよくない。10万円だと足りないよね。

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