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顔じゃありません  作者: ニビル
第二章 外
14/26

『義務』

 本来なら12歳から15歳までという貴重なもう二度味わえない時間。二度目の奇跡の時間を与えられ、自堕落に無気力に過ごしていた。人間はか弱く脆い。一度楽を覚えると堕落していく。収入がかつてより減少しても以前の生活レベルを落とすことが難しいように。俺もその例に洩れなかった。快適な誰にでも邪魔されない自分だけの部屋を与えられた。家事は全て離れに住む穂坂唯(ほさかゆい)さんにやってもらった。24歳で俺と10も離れてないので年上の姉のような存在だった。唯さんも俺を実の弟のように接して溺愛し、楓さんからは唯ちゃんと妹のように可愛がられている。

 欲しいものは何でも買い与えられた。15歳の誕生日に、ステーションワゴンタイプの最上位グレードの新車を約束通りに誕生日プレゼントとして贈られた。室内は広く荷物を積める量も多い。不登校の為、時間だけは無駄にある。流行のキャンプに行こうかなと計画を立てたがまだ近場を数回しか乗っていない。許可(お金)があれば車通勤が可能であった。車通学したいから購入したのに、学校へ行かず家に引きこもっていたので、本来の用途で使わずにいる。おまけに俺に異常に優しい(ねえ)さんと楓さん(ママ)がいるので全力で甘えさせてもらった。何でもしてくれるので堕落した駄目な人間になってしまった。仕方ないね。

 基本勉強は通信教育と唯さんから学んでいる。何不自由なく暮らせる俺は自由で我儘に生きるつもりだったから高校に進学する予定はなかった。しかし、『こちら』の世界の事情で高校に通わないという選択肢は消えた。何故かというと、男性には2つの『義務』がある。男女比が1:33と極端に男の数が少ないために『義務』ができた。一つ目が、18歳以上の男性は年4回精子の提供をする。これは予想していたから問題はない。そして――、18歳以上から25歳の誕生日までに最低一人以上の女性と『結婚』しなければならないと法律で決められていたからだ。結婚……前世では考えたことがなかった。しかしだ。こちらの世界で男性は結婚しなければならない。期間までに結婚しないと強制的に国が指定した相手と結婚することになる。そんなわけで結婚するとしたら好きな女性がいいと思うのは誰でも普通のことだろう。で、相手のことをもっと知る必要がある、また自分のことを知ってもらうためにも引きこもってはいられない。家から出たくないけど学校に行って相手を見つけるしかないと悟った。結婚する気はあるし、女性は美しい人が多いから何も問題はない。男はたった2つの『義務』を果たせば国から支援が受けれて働く必要がない世界だ。権利ばかり要求するのではなく、『義務』はしっかり果たすのが男の務めだ。

 近郊で一番難易度が高い高校に入学できた。選択した理由は楓さんに、ここが私の“母校”だから受験してと泣きつかれた。実の母以上に愛情を貰ってよくしてもらっているのは実感している。何度もお勧めされたので第一志望に考えた。ここは貴重な男だからといって誰でも入学できる学校ではない。前世の知識の蓄積があるから試験は大丈夫だろうと楽観的だった。勉強をし直して思ってたより俺は馬鹿だったことが分かった。若いから知識をスポンジのように吸収する……なんてことはなく、むしろ生まれてからろくに頭を使ってなく、人より問題を理解するのに時間を要した。俺に直接言ってないが、合格できたのは楓さん(お金)の力によるものだと思う。


 入学初日。真新しい制服に汚れはない。ハンカチは持った。他に忘れ物はないな。

 

 

 「行ってきます」と楓さんに言う。

 「行ってきますの“ぎゅっ”てして」

 「ん」


 楓さんに優しくハグをし終えて車で登校する。15歳という年齢を考えたら気持ち悪いと思う。少し待って欲しい。俺は成長期であるのにも関わらず身長が3年間に1mmたりとも伸びていない。毎日身長を計測していたので間違いない。楓さんに泣きついて、スーパーシークレットブーツ20(cm)を特注品で俺専用に作ってもらった。20㎝底上げしても160にも届かない悲しさ。不思議なことに3年間外見も全く変わってなく、身体的な成長は一切ない。前世は前髪が後退していたので髪があることに喜びを見出した。そのため髪を切るのに抵抗があり、腰まで届く髪をポニーテールにしている。15年間紫外線を最低限しか浴びず室内にいたためか、雪のように白い肌。くっきりとした目は男には見えないためハグをしても見た目は問題ない。


 俺を見送った楓さんと唯さんが

 「行きましたね」

 「ええ。唯ちゃん、ドローンで監視と警護を最高レベルに引き上げて」

 「すでにやってます」

 「ありがとう。入学式の皐月君の姿をたっぷり撮ってくるから期待しておいて」 

 「ずるいです。私も行きたかったのに……」

 「親族しか参列できないから。唯ちゃんにはあとで写真をたくさん見せてあげる」 


 

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