四日なずな
帰宅方法を考えてると楓さんから声がかかった。
「皐月くんがよければ車で一緒に帰ろ?姪に連絡をしたからそろそろ迎えに来ると思う」
「どうやって帰るか悩んでいたところです。歩いて帰るのは無理そうだと思ってたので助かります。楓さんの姪は俺と歳が変わらなと聞いてましたけど、俺たちくらいの年で自分の車を持てるのですか?」
「お金さえあれば大抵のことはできるから……」
「そ、そうですか。またお金の力………」
お金の力こそが正義。ぶっとんでるように思える世界観だけど、前世でもお金さえあればたいていのことはできたので変わらない。ただ、少し?割と?お金の力がものをいう世界なのだろう。車かあ。俺も自分の車が欲しいな。前世で通勤で使うためにに車を所持していた。金曜の夜になると朝までドライブしていたのを思い出してきた。そのせいでなんともいえな気持ちが胸にこみあげてきた。楓さんはお金持ちのようだし、俺に大変甘いのでおねだりしてみるか。男に甘い世界で俺は遠慮はしないと決めたからすぐに自分の欲望を満たすために行動にうつす。
「楓さん。俺も自分の車が欲しいです。買ってください」と、半分冗談で言ったつもりが「いいよ」と二つ返事で答えてくれた。あまりに嬉しくて楓さんに抱き着いてしまった。
「本当ですか?冗談だってあとで言われたら泣いちゃいます」
「女に二言はないよ。ただし、条件が二つあるわ」
「条件ですか?俺は、俺は、絶対に働かないぞ!働くくらいなら――」
「働く?皐月くんは何を言ってるの!?急に大声を出してどうしたのかな?皐月くんが働いたお金で返済して欲しいなんて私が言うとでも思ったの?男の子に、大人の私がそんなことを言うわけないから。条件の一つ目は、15歳を過ぎてからね。まだ皐月くんに車の運転は早いと思うの。もう少し大きくなったら好きな車を買ってあげる」
俺は働けと言われなくてほっとした。好きな車をなんでも買ってくれるのか。こちらの世界の傾向は詳しくは知らないが前の世界ではSUVが流行っていた。SUVも乗ってみたいな。15歳になるまでまだ3年あるから俺に合う車をじっくり選ぼうか。
「二つ目の条件は……?」
「私を一番最初に乗せることです!」
「それくらいなら全然大丈夫です。そんな事でいいのですか?」
それから俺は男性が運転する車に最初に乗ることができるかが、全女性の憧れであると語られた。大袈裟だなと言おうとしたけど、目が真剣だったので余計なことを言って車を買ってくれなくなるかもというセコい思考が浮かび黙ることにした。
しばらく楓さんの顔を見てたら(じろじろ女性の顔を眺めるのは失礼だと思いつつも美人なので何度も見てしまうのだ)黒色でセダン型の高級そうな車が近づいて停車した。運転席から一人の少女が降りてきた。
「楓おばさん。お久しぶりです」
「なずなちゃんもね。休日に無理言って来てもらってごめんね」
「買い物に出かけるところだったので全然問題ないです。でも珍しいですね。いつもは…………」
目の前にいる少女が先ほど話で出ていた楓さんの姪であるようだ。歳は俺とそう変わらないけど、身長は向こうの方が頭一つ高い。黒色の長い前髪で顔はよくわからないがこの子も楓さんの姪なら将来美人になるだろうな。俺の視線に気づいたのか、少女が俺に初めて意識を向けるのが分かった。
「楓おばさんそちらの子は?」
「ふふ、誰だと思う?」
何を思ったのか、四日なずなが俺に近づいてくる。男が貴重な世界でだ。客観的に見た目が優れた俺のことをタダで見られることに癪に障り、変顔をしてやった。なずなが笑ったぞ。
「笑ったからお金頂戴」と俺は同い年の子にせびるが無視された。悲しい。
「うそ。え、男の子?だってこんなところにいるわけないのに」
「そう。男の子。驚いたでしょう。前に話した山塚皐月君ね。本当は貴重な男の子と会わせるのは問題だけど。今日は特別にね。なずなちゃんと同じ学年だから仲良くしてね」
「同じ……歳。私より小さいのに……」
身長の低さを気にしている男の俺に「小さい」は禁句だ。プライドが傷付いたぞ。今日のところは、わざわざ休日に迎えに来てくれたことに感謝して失言は不問にしてやろう。
「山塚皐月だ。よろしく」
挨拶を軽く済ませて、勝手に助手席に乗り込んだ。シートは高級車のようで俺が載ったことある車と比べて座り心地が違った。
「何してるんだ?早くしないと置いてくよ」とさも自分の車のようにふるまい俺は二人が乗り込みのを待った。




