6.初めてのギルド
ぽかぽかと気持ちのいい陽気がユヅキを包み込んでいる。城下町に来たユヅキは、のんびりと異世界の景色を堪能しながら街中を歩いていた。
「はー。にしても、今さらだけど、マジで異世界だなぁ。西洋風ってやつか? よくわからんけど。でも、エルフとかドワーフとか、そういうのは歩いてないんだな。普通の人間だけだな」
様々な種族の人が交流している風景を思い描いていたユヅキは、少しだけ残念そうに呟く。
それでも異世界には違いない。街中には剣や斧といった武器を腰に下げた、冒険者らしき人がぽつぽつと見える。
武器屋らしき店も時折見かけたが、まずはギルドで話を聞こうとユヅキはギルドを探していた。
「武器かぁ。あんまりこれって思い入れのあるものもないけど、どうしようかな。無難に片手剣ってとこに落ち着くのかなぁ。それにしても、ギルドどこだよ。あ、そうだ」
ユヅキは閃いたとばかりに辺りを見渡す。そして、一つの冒険者グループに目を付けた。
そう、こっそり冒険者に着いていけばギルドに辿り着くだろうと考えたのだ。
「依頼を受けに行くやらどーとか言ってたし、多分あの人達これからギルド向かうだろ。離れて着いていけばいいな」
ユヅキの予想通り、冒険者グループはギルドへと案内してくれた。……ユヅキが勝手に着いて行ったのだが。
まずは情報収集とばかりに、ユヅキは受付を探して話を聞きに行く。
「すいません。ギルド来るの初めてで、ちょっと色々お聞きしたいのですが」
「はい、ようこそ冒険者ギルド、アルマ支店へ! 聞きたいこととは、なんでしょうか?」
「えっと、登録のやりかたと、依頼のシステム、ランクアップとかあるんですか? そのへんも知りたいです」
「初めてという事ですものね。登録はどのギルドでも行えます。こちらの書類に、名前や主に使用する武器、スキル等を記入して頂ければ完了です。ギルドカードをすぐに発行致します。依頼は大体のギルドには依頼ボードがありますので、そこから好きな依頼を受付まで提出して下さい。最後にランクですが、Fから始まって、依頼の達成状況によってギルドへの依頼報告の際に自動でランクアップしますね。詳しくはもう少し色々ありますが、ざっとこんなところです」
彼女の淀みのない説明に、ユヅキは少し驚いた。おそらく言い慣れた説明なのであろう。
それにしても、まごう事なきテンプレシステムだ。ギルドなんてもちろん初めてのユヅキだが、何一つ戸惑う要素がなかったのは、ひとえに鍛え抜かれた妄想スキルのお陰であろう。
「ちなみに、ギルドカードに自分の貯蓄をできたりなんかは……」
「えぇ……出来ますよ。むしろ、便利という事で皆さんご利用になられています。初めて……なんですよね? よくご存知ですね……」
「あぁ……。なんとなく、そんなことが出来たら便利だなー、とね? たまたまですよ、たまたま。それじゃあお姉さん、説明ありがとうございました」
「え……? あれ? 登録されないんですかー?! ちょっとー!」
受付が慌てて止めようとするが、既にユヅキは外に出ていた。そう、ユヅキは初めからここで登録するつもりはなかったのだ。ここへは、ユヅキの思うギルドの形との答え合せをしに来たのだ。
「ギルドか……。確かに入りたいんだけど、なるべく城のお膝元では入りたくないな。出来るだけ、少し離れた場所で見つけたいところだ」
呆気に取られた受付を振り返りもせずに、情報だけ少し確認できたユヅキは、買い物をするために街中へと向かったのだった。
ーーユヅキ異世界一人旅 CONTINUEー