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5.ユヅキの旅立ち

 翌朝、ユヅキは七回目の転移先である一の国アルマの応接の間で、国王アルマと側近の一人であるムルカという女性と三人で話をしていた。

 昨日は大した説明をしないまま休ませてもらったため、細かい情報の擦り合わせを行うためだ。



「成る程な。それで昨日は疲れ切った顔をしておったのか。なんでも、転移をされる方も魔力を多少奪われるらしいからな。その影響もあったのかも知れん」



「魔力……か。俺にもやっぱりあるんだろうな。調べる方法とかあるのか?」



「あぁ。検知器が開発されていてな。世間にはまだあまり出回っていないが、国に一つは最低でもあるはずだ。持って来させるから調べてみるか?」



「……いや、いい。自分のチカラを数値で確認すると、先入観が生まれるからな。やめておくよ」



 もっともらしい理由を付けて断ったユヅキだが、本心は別にあった。対話を望んだユヅキではあるが、実はまだ警戒は続けている。そのため、なるべく自分のチカラは見せたくないと考えたのだ。出来ればスキルも隠し通したい所だったが、最初に知られてしまったためそれは諦めている。



「それで、本題に戻るが……結局俺はどうすればいいんだ? 全ての国に行ったことになるようだけど、転移だったから土地勘がまるで無い……」



「あぁ。とりあえずはうちの兵士長に訓練をつけてもらうといい。戦い方なんかも学ばないといけないだろう。その後は二の国、三の国と順に巡るのがいいな。魔王の居城は昔から魔物が多く強い土地でな、遠い場所から順に国を作った経緯から、今でもここが一番魔物が弱く、七の国近辺になると強い魔物が多いのだ」



「なるほどね。単純と言ってしまえば終いだが、わかりやすくて俺には助かるな。よし、それじゃこれから旅立つことにする。稽古はいらないよ、旅の途中で鍛錬するよ」



 事情を聞いたユヅキは、すぐにでも旅立つ決意を固める。これも戦い方を見られない為に、だ。警戒し過ぎとも取れるが、見知らぬ世界だ。本当に味方なのか、敵なのか。何が本当で、何が嘘か。自分の目で、耳で、感覚で判断していかなければいけないとユヅキは考えていた。



「そうか……出来ればもう少しゆっくりしても貰いたかったものだが。仕方ないな、せめて大した額は用意できんが、路銀を受け取ってくれ。武器も無しじゃ鍛錬もなにも無いだろう?」



「すまないな。それは素直に助かるよ。最初は素手の格闘からか? と考えていたところだ」



「ははは。よし、それではこれを。……くれぐれも気を付けてな。弱い魔物とは言えど、魔物は魔物だ。死の危険もある旅になるだろう。なにかあったらいつでも城に戻ってくるといい。歓迎するよ」



 旅の軍資金を用立ててもらい、ユヅキは城を後にする。城を出たユヅキは、一度だけ後ろを振り返る。そこには門まで見送ってくれたアルマ王が、笑顔でまだ手を振っていた。



「ふっ。人の良い王様だな。もう少し信じてもよかったのかもなぁ。まぁ、終わったことだ! まずは装備を整えて、ギルドで当面の資金繰りの計画と、いよいよスキルのお試しだなっ!」



 手を振り返したユヅキは、今度こそ振り返らずに前へと進む。これからユヅキの異世界での生活が本格的に始まるのだ。




 ーーユヅキ異世界一人旅 STARTーー

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