35.不穏な噂
「全く! 早とちりで暴走し過ぎだぞ、お前ら……。とにかく、事情は今話した通りだ。わかったか?」
人気の失くなってしまったギルド内には、ユヅキの説教が響き渡っていた。
説教を受けている二人……ミキとレイムは、正座の格好で床に”張り付け”られていた。
「ユヅキさん、わかりました。わかりましたから早くコレ解いてくだしゃい……うぅー」
「納得はしたけど、是非一度特大斧に変化するところは見てみたいわねぇー。あと、アタシもこういう趣味はないんだけどなぁー?」
辛そうな二人は、ユヅキの重力スキルによって正座の状態で脚だけ床に”張り付け”られているのだった。
勘違いをしたままユヅキに攻め寄った二人は、いい加減落ち着けというユヅキの反撃により、呆気なく今の状態に落ち着かされていたのだ。
必死の懇願によりなんとか解放された二人は、歩くのもままならない状態だがなんとか椅子に座り、落ち着いて話を再開させていた。
「それで? 俺の状況は今言った通りだが、そっちはどうしてたんだ?」
注文したエールをグイッと飲み干したユヅキは、二人の経緯についての話を聞く。
「あの後……ユヅキに言われた通り少し離れたところまで二人で避難してたんですけど、戦闘の音が聞こえなくなったので、元の場所に私たちは戻ったんです」
「戦闘の後は凄い有様だったわねー。ほんと、リッチーと戦って勝つなんてユヅキの強さはちょっとおかしいわよー?」
確かにリッチーとの戦いは紙一重であった。それ程Sランクの魔物というのは強く、そして頭も回る魔物が多いのだ。
しかし、SランクというのはAランクよりも高みにいる魔物という意味合いであり、リッチーが最強の魔物という訳では決してなかった。
「まぁ、実際ヤバかったな。本当に死ぬかとも何度も感じたよ。もっと、強くならないといけない。チカラも、技術もな」
ユヅキはその事を、誰に言われるでもなく感じ取っていた。そして、異世界に来てから思っていた己のチカラを試したいというその気持ちは、己のチカラを伸ばしたいという方向へとシフトしていたのだった。
「まぁ、それからリッチーの魔石だけ回収して、取り敢えず情報の集まるここの街に来たんだけどねぇー。ほんと、急に来るんだから驚いたわよー?」
「俺の予想が当たっていてよかったよ。二人ならウルカに向かうだろうと思って俺もこっちに向かったしな。それで? 何かおもしろい情報は手に入ったのか?」
「全然ですよー。レイムさんも毎日色々聞いて回ってくれてましたけど……、そういえば一つだけよく聞く噂ありましたよね? 嘘か本当かわかりませんけど……」
「あぁ。勇者サマがなんか魔王軍の生き残りを率いて侵攻してるとかいう噂よー。流石にどうなんでしょうねぇ? 行き過ぎな気もする……」
その時だ、外から急に慌ただしく一人の兵士が飛び込んで来た。
慌てたその兵士はユヅキ達には目もくれず、真っ直ぐにギルドの受付へと向かう。
そこで受付の女性と何か話しているようなのだが、ユヅキ達の所からは声までは聞こえなかった。
「なんなんでしょうね? かなり慌ててますけど……」
「さぁねぇ……。でも、国の兵がギルドに駆け込むなんて聞いた事ないわよー? 何かあっても普通は国の上部に報告するはずじゃ……」
話し終えた兵士はまた慌てて去っていったのだが、すぐに受付の女性がユヅキ達の元へ向かって来た。
「レイム様。Aランク冒険者様にギルドから緊急の依頼があります。現在、ここウルカの近隣にあるドーラムという小さな集落に魔物が押し寄せて来ているそうなのです。直ちに向かって頂けないでしょうか!」
「魔物が急に……? 他に何か情報は入ってないのー? 規模や、理由なんかは?」
「詳細ははっきりしていませんが、恐らく百体は超えるとのことで……。理由も不明なのですが、報告によると勇者様が魔物を引き連れて転移陣により急に襲撃してきたと……」
「勇者様が? それって、噂になってた通りじゃないですか! ユヅキ!」
「あぁ。勇者には少し話もあるんでな。すぐに向かうぞ」
既に先行して何組かの冒険者パーティも向かっていると聞いたユヅキ達は、急いで自分たちもドーラムへと向かうのであった。
ーーユヅキパーティギルドからの依頼 STARTーー




