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32.魔の森脱出

 ユヅキは身体の調子を確かめていた。

 リアから聞いたところ、三日間は目を覚まさなかったとのことだから、リッチーとの死闘から一週間が経った事になる。



「一週間で死にそうな怪我がほぼ治るとはな……。自分の身体ながら、耐久力とか治癒能力の上がりようには驚くな」



 実際はユヅキの身体能力の他にも、リアが手当てに使った薬草の効力が高かったこともあるのだが、それでもユヅキの身体は凄い勢いで回復していた。



「さて……。少し練習するか」



 おもむろにベッドから立ち上がったユヅキの腕には、リッチーとの戦いの際にも顕現していた小手が装着されていた。

 更にユヅキが意識を集中させると、身体は黒いコートに覆われ、手には一振りの刀が握られていた。



「ふぅ。少し魔力を無駄に消費し過ぎた気がするけど、まだ今はこんなもんか。二つ目のスキル【武具創造】か、中々便利な能力だな」



 戦いの土壇場で目覚めたユヅキのチカラ。それは自らの思い描いた武具を即座に創り出すという能力であった。

 もちろん制限はあるのだが、それは追って調べていけば良いと、ユヅキは満足気に武具を一旦消した。



「ユヅキ、起きてる? ご飯出来たよー」



 リアが朝食の準備を終えてユヅキを起こしに来るのも、もう日課だ。リアは起きるのが早く、いつもユヅキよりも先に起き出し、朝の準備を済ませたらユヅキを起こしに来てくれる。



 ーー



 朝食を済ませた二人は、近くに生えている香草で作ったハーブティーのような物を飲んで一息ついていた。

 ちなみに、朝食のメニューは今日も”肉”だ。肉たっぷりのスープに、こんがりと美味そうに焼いた肉、茹でた肉と野菜を和えたサラダという、リア特製”滋養メニュー”だ。



「さて、と。リア、しばらく色々世話になってありがとな。お陰でなんとか動けるようになった」



 ユヅキが改まってお礼を伝えた事にリアは旅立ちを勘付いた様で、そっとユヅキの袖を掴む。



「リアも、ユヅキと行く。外のこと、もっと知りたい」



 別に驚く事はなかった。ここ数日、ユヅキはリアにせがまれて外の世界の話……とは言ってもユヅキもそこまで知る事は多くないのだが、今までの冒険の話などをしていた。

 リアはその話を全て目を輝かせながら食い入る様に聞いていたのだ。こうなる事は想定内であった。



「ま、そう来るだろうと思ったさ。ここにいる意味も特にないんだろ? それなら一緒に行くか。ん、そうだな……」



 ユヅキは最後の言葉をゆっくりと呟きながら目を瞑ると、リアの両腕が薄っすらと光だした。

 数瞬の後、光が収まると、リアの両腕には丈夫なリストバンドがはめられていた。



「鎧の類は万が一チカラの効力が失われでもしたら怖いから無理だけどな。それでも剣を止められるくらいの強度はあるから、役に立つだろ。武器も創れるが、リアはどんな武器がいい?」



 最低限の装備はいるだろうと、ユヅキがスキルを発動させてリアにリストバンドを創り出したのだ。

 ちなみに、ユヅキの創り出す武具は半物質と言われる類の装備となり、基本は普通の武具と変わらないのだが、ユヅキの懸念している通り強力なマジックキャンセルの力がかけられれば、消失してしまう事もある。

 自分で出したり消したりが容易なことからユヅキは予測したのだが、概ねその通りである。

 しかし、ユヅキの予測とは外れる点は、ユヅキのチカラや魔力の強さは相当のレベルに達しており、ユヅキのスキルの効力を上回るマジックキャンセルの力はそうそう無いであろうと言うことだった。

 そうとは勿論知らないユヅキは、スキルに頼りすぎるのも危ないと気を引き締めているようだ。



「武器……うーん、あ、斧がいい」



 少し考え込んでいたリアだったが、何かを思い付いた様子でユヅキに斧をリクエストした。



「斧……か? 別に何でもいいんだが、結構無骨なもんを選ぶな……。大きさとかは?」



「薪割りで落ちてた斧使ってたから、斧なら持ったことある……!」



 リアの言うように、リアは薪割りの際に斧を使用していたのだが、森で力尽きた戦士が落としたのであろうその斧は、強靭な戦士の持つ巨大な両手斧であった。



「あぁ、確かにバカでかい斧で薪割りしてたな……。まぁ、それがいいんならそれでもいいが……よし、ん……こんなもんか?」



 再び目を瞑り集中すると、ユヅキの目の前には巨大な両手斧が現れた。

 その両手斧を、リアは感触を確かめるように”片手で”軽々と振り回す。



「うーん、なんか軽い。飛んでいきそう。もっと重いのある?」



 両手でも振り回すのにはかなりの力が必要な斧を軽々と振り回したリアを見て、ユヅキは若干苦笑いを返しながらも、新しくもっと大きくて重厚な斧を創り出した。

 それは、リアの背丈程の大きさがあり、巨大な両刃のついた特大斧であった。

 余りにも無骨過ぎる為、両刃の中心と柄の部分には、ユヅキ渾身のダリアの花をモチーフにした紋様を入れて少しだけ無骨さを誤魔化してある。



「おぉ……。ん……いい感じ。これは、なんの形? 花?」



「あぁ、こっちの世界にあるのかは知らんが、ダリアっていう花があるんだ。安直で悪いが、リアの名前からその花をイメージして、少し彫り込んでみたんだが……最早そんなもんでは誤魔化せない凶悪さだな……」



 そんなユヅキの呟きをよそに、リアは特大斧の振りやすさと造形をかなり気に入ったようで、嬉しそうに満面の笑みで振り心地を確かめるのであった。






 ーーユヅキ異世界二人旅 RESTARTーー

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