29.続、魔の森の死闘
「別レノ挨拶ハ済ンダノカ?」
ユヅキがリッチーに近付くと、なんとリッチーが話しかけてきた。
「っ?! 驚いたな。人間の言葉を話せるのか」
「今生ノ別レトナルノダ。死ヌ覚悟ハ出来タヨウダナ」
「はっ。お優しい事で……。話が通じるなら、街への侵攻を見逃す訳にはいかないのか?」
ユヅキは、リッチーと交渉ができないかと話しかける。
しかし、いつでも戦闘が始まってもいいように警戒は怠らない。
「我ハ魔王様ノ命ニ従ウノミ。先ノ二人ヲ見逃シタノモ、妨ゲニハナラント判断シタマデヨ」
「でも、もう魔王は倒されたんだろ? いつまでもそんな命に従うこともないんじゃないか?」
「魔王様ハ、必ズ復活サレル筈。其レ迄、無様ナ生キ様ハ晒セマイ」
「ふぅ。戦闘は避けられないってことか……」
「ソウ云ウ事ダナ。我ニ魅セテ見ヨ。ヒトノ足掻キヲナ」
交渉は決裂した。
魔王復活などと言う物騒な話も飛び出したが、今のユヅキには関係の無い話だ。ここで死んでしまっては魔王も何も無い。
リッチーはその巨大な大鎌を肩に掛けた体勢から変化はない。
対するユヅキも剣を抜き、だらんと腕を垂らした体勢のままだが、その目だけは赤く変化していた。
「ヌ……束縛カ……? 目ノ色ガ変化シテイルナ。何カ仕掛ケテ来タナ」
「さぁて、なんだろうな? 行くぞッ!」
ユヅキはスキルによりリッチーの重力負荷を上げ、反対に自分の負荷は軽くして目にも留まらぬ速さで斬りかかる。
「コノ程度デハ我ノ動キハ止メラレンゾ」
しかし、リッチーは多少増えた重力負荷を物ともせずにユヅキの剣を右手で止めてみせる。
すかさずリッチーの左手の大鎌がユヅキの首を狙って振り下ろされるが、ユヅキは右回りに自身の身体を回転させながら、リッチーの右脚に斬撃を加えて離れた。
「ちっ。やっぱりかてぇな。このままじゃ通じないか」
ユヅキの剣が、魔力を帯びて蒼く輝く。
そのまま今度はリッチーの右腕を狙って突きを放った。
しかし、ユヅキが体勢を整えている間にリッチーもユヅキの方を向いており、その突きは難なくかわされる。
しかし、かわされるのは想定内と言わんばかりに、ユヅキは気にもせず突きを連続で放つ。
連続で放たれるユヅキの突きは、どれもリッチーの方に向けて強めた重力の効果により威力と速度を増している。
五発六発と繰り出されるユヅキの突きに、流石のリッチーもかわしきれずに何度か被弾し、ダメージを受けていた。
「フフフ。ヤルデハナイカ。今度ハコチラカラモ行カセテモラウゾ!」
突きを避けながらそう言ったリッチーは、全身から魔力を放出、その魔圧によりユヅキは少し後ろに下がらされ体勢を崩す。
その隙を見逃さず、今度はリッチーからの猛攻が始まる。
右から左からと繰り出されるリッチーの大鎌。リッチーとは違い、ユヅキは一度でも食らえば当たりどころによってはそのまま死にかねない。
攻守が逆転するが、ユヅキも見事にリッチーの大鎌を全て避けきっている。たまに回避出来ないタイミングで襲ってくることがあっても、重力スキルの活用により、ユヅキは普通では考えられない軌道で大鎌をかわしてゆく。
お互い攻守が入れ替わりながら、何度も応戦を続ける。既にそこらの冒険者では判断が追いつかないスピードでの攻防だが、ユヅキはそれを見事にこなして見せ、Sランクのリッチーにも引けを取らない強さを発揮していた。
「フム。本当ニタダノ冒険者デハ無イヨウダナ。ココマデノ攻撃ヲ、全テカワシテミセルトハナ」
「ふうっ。お褒めの言葉どーも。あんたも中々厄介だよ。何発か当たってる筈なんだがなぁ、全く効いてる雰囲気がしない」
(ヤバイな……。二人にかけた自動制御はとうに解除したが、それでも魔力の減りをかなり感じる。このままじゃ魔力が切れたら終わりだぞ)
互角に見える二人の攻防であったが、体力と魔力をフルに使って応戦しているユヅキの方が不利であった。
軽口を叩いてみせるユヅキではあったが、内心余力の少なさに焦りを覚え始める。
「コノママ魔力切レヲ誘ウノモ芸ガナイ。コノ攻撃ヲカワシテミセテミロ」
ユヅキの心境に当たり前の様に気付いていたリッチーだが、そう言うと大鎌を両手で構え、魔力を集束させ始める。
集束した魔力は全てその大鎌に集まり、ドス黒い魔力が大鎌から零れ落ちるように可視化し始める。
次の瞬間、リッチーは魔力の篭った大鎌をその場で全力で振り下ろした。
リッチーの込めた魔力は、斬撃となってユヅキを襲う。リッチーの全長をも超える大きさの黒い斬撃が、もの凄いスピードでユヅキに迫って行く……。
ーーユヅキ魔の森の死闘 CONTINUEーー




