27.続々々、魔の森
「やああああああ!!」
ミカの渾身の蹴りは、ユヅキのスキルの効果により威力を増してワイトの左腕を襲う。
見事に左腕ごとワイトの身体を少しよろめかせたミカの攻撃であったが、ダメージは無いに等しかった。
「ガアアアア!!」
次は自分の分とばかりに、ミカの背の倍はあろうかという巨大な杖を振り下ろすワイト。
しかし、重力軽減により普段より素早く動き回るミカを捕まえることはできない。
空を切った杖を蹴り飛ばそうとすかさずミカが蹴りを放つが、ワイトの力には及ばず杖を手放せることはできない。
「硬い……ですね。でも、まだまだですっ!!」
先ほどから何度も繰り返される攻防。ミカはひたすらワイトの攻撃を避け、ワイトの身体に蹴りを入れ続けていた。
驚愕すべきはユヅキのスキルである。ユヅキのスキル制御の技術は群を抜いていた。更に、発想力とイメージ力に至っては既に、この世界のトップレベルにあると言っても過言ではない。
自動制御に切り替えたとユヅキは簡単に言っていたが、その類稀なる才能と技術を持ってして初めて成せる技だと言えよう。
しかし、それを持ってしてもワイトの強靭な防御を突き崩すことはできず、ワイトもまたダメージを負ってはいなかった。
しかし、ワイトも余裕を出している訳ではなく、一度も攻撃が当たらない事に苛立ちを覚えていた。
徐々にワイトの攻撃は、怒りを覚えて苛烈さを増している。一度でも当たってしまえば、ミカの華奢な身体などひとたまりもないであろう。
「グガガ……ガァ!!」
業を煮やしたワイトは、手に持つ杖の先に魔力を集め始める。
魔力は杖の先にどんどんと集束し、大きな火の塊を構成する。
「っ! こんな森の中で炎の魔法なんて、何を考えてるのよ! ミカちゃん、シールドを張るからこっちに!」
「ダメですよ……。私は、レイムさんの攻撃を成功させる為に足止めするってユヅキと約束したんです……! 私にはワイトを倒す力はありません。だから、レイムさんが倒してください!!」
ミカはじっとワイトを睨みつけたまま、ユヅキとの約束を守る事だけを考えていた。
その瞳は普段の黒色とは違い、弱い金色の輝きを放ち始めていた。
「もうっ! ユヅキといいミカちゃんといい……知らないわよー! もう少しよ、その魔法をなんとかしたら離れなさい! 一撃で決めてあげるわ!!」
レイムの言葉を聞き、少し笑いながらミカは炎の魔法に対し構える。
「グガガガガガガーーーー!!」
その瞬間、完成したワイトの魔法がミカに向かって放たれた。
直径一メートルにもなろうかというその炎の球は、ミカに向かって凄いスピードで迫り来る。
それを見たミカも、その球に向かって飛び込んだ。
「あああああああああ!!!!」
ミカはなんと、迫り来る炎の球に向かって全力で蹴りを放った。突如、ミカの右足が金色の光を放ち、ミカの蹴りとワイトの炎の球が衝突する。
数瞬の均衡……。
押し勝ったのは、ミカの右足だった。
炎の球を跡形もなく消し飛ばしたミカは、その勢いのまま空中で一回転し、再び金色の光を放つ右足でワイトを蹴り抜いた。
「待たせたわね。今日の手柄はミカにあげるけど、アタシの魔法も凄かったって褒めなさいよーっ! 『其は闇を滅する不変の光。光を紡いで輝きとなれ。【シャイニング・レイン】』」
ミカの渾身の一撃で右脚を砕かれたワイトは、その場に片膝をついて動けない。
そこに、レイムの完成した魔法が降り注ぐ。
ヒュー………ンッ。ヒュンッ。ヒュンッッ!
ドドドドドドドーーーン!!!
チカラを出し尽くしたミカは、飛び退いた場所でレイムの魔法の威力を見つめていた。
「凄い……キレイ……」
無数の光がワイトに降り注ぎ、ワイトは跡形もなく滅ぼされていた。
「はぁっ。はぁっ。やっぱり、光の中級は、他の属性より、きつ……いわねー。……ミカ! 無事よねっ?!」
「はいっ! 大丈夫ですっ。レイムさん、凄かったです!!」
「ふふっ。当たり前よ、今頃気付いたの?」
「「あははははっ」」
大切な男性との約束を守り切った二人の顔には、とても美しい笑顔が咲き誇っていた。
「それにしても、ミカも凄かったわよー。まさか、ワイトの魔法を消し飛…ば……ぇ……」
「どうしたん、きゃあっっっっ!!!」
ッドーーーン!!
突如、ミカがナニカに殴られ吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたミカは、そのまま木に激突し、動けなくなってしまった。
ドドーーーンッ!
すぐそこでミカの激突した木が折れて倒れる音を遥か遠くに感じながら、レイムは身動き一つ取れずに薄っすらと呟いた。
「リッチー……Sランク、モン、スター……。こんなの、お伽話の魔物じゃない……」
その言葉を最後に、同じように吹き飛ばされたレイムは、意識を失った……。
ーーミカ、レイム魔の森の死闘 THE ENDーー
魔の森編、もう少し続きます!
レイムは魔法職なので中々強さがアピール出来ませんね……。




