20.二の国イリス
「懐かしいなぁー。俺がこの世界に初めて呼び出されたのは、この二の国だったんだよ」
「あ、転移してきたって話ですね。そうなんですねぇ……。でも、最後が一の国でよかったです! そうじゃなかったらユヅキとも出逢えてなかったかも……」
最後の方は声が小さかったこともあり、聞き取れていなかったユヅキだが、街を見渡すのに必死であり、特に気にしていなかった。
リリームからイリスまで、特に苦労もなく三日ほどで順調に辿り着いた二人だが、その間に転移されてきたという話はしてあった。
旅を続けて行くにあたって知らない一般常識もあるだろうし、無闇に言いふらすつもりもないが、同行者であるミカに隠す事でもないからだ。
「うーん。そういえば城の中に一時間ほどいただけですぐにまた転移くらったから、全く懐かしくないな。初めて見る街だ」
意外と惚けたところもあるユヅキであった……。
「ユヅキ、ここではどうするんですか? 国王様に挨拶……とか?」
「それは面倒だからいいや。取り敢えず目的はギルドで魔石の換金と、三の国への道を聞くこと、あとは装備の新調とかいるか? 俺は剣だけもうちょっとマシなのが欲しいな……。流石にこれじゃもうボロボロだしな」
ユヅキの言う通り、アルマで買った安いロングソードは刃こぼれしてボロボロである。メンテナンスの仕方も知らないということもあるが、オーガと戦ったり、普通の魔物も何百と戦ってきたのだ。逆に折れなかった剣を褒めるべきであろう。
「んじゃ、ギルドと武器屋ですね! 行きましょーー!」
「テンション高いな……。流石に一泊になるだろうから、宿も確保しないとな。別行動にするか?」
「ダメですー! 一緒に周るんです!!」
「お、おう、わかった。んじゃ行くか」
ミカの異様な張り切りに気圧されながらも、二人は街中を周ることにする。
ミカはデート気分でテンションが上がっていたのだが、それに気付かないユヅキは鈍感スキルを10歳までに得てしまっていたのであろう……。
二人はギルドでの換金を終え、ギルドで紹介してもらった武器屋に向かっていたのだが、途中で言い争っている冒険者グループを見かけた。
言い争っているというよりは、一人の綺麗な女性に周りが何かをお願いするように見える。
自分たちには関係ないと、さっさと横を通り過ぎようとしたときだ、不意にユヅキの左腕を綺麗な女性が掴んだ。
「ごめんねぇー。待ったよね? ほら、この人がアタシの新しいパーティメンバーなのよー。だから、あなた達とは約束通りここでお別れっ。わかったー?」
「いや、俺は全く関係「さぁー、行きましょー。早く行きましょうー」なんなんだ……」
その女性は、ユヅキの左腕を掴んだまま抱きつく様に引き寄せ、引っ張ったままその場を離れる。
その女性は赤い髪を腰まで伸ばし、頭には銀のかわいい髪飾りが差し込まれている。ジャケットのようなものを羽織って、下は短めのスカート。綺麗な脚が目を惹くのだが、更に目を惹くのは、ユヅキの腕に押し付けられた二つのソレ、だ。
「いきなりごめんなさいねー? 一回限りってことでパーティを組んだのに、しつこくて困ってたのよー」
「まったく。人を巻き込むなよ……。それと、そろそろ腕を離せ……」
「そうだー! 離れろー!」
「この子猫ちゃんは、貴方のパーティメンバーかしら? ずいぶん可愛いパーティね? これから何処へ行く予定なのー?」
女性はユヅキ達に興味が沸いたようで、腕を離さないまま……いや、なおさらユヅキにくっついて質問してくる。
「どこでもいいだろ……。武器屋だよ、剣を新調しに行く。もうあいつらは見えないんだから、巻き込まれた用は済んだだろ?」
「そうだー! 離れろー!」
「ふぅーん。そうね、アタシも武器屋に行くのよー。奇遇ね? さぁ、行きましょー」
ミカの反応に気付いたその女性は、おもしろそうな笑みを浮かべて同行の意を示してくる。
いつまでも離れない女性に呆れたユヅキは、もう知らんとスタスタと歩き出す。
「はぁ。ついてくるのは勝手だが、取り敢えず腕を離せ。歩きにくい」
「はぁーい。でも、お兄さん、ちょっと顔が赤いわよー? 当たっちゃってた……かな? ふふっ」
「離れろー! 離れろー!」
ようやく腕を離した女性をちらっと見たユヅキだが、会話を切り上げて武器屋に向かって歩みを再開する。
彼も男の子だ。女性の指摘通り、少々顔が赤くなっていたくらい仕方のない事なのであった。
また、先ほどから女性を敵だと判断して騒いでいたミカが、こっそり両手を胸に当てて落ち込んでいたのも、仕方のない事なのであった……。
ーー猫耳少女の苦悩 STARTーー
ミカとユヅキの絡みはバランスが難しかったりします。
ついミカに肩入れを……。




