18.旅の仲間
翌朝早く、ユヅキは二の国へ向かうため東門を出発する。
洞窟で倒したオーガの魔石も換金していたためそれなりの資金は手に入ったので、剣くらい新調しようかとも考えたのだが、昨日の調子だと今日も飲んべえ達が騒ぎ始めそうな気がしたため、諦めて早めに出立する事にしたのだ。
朝焼けの照らす中、一人ユヅキは東門を出て歩き出す。
このまま二の国へは一直線。街道は行かずに鍛錬ついでに少し離れたところを行く予定だ。時折街道の位置を確認すれば、迷うこともないだろう。
なんだかんだで、異世界の雰囲気を楽しんでいるユヅキは、のんびりと言う訳でもないが、焦って旅をしている訳でもなかった。
「ヒナタさーん!! 待って下さい!」
「ん? ”ミカ”どうしたんだ?」
「はにゃ?! え、今なんて……?」
昨晩の最後の方の記憶が曖昧らしく、突然”ミカ”と呼ばれたことに動揺して、ミカは顔が真っ赤になってしまう。
「お前がミカって呼べって言ったんじゃないか。覚えてないのか?」
「覚えてな……いえ、覚えてます覚えてます! ミカでいいです! ミカって呼んで下さい! ふにゃぁ……」
愛称で呼んでもらえたことが嬉しくて、ミカの表情は緩みまくっている。
そんなミカの様子に少し呆れながら、ユヅキはミカの追ってきた理由について尋ねる。
「あ、えっと……すみません。少し、私の話をさせて下さい。……私は、実は『忌み子』として里を追われたんです。この毛色は魔法で変色させてもらっています。本来は、深い深い黒。闇の色です。両親はずっと庇ってくれていたのですが、これ以上迷惑はかけられないと思い、正確には自分から里を出ました」
「それが、ミカの悩んでいた隠し事って訳か?」
「はい……。里を出て行く宛もないので、同じ様な境遇の子がいたら何か私に出来ることはないかなって思って、旅をしながら探すつもりでいました。でもヒナタさんと出逢って、私はヒナタさんと一緒に世界を見て回りたいと思う様になりました……。足手まといになるのはわかっています。でも、お願いします! 私を一緒に連れて行って下さいっ!」
「いいぞ。んじゃ、行くか」
「ダメって言われてもついていきます! 私これでも、力は無いですけど脚には自信が……って、え?」
一世一代の告白。ミカは自分の想いを全て言葉に込めて、精一杯の想いをユヅキに伝えるつもりで告白した。
世間一般での『忌み子』に対する反応が良く無いことは知っている。闇色の毛色の獣人族が恐れられていることも知っている。
それでもなお、ユヅキと共に歩むには隠し事はしたくなかった。
断られるのはわかっていても、ミカは自分の全てをユヅキに話したのだ。
しかし……。
「え? ってなんだ、ほら行くぞ。それと、俺のことは”ユヅキ”でいい。俺もミカと呼ぶんだからな」
ユヅキは何事もなかったかの様にスタスタと歩き出す。
それを呆然と見つめていたミカであったが、我に返って慌ててユヅキの後を追いかける。
「え、ちょっと、ヒナ……ユヅキさん! あの、私の話聞いてました……? 私、あの、闇色の毛色の獣人なん……ですよ? ”忌み子”なんです!」
「バカにしてんのか? たった今その話は聞いただろう。それに、ミカこそ俺の話を聞いていたか? ”ユヅキ”と呼べと言っただろ。ミカさんって呼ぶぞ?」
「だだだだめです!! ユヅキ……! あの、闇色と聞いて恐れたり……」
予想外すぎた反応に、ミカは戸惑いを隠せない。何がどうなっているのかわからないという顔でユヅキを見つめている。
「なんでミカを恐れなきゃならん。俺の方が強い。それに、闇色闇色って厨二かよ。普通に黒髪だろ? 俺もそうじゃねぇか。 てか、根本的に認識が違う。俺は黒猫は好きだぞ。というか、猫の中では黒猫が一番好きだ。黒猫のクールなところ、ツーンとした表情が一番似合うところ、それなのにデレるとその表情で甘えてくるところ、さらっとした毛並み、街並みに一番映える毛艶。素晴らしいじゃないか」
大好きな猫議論で饒舌になるユヅキ。
それを聞いていたミカの目からは、大粒の涙がこぼれ落ちる……。
「ひっぐ。ひぐ……。うぅ……。ゆじゅぎいいいい! ありがどう。ゆじゅぎいいいいいいいい!!!!!」
「だあああああっ! 涙はまだいいが、鼻水だらだら垂らして抱きつくなっ! おいこら、このコートは俺の大事な一張羅なんだぞ! あああああ、涙と鼻水でぐっしょりじゃないか! まったく…………」
「ゆじゅぎいいいいいいいいいいいい!!!」
こうして、ユヅキの旅路に一人の猫耳少女が加わる事となった。
”忌み子”と恐れられることに恐怖を感じていた黒猫少女の姿はもうそこにはなく、満面の笑みで涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、大好きな彼に抱きつく一人の女の子がそこにはいた。
ーーユヅキ黒猫少女との邂逅 COMPLETEーー
ミカは、動揺したりすると”にゃ”と言っちゃったりします。
そろそろ投稿ペースに追いつかれそうですにゃ。




