15.ミカルウィアス
猫耳の少女は落ち込んでいた。
助けてもらった恩人に暴言を吐いて走り去ってしまった。
あんなことを言うつもりは無かったのに、同行を突然断られてカッとなってしまった。
別れも突然であったが、出会いも突然であった。
迷い込んだ洞窟でオーガの姿を見つけ、震える尻尾を抑えながら岩陰に隠れた。オーガになんて見つかってしまったら、腕の一振りで死んでしまうかも知れない。それとも、その巨大な棍棒で叩き潰されてしまうかも知れない。
自分の呼吸の音でも見つかってしまうのではないかと思うと、一歩も動けなくなってしまった。
そこにあの黒髪の少年は突然現れた。
危ないと声をかけようかと悩んでいるうちに、少年はオーガに戦いを挑んでしまう。
怖くて目を瞑った少女は、響き渡る轟音に耳を塞ぐ。
より一層凄まじい轟音にうっすらと目を開けると、そこには息絶えて霧となっていくオーガの姿があった。
ユヅキ・ヒナタと名乗ったその少年は強かった。
オーガとの戦闘は見逃してしまったものの、洞窟を抜けるまで片手剣一つで魔物をどんどんと斬り伏せてしまう。
身軽さと格闘には少しだけ自身があった少女であったが、素早い少年の動きに何も出来ないまま、町に辿り着いてしまった。
気付けば少女は、彼のの一挙一動に目を奪われていた。
魔物を易々と斬り伏せるその強さに。
魔物を倒したあとに自分を心配して振り返ってくれる姿に。
早足に自分を置いて進むくせに、距離が空くと少しだけ歩くスピードを落としてくれる背中に。
稀に見せるその笑顔に。
少女は目も心も奪われていた。
彼の力になりたいなんておこがましいことは言えない。そんなに自分は強くないから。
でも、せめて彼の背中くらいは見ていられる自分で在りたい。
彼の方を堂々と見て彼と接したい。
そんな想いが少女の何かを奮い立たせていた。
少女は今、オーガに一人で立ち向かっていた。
自分より遥かに小さい子供が襲われようとしていたが、助けなきゃと考える前には既にオーガの背中目掛けて飛び出していた。
彼の真似をするつもりなんて無かったし、出来ないと思っていたのに。
気付けば今、あのときの彼と同じようにオーガと一人で戦っている。
必死にオーガの棍棒をかいくぐる。
一撃でも喰らえば、少女の小さい身体なんて軽々と吹き飛んで動けなくなるだろう。
身軽さを武器に、右へ左へとオーガを撹乱し、攻撃を躱す。
回避を最優先にしつつ、隙をみて渾身の蹴りを放つが、オーガの硬い身体にはダメージが入った様子はない。
それでも必死に避けては一撃を入れ続けていたが、このままではいつまでも倒せないと焦りを募らせた少女は集中を切らしてしまい、一瞬足を滑らせてしまう。
そこに襲いかかるオーガの巨大な棍棒。必死に避けようとする少女だが、振り下ろされるオーガの棍棒は凄いスピードで迫り来る。
ドガーーーーン!!
死を覚悟した少女だが、一瞬身体が軽くなった気がしたと思ったら、紙一重でオーガの攻撃を避けることに成功していた。
当たったと思って油断していたオーガに向かい、すかさず少女は飛び上がる。
狙うなら、少しでもダメージの狙える顔しかない!少女はオーガの顔に向かって渾身の力で蹴りを放つ。
ズドン……!!
小柄な少女の放った渾身の蹴りは、オーガを吹き飛ばし、その巨体は地響きを立てて横倒しになる。
夢中で蹴りを放った少女は、自分のモノとは思えない威力に驚きながらも、倒れたオーガに向かって|加速しながら落ちて行く(・・・・・・・・・・・)。
「やあああああああああああああ!!!!!」
その勢いのまま、オーガの顔面に再度全力で蹴りを放つと、オーガは黒い霧となって姿を消し去った。
ーー猫耳の少女初ボスっぽいの COMPLETEーー
今日の更新はここまでです。
書いてみたかったミカルウィアス視点、いかがだったでしょうか?
今度はミカルウィアスの一人称でも書いてみたいと思います。




